「耐震等級3×自由な間取り」をどう叶えるか? 差別化戦略を支える高耐力壁

高耐力な耐力壁への注目度が高まっている。背景にあるのは、巨大地震への備えとしての「耐震等級3」標準化の動きに加え、2025年4月の建築基準法改正(4号特例縮小・構造基準見直し)だ。
一方、耐震等級3を確保しようとすれば壁量が増え、大開口や吹き抜け、広いLDKといった開放的な間取りとの両立が課題になる。この課題を解決するのが、少ない壁で高い耐力を確保できる高耐力壁や狭小耐力壁だ。
さらに、住宅の高断熱化(気密性・施工性向上)、中大規模建築の木造化といったトレンドを押さえる上でも、高耐力壁が重要な鍵を握っている。
施工精度の確保や非住宅分野への進出も含め、工務店や住宅会社が強みを発揮するための「耐力壁選び」の最前線を追う。

等級3を実現する高耐力壁への注目度が高まる

地震被害が相次ぐなか、エンドユーザーの耐震性に対する意識向上もあり、耐震等級3で差別化を図る住宅事業者が増えている。将来は平均的な住宅で耐震等級3が当たり前になっていくとみられる。

また、2025年4月の建築基準法の改正も大きな転換点となった。4号特例の縮小により、審査・確認手続き(提出書類)の範囲が見直されたのと同時に、構造基準(建築基準法施行令第46条)も見直された。基準法の必要壁量が増加したことで品確法に基づく「性能表示計算の耐震等級3」では、より多くの耐力壁が求められるようになった。壁倍率上限も5倍から7倍に引き上げられた。そのため、より高耐力な耐力壁を活用して、十分な耐震性能を確保しながら、設計の自由度も高めたいとするニーズが高まっている。

さらに、住宅高断熱化が筋交いから耐力面材へのシフトを加速させている。筋交いよりも面材の方が、断熱材を欠損なく施工しやすく、気密性を確保しやすいためだ。また、結露対策として、壁体内の湿気を速やかに外部に排出するためにも、優れた透湿性を備えた耐力面材が改めて注目されている。

メーカー各社は、高耐力を訴求するとともに、中にはプラスαの機能や、防耐火認定のバリエーションの多さなどで差別化を進めている。

木質系の耐力面材の中でも、国産材利用拡大の国の政策の後押しなどを受けて、大きく需要を伸ばしてきたのが構造用合板だ。住宅市場における面材化および高耐力面材市場の創出を牽引してきている立役者と言っても過言ではない。

日本合板工業組合連合会(日合連)が中心となり厚物の構造用合板を「ネダノン」という名称で製品化し、高耐力の壁倍率の大臣認定の取得を進めたことも、採用拡大の大きな推進力となっている。コストを抑えて建築基準法レベルの3倍もの耐震性能を実現できる。厚さ24㎜の「ネダノンスタッドレス5+」は、壁倍率5.0の大臣認定を取得している。実力値は、5.9~7倍相当であり、許容応力度計算ルートや非住宅の設計では、この数値をもとに設計を行える。

伊藤忠建材が展開する「地球樹 Mクロス(エムクロス)」は、北海道産針葉樹を使用した合板の表面にライナー紙を張り付けたクロス下地合板。12.5㎜厚(3×6尺・3×8尺)で大臣認定を取得しており、大壁・入り隅の双方で壁倍率3.7倍を確保できる。他社製品のように入り隅部で倍率が下がることがなく、大壁・入り隅ともに同じ倍率(3.7倍)で壁量計算を行えるため、設計業務の負担を大きく軽減する。

伊藤忠建材の「地球樹 Mクロス」は、省施工ニーズと先行ブランドとしての認知を背景に15年以上にわたり販売実績の前年超えを継続している

住宅着工数の減少に伴い合板市場全体は厳しい一方、Mクロスは省施工ニーズと先行ブランドとしての認知を背景に15年以上にわたり販売実績の前年超えを継続している。

同社は、筋交い施工で発生するプレカット加工、間柱の欠き込み、金物取付、現場の大工施工の手間やコストを削減できる「筋交い代替」の提案を強化している。片筋交い(2.0倍)やダブル筋交い(4.0倍)の代替として、Mクロス1枚で3.7倍の高耐力を省施工で実現でき、安全確実に耐震等級3の達成をサポートする。断熱材の施工を邪魔しないため、高断熱仕様との相性が非常に優れている。

