大和リースが描くグリーンインフラ事業の最前線 システム建築からリーシングまで総合力で「緑」の価値を高めていく

大和リース 取締役常務執行役員 規格建築事業部長 環境緑化事業部長 嶋田浩司 氏

 

都市の緑化から公園の再生、そして生物多様性の保全まで、環境に配慮したまちづくりが急務となっている。
大和ハウスグループである大和リースでは、システム建築や商業施設開発のノウハウと、高度な造園・緑化技術を融合させ、独自の「グリーンインフラ事業」を力強く推進している。
同社で規格建築事業部長と環境緑化事業部長を兼任する嶋田浩司取締役常務執行役員に話を聞いた。

大和リース
取締役常務執行役員 規格建築事業部長 環境緑化事業部長

嶋田 浩司 氏

大阪・関西万博を彩る
「リング」の特殊緑化とシステム建築

── 昨年の大阪・関西万博では、御社が手掛けた大屋根リングの緑化が注目を集めたそうですね。

万博のシンボル的な存在であり、世界最大の木造建築でもあるリングについては、1周約2㎞におよぶスカイウォークが設置されました。そのスカイウォークの約3万4000㎡におよぶ面積を当社で緑化していきました。リングの上というのは高さが13mから21mほどあり、海沿いで非常に風が強いという、植物を健全に生育させるには過酷な環境でした。

当社の屋上緑化システムである「ecoヤネ」によって緑化する計画だったのですが、施工前に風洞試験などを実施し、過酷な環境下でも安全に質の高い緑化が行えることを検証してから施工にあたりました。

デザイン面は、ランドスケープデザイナーである忽那裕樹さんが全体計画を担当されていました。忽那さんから「四季折々の草花で回廊を作りたい」という提案があり、日本の四季の移ろいを感じられる植栽計画を目指しました。

国内外の来場者の方々から高い評価を得ることができ、多くの反響をいただくことができました。

──システム建築の分野でも万博に貢献されたと伺いました。

我々の主力事業であるシステム建築も数多く採用されています。海外のパビリオンが集まる「コモンズ館」をはじめ、各施設のバックヤードやストックヤードなども我々が手がけました。 

これらは解体して再利用することが前提となっており、資源を循環させるこれからの時代のニーズに合った提案ができたと考えています。

大阪・関西万博では、リングに設置されたスカイウォークの緑化を担当した

グリーンインフラ事業の4本柱

──万博での実績からも御社の技術力の高さが伺えますが、現在注力されている「グリーンインフラ事業」の全体像について教えてください。

私たちは、グリーンインフラ事業を大きく4つのキーワードで展開しています。

1つ目のキーワードは、都市の緑を「ふやす」事業、2つ目はPark―PFIなどを活用し賑わいある空間を作りだす「にぎわう」。3つ目は雨水貯留や一時避難所としての公園整備などを行う「そなえる」。そして4つ目が、生物多様性などを保全する「まもる」です。

都市緑化の課題と新たなパッケージ提案

──1つ目の「ふやす」についてですが、現在の都市緑化のニーズをどのように捉えていますか。

都市緑化への注目度は高いものの、ビジネスとしては非常に難しい部分があることも事実です。植物は生き物ですから、初期費用だけでなく維持管理のランニングコストがかかります。これを単なる「コスト」とみなしてしまうと、昨今の人件費や物価高騰のあおりを受けて、最終的に予算カットの対象になってしまう。

そこで、当社では緑化に関する新しい価値を創造していこうとしています。

例えば、緑化単体で提案するのではなく、システム建築や商業施設の開発と「パッケージ化」する提案に注力しています。

「雨水循環型壁面緑化」という緑化システムがあるのですが、これは雨水を貯めて、それを太陽光発電で発電した電力を使いながら壁面緑化の水やりに使うというものです。この緑化システムをシステム建築と一体化し、公園内の建物に活用する事例も増えてきています。

大和ハウスグループの中でも緑化を専門に扱っているのは当社だけですので、グループの総合力と連携も活かしながら、緑の価値を企業価値向上やブランディングに繋げていただく提案を強化しています。

Park‐PFIと商業施設の相乗効果

──2つ目の「にぎわう」については、いかがですか。

現在、全国には約13.7万カ所の都市公園がありますが、昭和50〜60年代につくられたものが多く、老朽化が進んでいます。人口減少や財政難で行政による管理が難しくなる中、民間の活力を導入するPark-PFIによって、新たな価値を生み出そうという取り組みが進んでいます。

当社では現在、全国で約50カ所の公園で管理業務を手掛けています。

当社は商業施設の開発と店舗誘致(リーシング)事業も行っています。当社の強みである豊富なリーシングのノウハウとネットワークを活用することで、公園内に人気のカフェやコンビニエンスストアを誘致し、その収益を使って公園の遊具を新しくしたり、トイレを改修したりすることができます。

同じコーヒーを飲むにしても、美しい緑と水辺のある公園のカフェであれば、お客さまは喜んで対価を支払ってくださいます。公園とカフェは非常に相性が良いのです。

一方で、公園には賑わいだけでなく、木陰で鳥のさえずりを聞きながら静かに過ごしたいという「安らぎ」のニーズもあります。賑わいと安らぎの両方を守るためのバランスに配慮しながら、公園の管理を行っています。

──商業施設自体にも緑を取り入れているそうですね。

私たちは「フレスポ」や「ブランチ」といった商業施設ブランドを展開していますが、一般的に商業施設の外構は駐車場とアスファルトが多いのに対して、我々は積極的に緑化を行っています。 

緑を豊かにすることで施設のブランド力が上がり、テナントさんからの評価や集客にも良い影響を与えています。この点も緑の価値であり、今後も訴求していきたいと考えています。

雨庭と防災公園の整備で災害に備える

──3つ目の「そなえる」では、災害対策としてのインフラづくりなどを進めているそうですが。

近年、集中豪雨によって下水管の処理能力を超え、マンホールが飛ばされるような被害が多発しています。これは都市部のアスファルトやコンクリート化が進み、水を一時的に溜めておく機能が失われたことが原因のひとつです。

当社は、「雨庭(レインガーデン)」の整備を推進しています。降った雨を下水管へ一気に流すのではなく、一時的に地中に貯留・浸透させる仕組みです。東京都の補助金も活用しながら、自社の商業施設などへの設置を進めており、東京都から「雨水しみこみアンバサダー」にも認定されました。

──公園の防災拠点としての役割も重要ですよね。

おっしゃる通りです。災害時には公園が一時避難所になります。そのため、いざという時にかまどとして使える「かまどベンチ」や、災害用トイレになる施設、井戸水の設置、管理事務所への防災グッズの備蓄など、ハードとソフトの両面で防災機能を強化した公園づくりを行っています。

生物多様性空間の創出も

──4つ目の「まもる」では、どのような取り組みをされていますか。

地球環境がますます深刻化する中で、生物多様性を守るビオトープの重要性が増しています。我々は、商業施設の一角などに地域の生態系を再現する取り組みを行っています。

例えば、秋田の「フレスポ御所野」では、近隣にある八郎潟の植物や生物を再現したビオトープを作り、環境省が生物多様性の保全が図られている区域を認定する「自然共生サイト」に選ばれています。採算面だけを考えるのではなく、社会的な意義と施設の魅力を高めるために継続しています。

GREEN×EXPO 2027への挑戦

──最後に、2027年に横浜で開催される国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)での取り組みについて教えてください。


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