2019.5.10

三澤千代治さんが「令和の住まい」を提唱

住み替え8回、80歳までに嘘800を勉強し、8000万円の蓄財

ミサワホームの創業者で、今はミサワ・インターナショナル社長の三澤千代治さんの住まいに賭ける情熱は少しも褪せることがないようだ。令和元年5月1日に「令和の住まいは変わる」と題して住まいと財産形成について持論を発表したのだ。

趣旨は、人生100年時代、住まいを住み替えて財産形成をし、豊かな生活を──だ。三澤さんによると日本ではこれまで住宅が財産形成になるという考えは無かった。20年で家の価値はゼロになるという日本の税制のせいもあって、もっぱら家の価値は建物としての住宅ではなく土地によっていた。人々が暮らし、生活する住まいのこのような不当な扱いに、住宅一筋に歩んできた三澤さんには我慢がならないのだ。そこで唱えているのが『ライフステージに対応した8回の住み替えで財産形成をしよう』なのだ。8回と言うのも日本人は、一生のうちに平均7・5回住み替えているとのデータにもとづくもので、だとしたらこの住み替えに財産形成を意識して取り組んだらどうかということなのだ。

具体的なライフステージは①20代のアパート ②30代の新婚マンションライフ ③40代の子育て住宅 ④50代のゲストルーム住宅 ⑤2地域居住で別荘 ⑥60代の店舗付き住宅 ⑦70代の三世代住宅 ⑧ケア付き住宅──。それぞれで値上がりする住宅を選ぶ。そして、80歳で、8000万円の蓄財を目標にせよと呼びかける。8000万円の根拠は、ケアハウスの入居権3000万円、80歳から100歳までの生活費が年金にプラスして年250万円で5000万円が必要との計算からだ。三澤さんは一生を借家で暮らすと家賃の合計は1億2000万円にのぼるとも脅かす。持ち家推奨の三澤さんならではだ。

三澤千代治「人生100年 住まい8回住み替えて財産形成をする」より
MISAWA international 株式会社 代表取締役
三澤千代治氏

そして、資産形成に役立つ住まいづくり、住まい選びのポイントとして、まずは先々売ることを考えて住宅を建てるべきとし、その住宅は、耐久性の長い200年住宅、環境・景観に優れたランドスケープの重視をうたい、土地は人工地を避け昔からの自然の土地を選び、原発30キロ圏内や空港、鉄道、高速道路の隣接地、さらには浜、谷、川、沼などの地名のところは避けるべしと訴える。

キャッチフレーズ好きの三澤さん、『8回住み替えて、80歳までに、嘘800を勉強し、8000万円の蓄財』と呼びかける。嘘800には苦笑のほかないが、意外に含蓄ある言葉のようにも──。とかく異論、反論が渦巻く三澤さんの論、提案だが、良い住まいを、の思いはミサワホーム時代から一貫している。

令和のスタートと共に、「令和の住まい」のあり方を打ち出すあたり、そのジャーナリステイックな感性も衰えてはいない。ともすると住宅メーカーの住まいづくりの姿勢が問われかねない昨今の状況の中、まだまだ三澤さんに学ぶことは少なくない。


三澤千代治の遺言
豊かさ築く住まいのチカラ

著者:三澤千代治
価格:2,160円( 税込み)
発行:創樹社