また、外周部の壁量だけに頼らず、内壁、従来の棚や手すりの固定用下地などを内部耐力壁として有効活用することで、建物全体の耐震性能を高められると、設計段階から組み込むスペックイン提案も展開している。

すでに業界唯一の8尺品(2440㎜)をラインアップしていることが強みだが、さらに天井高の高い現場でも土台から梁までの一枚張りで対応できるよう、市場ニーズや技術的な可能性についても検討を進めている。

また、床勝ち納まりなどの制約はあるものの、愛知建築地震災害軽減システム研究協議会から省施工で耐震補強できる工法として推奨・認定を取得しており、防災・リフォーム分野においても高い評価を獲得している。

日本ノボパン工業は「novopan STPⅡ」について、直近1年間で施工管理者向けの勉強会を積極的に開催し、動画などで釘の打ちすぎや打ち忘れの危険性を伝えることで、現場の品質意識向上を図っている

日本ノボパン工業は、主力製品の9㎜厚の構造用パーティクルボード(PB)「novopan STPⅡ」を展開している。告示仕様で壁倍率4・3倍などの高倍率を実現できる点が最大の強みだ。筋交い併用からSTPⅡへ切り替えることで、耐震性能を落とさずにコスト低減を図る採用が進んでいる。高い壁量が求められる都市部の狭小3階建て住宅やビルトインガレージ、賃貸アパート案件などで高い評価を得ている。

制度改正による壁倍率の足し合わせ(最大7倍)に関しても、「novopan STPⅡ」を活用した高倍率仕様の足し合わせについて、自社で事前に性能確認試験を実施してエビデンスを整備し、高耐力が要求される賃貸住宅1階部分などのニーズに応えている。

木材チップを主原料とするため安定した価格競争力を有するほか、「堺工場(大阪府堺市)」「つくば工場(茨城県つくば市)」、および永大産業との合弁「ENボード工場(静岡県駿東郡小山町)」の3工場体制により安定した生産・供給能力を確立し、首都圏をはじめとする需要を支えている。

また、近年の高断熱化や設備の複合化、HEMS、太陽光、気密・断熱・耐火被覆材の厚み増、大型換気ダクトの設置などに伴い配管・配線ダクト穴が大型化している現場実態に対応し、2025年6月に施工資料の改訂を行った。(公財)日本住宅・木材技術センターでの試験データに基づき、補強不要とする貫通穴の許容径を従来の150㎜から170㎜へ拡大。大壁・真壁・2×4工法の各種仕様において補強なしで通せる穴径を広げたことで、高断熱・高機能住宅における設備配管の施工性向上と設計のしやすさを向上させている。

ホクシンのMDFは、近年の豪雨や降水リスクに対し、耐水・平滑性能が評価され、大手ビルダーの床下地や野地板用途での指名採用・展開も広がっている(画像は構造用「スターウッド」)

ホクシンの主力製品、構造用MDF「スターウッド」は、告示仕様で壁倍率4.3倍などを実現。同社によると「2025年4月の4号特例縮小や、分譲大手による耐震等級の標準化をベンチマークとして、耐震等級3の確保が業界のデファクトスタンダードとなりつつある。狭小地や2.3階建てで筋交い施工の設計上の制約が顕在化し、少ない壁量で高耐力を確保して開放的な間取りを実現する高耐力壁の需要が高まっている」という。

また、「断熱等級5〜7レベルの住宅高断熱化に伴い、筋交いの斜めカットや気密フィルム施工の困難さ、熱橋リスクを回避するため、断熱材の施工性や気密性に優れる耐力面材へのシフトが定着してきている」とする。こうした面材化の流れを受けて、同社は、結露リスクを重視するビルダーへ、MDFの透湿性の強みを訴求している。MDFの高い透湿性により壁体内の湿気をスムーズに通気層へ放出し、高断熱住宅の冬型結露リスクや柱・壁の劣化を抑制。木材繊維を細かく解繊して高密度熱圧しているため、空気を通しつつ水の浸入を防ぐ性能を備える。平滑性が高いため軸材(柱・土台)との密着性にも優れ高い気密性を発揮する。

