CES 2026 現地レポート後編 「フィジカルAI」と「Longevity」が再定義するこれからの住宅価値
2026年1月6日〜9日、ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」。本レポートでは、スマートホームのプロフェッショナル集団X-HEMISTRYの代表であり、Matterの国内普及を推進する新貝文将氏が、現地で体感した「AIホーム」の最前線を2回にわたり解説する。前編では、生成AIと標準化技術がもたらす「アンビエントな暮らし」の具体像について、後編では、ロボティクスや「Longevity(健康寿命)」といったキーワードから読み解く、住宅産業が直面するゲームチェンジについて詳報する。
ロボティクスの台頭
CES 2026において、もう一つの主役はロボティクス、いわゆる「フィジカルAI(身体を持つAI)」であった。過去最多と言っても過言ではない数のヒューマノイドロボットや家庭用ロボットが展示され、「動くAI」の存在感が急激に高まった年として記憶されるだろう。
その背景には、2025年のCES基調講演でNVIDIA CEO ジェンスン・ファンの言葉、「フィジカルAIの時代が来る」がある。彼の発言を契機に、CESに出展する企業たちが「AIが身体を持つ」という新たな文脈に一気に傾いた。

LGの「CLOiD」は、洗濯物をたたみ、冷蔵庫から食材を取り出すデモを実演し、未来の家事支援ロボットの姿を提示した。一方で、動作はまだ緩慢であり、実用化には相応の時間とコストがかかるという冷静な評価も見られた。
SwitchBotの「Onero H1」は、より現実的な価格帯と機能を打ち出し、一部メディアからは一定の評価を受けたが、より低廉な価格帯と動作速度の改善や信頼性の向上を果たすにはもう一段階のブレークスルーが求められる。現時点では、家庭用ロボット、とりわけヒューマノイド型の普及は、なお遠い未来の話のように思えた。
それよりも現実解として期待されるのは、スマートホームがフィジカルAIの〝手足〟となり、生活の中でささやかな課題を静かに解決してくれる未来像である。センシング、オートメーション、音声、AIによる制御、そして標準化されたインターフェースが連携することによって、家そのものが住まい手を支える存在へと進化しつつある。

今年のメガトレンドキーワード
「Longevity(ロンジェビティ)」
個人的に関心を高めたキーワードが、CES 2026の主催者であるCTA(全米民生技術協会)が掲げたメガトレンドの一つ「Longevity(長寿社会)」である。ここで言うLongevityとは、単なる生物学的な寿命を延ばすことではなく、健康的で活動的な状態をいかに長く保つか、すなわち「健康寿命の最大化」に主眼が置かれている。病気になる前に兆候を察知し、症状が出る前に予防する。そうした〝未病〟への取り組みが、今後のテクノロジー活用の鍵となる。



そのためには、日常の暮らしの中で無理なく健康状態をモニタリングできる仕組みが不可欠であり、住宅に常設されたセンサーや、着用型デバイスを通じた〝アンビエント・ロンジェビティ〟の構築が求められる。重要なのは、それらを「利用者が努力せずに自然と使える」形にすることだ。体重計のような形で、体重だけでなくロンジェビティの指標を多数取得できるWithings社の「ボディ・スキャン2」も多くの注目を集めていた。
たとえば、Xandar Kardianのセンサーは、壁にセンサーをつけておくだけで、非接触で呼吸や心拍を計測し、心疾患や感染症の早期兆候を検出することができる。また、Aqaraのミリ波センサーも壁に取り付ける製品だが、高齢者の転倒を検知する〝気づき〟を提供する。スマートロックやその他のスマートホーム機器、センサーなどの使用パターンをAIで解析すれば、生活の中での〝異常〟を即座に察知する仕組みもAIのおかげで容易に整えることができるようになってきた。
さらに、ロボットは「家事代行」だけでなく「孤独の解消」という視点でも注目されている。たとえば、AIを搭載したペットロボット「Sweekar」のような存在は、高齢者のメンタルヘルスを支える有力な選択肢となり得る。
このように、スマートホームという住環境を通じて、AIは単なるスクリーン上のツールではなく、物理的な空間を通じて住まい手の健康と安全を守る存在へと進化しつつある。住宅そのものが〝ケアを提供する空間〟へと変質していく兆しが、確かに今、始まっているのである。

住宅業界に起こるだろうゲームチェンジ
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