建設現場の「特注品」をデジタルで標準化する 全国の工場ネットワークで描く建設産業の新たなエコシステム

BALLAS 代表取締役 木村 将之 氏

 

建設業界の深刻な人手不足とアナログな業界構造を、テクノロジーとサプライチェーンの再設計という新たな切り口で解決しようとしているBALLAS(バラス)。同社では、建築に用いる特注の金属部材について、図面作成から製造・施工までをデータでつなぎ、設計・調達業務の最適化を進めている。同社の木村代表が語る、建設業界の「工業化・標準化」に向けたビジョンとは―。

図面とネットワークで勝負する
工場を持たない建材サプライヤー

BALLAS  代表取締役木村 将之 氏

──まず、BALLASの事業目的と概要について教えてください。

我々は建築物で使用する特注の金属部材を専門に扱うサプライヤーです。サプライヤーと言っても、自社工場を持たず、全国150社以上のパートナー工場ネットワークで連携して製品を供給する「ファブレス型」の事業モデルを採用しています。受注案件に対して、デジタル技術を活用して特注部材の製作図を引き、その図面・仕様に基づいて最適なパートナー工場様へ発注・製造し、現場へ納品する。

設計・製造・調達・施工までの分断されがちな建設部材の供給プロセスをデータでつなぎ、最適化している点が特徴です。

──特注部材は通常どのように製造されるのでしょうか。

一般的には、工事を受注した施工会社や製作工場が、建築物全体の設計図書などを参考にしながら、個別に特注部材の製作図を作成していくのが業界の慣習です。そこから特注部材の製造をはじめていきます。
しかし、施工会社も工場も熟練の職人さんのリタイアなどで極めて深刻な人手不足に直面しており、建設図面を一枚一枚読み解き、製作図に起こしていく作業は大きな負荷になっています。

さらに問題なのは、上流の大手ゼネコンではBIMなどの3Dデータ活用が進む一方で、工場へ情報が渡される段階では、2Dの図面に書き戻さなくてはならない「情報の断絶」も起きています。

──なぜ、せっかくの3Dデータを二次元に戻してしまうのでしょうか。

建築設計で用いられるBIMなどの3Dデータは、建物全体の空間や構造、設備同士の干渉などを立体的に把握し、設計・管理するために非常に有効です。

一方、製造現場では、部材ごとの寸法や加工位置、接合方法などを正確に指示する必要があります。製造現場では現在も、必要な情報を一覧性高く確認できる2Dの「製作図」が広く用いられています。つまり、建築設計と製造では、求められる情報の役割や粒度が異なるのです。

その結果、上流で3Dデータが整備されていても、製造工程では2D図面への変換作業が発生します。さらに、設計変更が起きた際には2D図面側も修正する必要があり、手戻りや重複作業が生まれやすい構造になっています。そこで、当社が「上流と下流のデジタルの隙間」を埋める仲介役を担っているのです。

──どのようにして「上流と下流のデジタルの隙間」を埋めたのでしょうか。

私は商社で金属材料の輸出入や、3Dプリンターをはじめとする新たな製造技術に携わっていました。製造領域のデジタル化に向き合う中で、建設業では特注部材の調達や製作プロセスに大きなボトルネックがあることを実感しました。

例えば、階段や手すり、配管を支える架台(鋼材)などは、建物の形状に合わせて一つひとつ設計される「一品一様」の世界。階段の段数が一段違うだけで、製作図をゼロから引き直すといった作業も発生します。私は「特注品をデータとして構造化し、標準化できれば、建設業界全体の生産性を向上できるのではないか」と考え、BALLASを起業しました。

現在は、AIを活用し、図面データから「ここに8段の階段がある」、「高さは2000㎜だ」といった情報を構造化データとして自動抽出しています。

そのデータを活用することで、これまでは熟練の職人が頭の中で行っていた「図面の立体化」と「製作図への展開」を、システム上で再現しています。

技術的には現在のAIでも十分実現可能な水準に達しています。とはいえ、現時点では精度は70〜80%程度ですので、プロの設計エンジニアが微調整を行い、高精度な製作図へ仕上げています。

この結果、BALLASのパートナー工場様は、複雑な製作図作成業務を担うことなく、製造に専念できる体制を実現できるのです。

このように、蓄積した特注部材のデータを構造化・標準化することで、これまで個別最適になりがちだった設計・調達・製造プロセスをデータでつなぎ、サプライチェーン全体の最適化を進めています。

──特注部材をどのように標準化しているのでしょうか。

特注部材であっても、その内容を分析していくと、実は共通化・標準化できる部分が数多くあることが分かってきました。そこで、特注品に含まれる共通項を抽出し、そのデータをもとにしながら独自の「3D標準モデル」を開発しています。

例えば、階段であれば「高さ」や「幅」などのパラメータを入力するだけで、瞬時に3Dモデルが生成され、さらに製作に必要な2D図面を自動で書き出すシステムを構築しています。

「3D標準モデル」は顧客とも共有しており、設計者の方々などはこの標準モデルを利用して設計を行っています。
つまり、従来は「一品一様」とされてきた特注部材の世界を、データによって構造化し、標準化可能な領域へ変えているのです。

──自由を求める設計者などから標準化に対する反発はありませんでしたか。


この記事は無料でお読みいただけます。

アカウントをお持ちの方

ご登録いただいた文字列と異なったパスワードが連続で入力された場合、一定時間ログインやご登録の操作ができなくなります。時間をおいて再度お試しください。