また、近年の豪雨や降水リスクに対し、施工中の雨濡れによる床の不陸・カビ発生などのリスクを防ぐ耐水・平滑性能が評価され、大手ビルダーの床下地(厚さ28㎜など)や野地板用途での指名採用・展開も広がっている。

同社は、構造分野でのシェア拡大を加速させるため、2025年12月に営業部内に「構造特販課」を新設した。従来は技術開発部が担っていた壁倍率取得や共同開発・顧客対応を営業部と一体化し、開発から販売までのスピード向上を図っている。

高倍率の外周耐力壁と許容応力度計算を組み合わせることで、内壁耐力壁や基礎立ち上がりを減らし、間取りの自由度、基礎コスト、床下空間における空調の循環性を改善する合理化提案を準備中で、来年度本格展開を予定している。

さらに同社は、(一社)き塾のセミナーを通じ、ビルダー・工務店とともに、許容応力度計算を学ぶ「構造セミナー」と、結露対策などを基礎から学ぶ「環境セミナー」への参加を呼びかけている。構造セミナーでは、意匠設計者が許容応力度計算や構造図面を正しく理解し、構造設計者へ適切な指示を出せるレベルを目指す。環境セミナーでは、単なる断熱強化にとどまらず、結露が発生する仕組みや湿気対策を基礎から学び、現場での施工精度と施工品質の向上を図る。「従来は顧客側から透湿性を評価されて採用されることが中心だったが、今後は当社から積極的に技術的価値を訴求する初めての取り組みになる」。

アイカ工業の「モイスTM」は、耐震・防火に加え、調湿、結露防止、カビ抑制や、快適な空気質を1枚で提供できる強みを打ち出していく

また、この取り組みは、「高耐力・高断熱住宅において設計上の性能を現場で確実に発揮させるためには、単に資材を投入するだけでなく、意匠設計者や施工管理者が構造と環境に関する正確な知識を持つことが不可欠」と、施工精度の確保にもつながる。

アイカ工業は、バーミキュライトや珪砂、消石灰などの天然鉱物由来の原材料が主成分の「モイスTM」を展開している。

釘ピッチによって壁倍率をコントロールでき、木造軸組工法で最大壁倍率3.8倍、枠組壁工法(2×4工法)で最大4.0倍の国土交通大臣認定を取得。初期剛性・最大荷重・粘り強さ(靭性)をバランスよく備えている。

約25年にわたり多様な防耐火構造認定の蓄積があることも強みだ。高断熱住宅で使用される様々な断熱材や仕上げ材との組み合わせの選択肢が広く、設計者が仕様を選びやすい。都市部などの厳しい防耐火規制エリアや、ガルバリウム鋼板・木製外装材など意匠性の高い外装仕様にも対応しやすい。

「『モイスTM』の壁倍率3.8、断熱等級に関係する防火認定、他部材との組み合わせについての問い合わせが増加している」という。4号特例縮小による審査・確認手続き、構造基準の見直しなどの影響で、認定の運用は厳格化しており、設計図書や指定条件に沿った施工・設計が重要になっているようだ。

さらに「モイスTM」は耐震性・防火性に加え、透湿性、気密性、防蟻処理不要、遮音性など1枚の壁で多様な付加価値を提供できる点も高く評価されている。

特に透湿性・気密性は、高断熱住宅において大きな強みとなる。優れた透湿性により、壁体内の湿気をスムーズに外部へ排出して内部結露のリスク低減に寄与し、近年の地球温暖化や豪雨増加による壁体内の湿気対策に貢献する。石膏ボードや合板に比べて100〜1000倍高い気密性を有し、外気の侵入を防いで断熱性能向上に貢献する。

一方で同社は、メラミン化粧板や「セラール」などの内装建材も展開しており、ビルダーや工務店との接点を持つ。営業担当者への教育、営業ツールの充実を図ることで、「モイスTM」の提案を強化していく方針だ。その取り組みの一環として、ブランドサイトで施工例や技術資料コンテンツの拡充を進める予定だ。

「耐震性・防火性に加え、調湿性や壁体内結露リスクの低減など、快適な室内環境への配慮を1枚で提供できる強みを打ち出し、高付加価値な空間づくりの提案を強化していきたい。特に近年、強い降雨が増える環境下で、『モイスTM』の価値を改めて訴求していきたい」とする。

