日頃から書きなぐっていた取材ノートや備忘メモに埋もれていた諸々を拾い、不定期で自由気ままに綴ってみようと思います。落ちこぼれた種から何か芽が出てくるかな——。

古川興一ブログ「落ち穂ひろい」
落ち穂ひろい |  2019.11.21

人材レガシーを創る。2020年からスポーツ界へ繋ぐもの

東京オリンピック・パラリンピックまで1年を切り、高揚感も高まってきているが、2020年以降を見つめ、何を繋ぐかに想いを馳せているのが同組織委員会の大会運営局次長の森泰夫さんだ。森さんは東京オリパラ運営のキーパーソンと言われ、国内各地で行われているテストイベントのほとんどの現場に姿を見せる。競技のテストイベントは55が予定されているが、既に33が終了しており、「経験と創造のトレーニング」として「テスト大会から多くのものを得ている」と大会準備は順調に進んでいると語る。その上で2020年東京大会が残し、次に繋ぐレガシーは何かと問われたとき「ともすると競技施設などハードの話になりがちだが、一番は人材だと思う」「東京オリ・パラでスポーツ界へ繋ぐ人材レガシーを創りたい」と言葉に力を込めた。日本記者クラブでの会見の一こまだ。

新国立競技場だけでも運営に関わるスタッフは3000人を超える。大会期間中のボランテイアだけで延べ8万人を数える。これらの貴重な体験をした人たちが大会終了で散ってしまうのは確かにもったいない。スポーツイベントはビジネスであり、社会事業としての要素を持つ。それを大きく発展、成長させたい。そのためには「する」「観る」「支える」というそれぞれの分野を繋ぐ仕組み、人材が必要なのであり、その面で日本は世界に遅れているのが実情。それだけにこの壮大なスポーツイベントであるオリンピックを次代のスポーツイベントを活発化する糧とし、ある意味スポーツ産業としての成長、発展を図るチャンス、突破口にしたいというのが森さんの思いなのだろう。

「日本はスポーツイベントの経験値が高い。年間、4659件のスポーツイベントが実施されており、およそ100万人が運営に関わっている」と、日本が抱える潜在的なスポーツ人材の数の大きさを森さんは示す。だが、実際は、競技ごとの縦割りで、横の連携が出来ていない。経験値が生かされていないということだ。だからこそ「競技団体間の連携をはかり、人材プールとトランジッションできる環境をつくらねば」「数多くのスポーツ分野の人材を繋ぎ、統合マネジメントする人材がこれからの日本のスポーツ界に求められる」と森さんの口ぶりは熱い。スポーツビジネス界に飛び込む、さらには転職したいという流れが出てくるような体制作りへの想いもたぎる。そして、「IOCなどの事務局に日本の人材を送り込むことも大事になる」とも。

森さんは横浜国大の学生時代、陸上競技に打ち込み、1991年に卒業し、東急電鉄に就職、都市開発事業などに関わったが、2004年に退職して日本陸上連盟に入り2014年に事務局次長、その間2007年に早稲田大学大学院でスポーツ科学を専攻、トップスポーツマネジメントコースを修了との経歴を持つ。スポーツマーケテイング、スポーツビジネスへの想いの強さもうなずけるのだ。森さんの揮毫「あり得るかも知れない人生」。含蓄が深い。

日本記者クラブで会見を行う森泰夫さん
人材プールとトランジッション(記者会見のスライドより)
記者会見のスライドより