極小サイズで高耐力を発揮する狭小耐力壁

幅455㎜などの極小サイズで高耐力を発揮する狭小耐力壁の存在感も高まっている。

許容応力度計算が必須となるが、より精緻に構造計算することで、壁量が減り、コスト削減にも寄与するため、そのメリットは絶大だ。中には、後付けできる強みを生かしてリフォーム市場で採用実績を増やす商品も出てきている。

タツミの「TN-WOLSH Burring Wall」は、従来中心だった住宅での小規模採用から、非住宅案件で1棟あたり約20枚を一括採用するような大型案件が登場している

タツミが展開する木・鉄ハイブリッド狭小耐力壁「TN‐WOLSH Burring Wall(バーリングウォール)」は、幅455㎜の狭小サイズでありながら壁倍率6倍相当(せん断耐力)の高い耐力を実現している。

日本製鉄などとの共同開発で「孔あき鋼板(バーリング面材)」を採用しており、木材特有の脆性破壊を防ぎ、大地震時には鋼板が塑性変形(粘り・靭性)することで建物倒壊を効果的に抑制する。従来の筋交い金物のように木部の割れやビス抜けによって性能にばらつきが出る挙動とは異なり、鉄が変形する構造のため荷重変形角曲線が非常に安定しており、構造計算上で安全かつ確実に耐震等級3を達成しやすくなる。

筋交いではなく枠材に面材を留め付けて躯体にはめ込むユニット型の耐力壁であり、合板耐力壁と同様の開放的なオープン工法で施工できる。

面材として採用されている孔あき鋼板の穴は、壁体内の配線やコンセント計画の施工性を高めるだけでなく、室内への「あらわし」利用やマグネットを活用した意匠など、設計者や顧客の空間提案の発想を広げる新たな面材効果・デザイン的メリットとしても評価されている。

一方で、狭小耐力壁は壁倍率が与えられないため、導入にあたって構造計算ルートや使用資材に制約があった。従来、壁倍率のない狭小耐力壁を構造計算に組み込む際(建築基準法施行令第46条第2項ルート)、建物全体でJAS材や機械等級区分材の使用が義務付けられる点(告示1898号)が採用に対する一つの壁であった。

これに対し、タツミは、2025年3月施行の法改正で新設された「告示1100号第6ルート」(必要壁量の80%以上が告示上の壁であれば、残り20%に壁倍率のない耐力壁を使用可能)を活用、杉KDの無等級材(ノンJAS材)での試験評価をもとに追加評定を申請し承認を得た。国内製材の7〜8割を占める無等級材(一般流通材)を既存の資材調達・設計のまま活用できるようになったことで、狭小耐力壁の採用ハードルが劇的に下がり、住宅市場における汎用性と可能性を大きく広げている。

タナカの「新・つくば耐力壁」の施工事例。少ない壁で耐震等級3を確保しながら、複数台の駐車スペースとリビングの大開口を実現した。ホームページでこうした施工事例を積極的に発信・更新し、設計者へ応用アイデアを提案する

タナカは、柱間450㎜・455㎜・500㎜の狭小幅で高い耐力を確保できる「新・つくば耐力壁〈K型〉」および「新・つくば耐力壁〈X型〉」を展開している。

K型は幅455㎜で壁倍率5.0倍相当(構造用面材との併用で最大6.9倍相当)の耐力を誇る。さらに、筋交いのみで壁倍率6.3倍〜7.0倍相当(1mあたり)の圧倒的な高耐力を実現するX型をラインアップしている。物入れなどのちょっとしたスペース(幅455㎜の雑壁など)に仕組むことで、建物内側の壁を増やさずに従来の間取りを保ったまま、確実・安全に耐震等級3を達成できる。2025年度グッドデザイン賞も受賞している。

K型は構造用合板、構造用MDF、構造用PBなどの各種耐力面材と組み合わせることが可能で、外壁側の面材施工による高耐力化・高断熱仕様に対応。一方、面材施工が難しい室内壁(間仕切り壁等)向けには、面材不要で筋交いのみで高倍率(6.3〜7.0倍相当)を発揮するX型を提供。これにより、外壁側の高断熱面材施工と室内側の自由な空間づくりを両立させている。

販売実績は毎年右肩上がりで拡大しており、特に高耐力なX型の伸び率が大きくなっている。都市部狭小地の3階建て住宅にとどまらず、採光用窓の配置により壁が取りにくい狭小木造アパート(メゾネット・長屋住宅)や、1階ビルトインガレージ付き住宅・店舗への採用が広がっている。

自社Webサイトの「事例紹介」において実物件(1階駐車場付き戸建て住宅など)の施工事例を積極的に発信・更新し、設計者へ応用アイデアを提案。許容応力度計算の普及とともに、今後の成長余地は大きいとする。

スクリムテックジャパンは、柱と耐力壁を一体化させた高耐力壁柱「壁無双450」を展開。柱の芯芯寸法ではなく外外寸法で450㎜という極小サイズでありながら、120㎜幅で壁倍率22倍相当、150㎜幅で壁倍率29倍相当(高さフリー)を実現し、(一社)日本建築センターの評定を取得した業界最強クラスの強度を誇る。

この圧倒的な耐力を支えるのが、独自開発の靭性型接合金物「タフネスコネクター」だ。木材に挿入した金物と隙間に接着剤を充填するGIR(グルードインロッド)技術を進化させたもので、木材の材料強度に左右されずスチール側の破断で終局を迎えるため、極めて安定した粘り強さ(靭性)を発揮し、安全確実に耐震等級3の確保に貢献する。

柱脚部に使用する鋳物製金物「キューブコネクター」は、土台の高さに合わせて設計されており、室内に金物が一切露出しない構造になっている。これにより、美しく仕上げられた集成材の壁柱をそのまま室内空間の「あらわし」として魅せる設計が可能となり、高い構造性能と空間デザイン性を完璧に両立。この構造性能と意匠性の完璧な両立が高く評価され、2024年度グッドデザイン賞を受賞している。

「壁無双450」は外外寸法450㎜という狭小サイズで驚異的な耐力を確保できるため、都市部の狭小住宅やファサード全面ガラス張りの店舗・住宅で大きな効果を発揮する。河野泰之社長は「製品単体の価格は一見高額に見えるが、発揮する壁倍率当たりで計算すると極めてリーズナブルな建材」と話す。

また、ナットを外すだけで容易に解体・移設ができ、強度を維持したまま再利用できる「リユース性」を備えている。これにより、約20年サイクルで建替えや移設が行われる10m×20m程度のロードサイド店舗など、循環型建築・リユース需要という新たな可能性を切り開いている。現行の1階用に加え、耐力を抑えた2階・3階対応モデルの開発も進めている。

ビスダックジャパンは木質系面材と製材を組み合わせたシンプルな構成の耐力壁「タフボード」(幅900㎜「タフ900」、幅600㎜「タフ600」、幅455㎜「タフ455」)を展開。金物を使用する他社製品と異なり、金物不要で指定釘のみで施工できる扱いやすさが大きな特長だ。

タフ900は大臣認定(壁倍率4.5倍)、タフ600(壁倍率3.8倍相当)および一番人気のタフ455(壁倍率3.5倍相当)は許容応力度計算で運用される。

京都市の木造伝統建築「柳原銀行記念資料館」の改修工事では、ビスダックジャパンの「タフ900」が100枚以上採用されている

最大の強みは、柱の間に納まる「真壁」構造である点だ。躯体が完成した後からでも所定の位置にはめ込むことができる唯一無二の後施工性を備えており、当初の設計段階はもちろん、万が一計画変更や計算上で耐力不足が判明した箇所にも柔軟に対応可能だ。

住宅の高断熱化・高性能化に伴い断熱効率の観点から開口部が制限されがちな中、「リビングなどで開放的な大開口を確保したい」「ガレージの袖壁開口を広く取りたい」という施主・設計者のニーズが高まっている。面材(合板)を枠材で挟み込んだ真壁型のタフボードは、幅455㎜や600㎜といった狭小サイズで確実な耐力を確保できる。これにより、高断熱住宅において壁数を最小限に抑えつつ大開口・大きな窓を配置することが可能となり、空間デザインの自由度向上と高い省エネ・耐震性能の両立に貢献する。「2025年4月の法改正以降、着工棟数の停滞などの影響を受けたものの、市場の制度対応が進むにつれて耐震等級3の確保や高耐力壁に対するニーズは再び増加・伸長している」。

都市部狭小地の3階建て住宅やガレージ袖壁に加え、近年はリフォーム・ストック再生市場における需要が高まっている。「躯体完成後にはめ込める、という構造上の利点が、新築だけでなくリフォームや既存建物の耐震補強分野で高い親和性を発揮している」という。

実績事例として、京都市の木造伝統建築「柳原銀行記念資料館」の改修工事において、限界耐力計算のもと「タフ900」が100枚以上採用された実績を持つ。既存軸組の傾きや寸法測定・納まりといった施工上の課題をケアしつつ、リフォーム・ストック活用という新たな市場の可能性を切り開いている。

設計上の数値を現場で担保する施工精度が重要に

高耐力壁は設計上の高い数値を現場で確実に発揮させることが不可欠であり、メーカーによる施工支援やミス防止策の重要性が高まっている。設計図書通りの施工がなされなければ本来の性能を発揮できず、釘ピッチの誤りや釘の過度なめり込み、打ち忘れ、降雨による濡れなどが性能低下や倒壊リスクに直結する。また、現場の職人不足や熟練工不足が深刻化するなか、施工手順の簡素化や人為的ミスの防止、誰が施工しても同じ品質を再現できる仕組みが求められている。

日合連が展開する構造用合板「ネダノン」は、特殊な施工技能が不要で、新築・リフォームを問わず誰でも手軽に耐震性能を高められる高い施工性を備えている。構造用合板張り耐震補強壁(厚さ12㎜、24㎜)において、(一財)日本建築防災協会(建防協)の技術評価を取得。通常、建防協の技術評価工法を利用するにはメーカー講習会の受講が必要だが、日合連では専用ホームページ上での登録手続きのみで講習会を受けずに利用できる利便性を提供している。

伊藤忠建材は、「Mクロス」において、大臣認定の壁倍率3・7倍を成立させる条件として、指定納まり(床勝ちなど)、外周部100㎜・中通り150㎜の釘ピッチ、CN50釘の使用、釘のめり込み防止などを明確に規定。また、下地用途でのビス留めといった誤施工を防ぐため、リーフレットからQRコードで参照できる詳細な施工要領書を整備し、施工精度と施工品質の担保を図っている。

製造元の丸玉木材(北海道網走郡津別町)が合板製造から表面のライナー紙貼りまで一社一貫生産体制をとっているため、他社品に比べて高い製品品質の安定性と安定供給力を実現している点も強みだ。

日合連が展開する構造用合板「ネダノン」は、特殊な施工技能が不要で、新築・リフォームを問わず誰でも手軽に耐震性能を高められる高い施工性を備えている

日本ノボパン工業は、施工資料上は「1㎜までのめり込みは性能影響なし」としている一方、2㎜のめり込みで壁倍率が低下する試験データを活用。地震応答解析ソフト「wallstat」上で通常施工と2㎜めり込み施工の地震時挙動を視覚的に比較・提示する取り組みを推進している。

直近1年間で施工管理者向けの勉強会を積極的に開催し、単なる数値提示にとどまらず動画などで釘の打ちすぎや打ち忘れの危険性を伝えることで、現場の品質意識向上を図っている。そのほか、検査機関への説明資料として試験成績書を整備・提示するほか、ビルダー自社施工マニュアルへの技術助言などを通じて現場の施工精度確保をサポートしている。

アイカ工業は、「モイスTM」において、設計上の耐力性能を現場で適切に発揮できるよう、製品裏面に「使用釘の種類」や「打込みピッチ」などを印字し、打ち間違いや誤施工の低減を図っている。

また、法改正に伴い防火・構造に関する認定制度の運用が厳格化するなか、認定仕様や施工条件に関する情報提供の充実を図る。

さらに、「モイスTM」を製造するアイカテック建材の工場でのプレカット対応により、多様な現場ニーズに応えている。施工順に応じた荷姿の分割納品にも対応し、現場での裁断加工、粉塵、騒音、廃材を最小限に抑える。工場での切り落とし端材は原材料への還元や肥料原料(土壌改良材)として二次利用するほか、現場で発生した端材も専用袋に入れて床下の調湿材として活用できるなど、環境負荷低減と現場施工の省力化を両立させている。

さらに、希望するビルダーには、工場見学を通じて製造工程や品質管理工程を公開し、製品の品質を支える取り組みと高付加価値の理由を丁寧に周知している。

タツミは、技術資料や構造標準図、施工要領書において、施工手順や指定釘、禁止事項をイラストで詳細かつ明瞭に記載し、現場での不備を防ぐ情報発信を行っている。

初回施工や納まりに不安がある現場に対しては、顧客の要望に応じて営業担当者が現場に赴き、直接施工手順を確認・アドバイスする現場サポート体制を構築。現場営業と製品開発部門が即座に連携できる体制を整えており、技術的な不明点に対してもタイムリーに回答できる体制で施工精度を担保している。

タナカの「新・つくば耐力壁〈K型〉〈X型〉」は、寸法加工済みの木材(筋交い・中桟)と金物が1壁ごとに「箱入りセット」でプレカット納品される。専用の基礎金物や特別な木材加工が一切不要で、現場の大工が従来の一般的な筋交いを取り付ける感覚で迷わず施工できる。

特殊な施工研修を受講する必要がなく、製品に同梱される1枚の施工マニュアルを参照するだけで誰でも高精度な施工が可能。専用金物の手配忘れや現場の混乱を防ぎ、既存の施工ラインにそのままスペックインできる点が大きなメリットだ。

スクリムテックジャパンの「壁無双450」は、工場でGIR接着剤の注入・硬化から接合金物の取り付けまで完了させた「完成品」として現場へ納入。現場作業は柱頭・柱脚のボルト(ナット)を締めるだけで、1本あたりわずか3〜4分で完了する。キューブコネクターにはアンカーボルトのズレを吸収する「親子フィラー」が内蔵されており、現場での施工精度確保を強力にアシストする。現場施工の不確定要素や人為的ミスを排除して施工品質を確実に担保する。

長野県軽井沢町の全面ガラス張り別荘(「壁無双450」を32本採用)の事例では、朝9時に始まった建て方が午後2時には全柱の建て込みを完了するという驚異的な超時短・高精度施工を実証した。

ビスダックジャパンの「タフボード」は、複雑な金物や専用工具、プレカット加工が一切不要で、大工が指定釘を打つだけの簡易施工を実現。施工品質のばらつきを防ぐため、出荷時に釘を打つポイントがマーキングされている。現場の職人はマーキング位置に、指定釘を打つだけで、打ち間違いやピッチの乱れを防ぎ、設計通りの耐力を確実に発揮させることができる。施工の容易さと手頃な価格設定により、ビルダーからのリピート採用率は極めて高く、現場施工の確実性を裏付けている。

非住宅分野へ進出、高耐力が武器に

高耐力や開口の大きさを生かし、店舗・事務所・幼稚園などの中大規模木造・非住宅市場へ高耐力壁を活用する動きも加速している。中大規模木造・非住宅建築への進出とともに、現場の職人不足に対応する工期短縮ソリューションの開発が急務となっている。

構造用合板自体は最大で壁倍率20倍相当の性能ポテンシャルを有しており、中大規模木造建築においても採用が拡大している。

また、日合連が中心となり、従来の厚物合板を超える新たな構造材として「超厚合板(CLP:Cross Layered Plywood)」の開発に取り組んでいる。合板に関するJAS規格の改正を図り、非住宅木造建築の可能性を広げる新構造材として新たな用途開拓を目指しており、非住宅市場の拡大においても主要部材となるポテンシャルを秘めている。

日本ノボパン工業は、三井ホームの木造マンションブランド「MOCXION(モクシオン)」における高強度耐力壁「MOCX WALL」(壁倍率30倍)に「novopan STPⅡ」が採用されており、大規模木造への採用が進んでいる。また、他の住宅会社や業界団体などから、非住宅分野の開拓を見据えて、従来中心の9㎜品に加え、12㎜などの厚物・高倍率耐力壁に関する相談やサンプル提供の依頼が増加しているという。

「非住宅・大規模案件は計画から稼働まで3〜5年を要し需要の変動が大きいため、工場の安定操業と普及に向けては面材単体だけでなく、集成材・金物・接合部を含めたシステム全体の仕様標準化が不可欠。業界団体などとも連携し、誰でも設計・施工できる標準化体系づくりに取り組んでいる」。

ホクシンは、既存の構造用MDFとねじを組み合わせた高耐力壁の開発を進めているほか、従来は4・5㎜材2枚の積層で作っていた超高密度材について、単層9㎜(一発成型)での試作に成功し、現在耐力壁性能の検証を進めている。こうした高耐力壁の開発を通じ、木造3階建てや木造4〜5階建てなど高倍率ニーズの高い中大規模建築・非住宅市場を見据えた技術基盤の構築を目指している。

タツミの「バーリングウォール」の出荷数は前年より増加しており、従来中心だった住宅での小規模採用から、非住宅案件で1棟あたり約20枚を一括採用するような大型案件が登場している。

一般住宅よりも高い天井高が求められる非住宅ニーズを見据え、上部梁せい含め開口高約3500㎜に対応する最大仕様を設定しており、高い階高に対応できる点が非住宅分野での強力な強みとなっている。
中大規模木造を推進する「木構造テラス」の公開試験などを通じて構造設計者やゼネコンへ技術力をPRしているほか、大空間建築向けの構造工法・部材「TN‐WOLSH Beam」も非住宅用途で前年比1・5倍の出荷数を見込むなど好調に推移しており、高耐力金物や独立柱脚金物(80kN対応等)の開発とともに非住宅市場での展開を本格化させている。

タナカは、「新・つくば耐力壁〈K型〉〈X型〉」をはじめとする商品を武器に、戸建て住宅のみならず、商業施設、ガレージ、事務所、木造アパートなど非住宅・複合案件への採用が急増している。
3階建てや非住宅で高耐力壁を上下階で重ねて配置する「連層」ニーズに対応するため、引き抜き耐力約80kNを誇る「高耐力ホールダウンHi84」(105㎜角以上柱用、枠材仕様あり)を開発し、2025年3月より受注生産を開始した。

さらに中大規模木造をターゲットに、引き抜き耐力143kN級に対応する「高耐力ホールダウンHi143」(120㎜角以上柱用、M20アンカー対応)も開発し、高耐力壁とホールダウン金物のパッケージ提案で非住宅市場の開拓を強化している。

また自社工場内には全商品を取り入れた展示棟が2025年5月、竣工した。実際の空間イメージや施工性を訴求している。

スクリムテックジャパンの「壁無双450」が採用された軽井沢の六角形連体別荘は、NPO法人ティンバライズのT1グランプリにおいて「2026年度ホームコネクター賞」を受賞

スクリムテックジャパンの「壁無双450」は、住宅分野だけでなく、医療施設、ホテル、店舗、別荘などの非住宅・高付加価値案件への採用実績が急速に拡大。軽井沢の六角形連体別荘(全面ガラス張り、32本使用)の実績により、NPO法人ティンバライズのT1グランプリにおいて「2026年度ホームコネクター賞」を受賞した。

大阪都市部の坪単価200万円の3階建て住宅(1階ファサード全面ガラス張り、壁無双3本+ホームコネクターによるラーメンフレーム)や、奈良県で設計中のホテル(約30本使用予定)など多様な非住宅案件が推移している。

ビスダックジャパンは、戸建て住宅のみならず、1物件で「タフ600」「タフ900」を合計50枚以上一括採用する大型の非住宅案件が増えている。標準適用高さ(2295〜2895㎜)のほか、計算上の安全性が確認できれば特注サイズ製造にも対応している。

また、床・壁・天井などをパネル化する「『在来軸組六工種』パネル工法」の開発を進めており、パネルの垂直・直角を出す三角定規部材「タフトライ」に耐力を付加し、通常の合板壁(2.5〜3.7倍)にプラス1.5倍の耐力を加算できる技術開発を進めている。

また、関西圏などで課題となっている木造建築の基礎業者の減少・高齢化を見据え、工場で事前製造した基礎パネルを現場組み立てするプレキャスト基礎構想も推進中だ。パネル工法と組み合わせることで大幅な工期短縮と省人化を実現し、早ければ2027年のリリースを目指している。

「耐震等級3の確実な達成と安心の提供」「開放的で自由度の高い間取りの提供」「高断熱・高気密化と結露リスクの低減」、そして「中大規模木造・非住宅市場への進出」――。これら現代の木造建築に求められる多様なニーズを同時に叶える応える鍵こそが、高耐力壁だ。確実な現場施工性と高付加価値を担保するためにどの耐力壁を選び、どう設計に組み込むかが、これからの工務店・住宅会社の差別化と成否を大きく左右することになりそうだ。