省エネ義務化の先へ 建材は社会とどう向き合うか 断熱・健康・共感力の時代
(一社)HEAD研究会 副理事長 山本想太郎 氏
── 「プレミアム住宅建材50」のうち、特に注目する商品を5つ挙げてください。また、注目する理由、どういったところを面白いと思ったのかを教えてください。
50商品の建材リストを見ると、「断熱材」が非常に大きなボリュームを占めています。どうしてもそうならざるを得ないのが今の業界の現状です。一言で言えば、省エネ基準の適合義務化の影響は凄まじい。現場からは「悪法」と受け止められないほどの負荷が生じています。
設計の現場では今、とにかく断熱材を入れなければいけない。なぜかというと、建設費が高騰しすぎていて、今新築を建てられるのは実質的に富裕層、つまり高級住宅の案件ばかりなのです。そうした高級住宅には共通した特徴があり、例えば「地下室」が非常に充実している。しかし、今の省エネ計算だと、地下は外壁性能として加算できないのに、エネルギー消費量にはしっかりカウントされる。そうなると、地上部分の断熱材の厚みでカバーしなくてはいない。結果として、これまでの常識では考えられないような仕様を求められ、「一体どうやって納めるんだ」と頭を抱えるケースが続出しています。
そうした厳しい状況下で、断熱材として注目したのは、旭ファイバーグラスの建築用真空断熱材「VIP‒Build」です。これまでの断熱は、厚みで性能をかせぐのが当たり前でした。しかし、断熱材の厚みが150㎜、200㎜となっていくと、住空間そのものを圧迫してしまう。意匠的にも収まりが悪くなる。そこで「薄い真空断熱」という選択肢が浮上します。もちろん、現場で釘一本打てない、穴を開けたら破損するといった施工上の難しさはありそうです。耐久性についても未知数な部分はあるが、今の日本の省エネ基準を、意匠を損なわずクリアしようと思えば、こうした極薄・高性能な材料の進化には期待せざるを得ません。
JFEロックファイバーの断熱と吸音・遮音を兼ね備えた「ロクセラム サイレント36」にも注目しました。吸音・遮音は特にマンションのリノベーションで切実な問題です。リノベーションをする際、音対策として最大の悩みは「上の階の音」なのです。しかし、上の階の住人に「床を張り替えて静かにしてくれ」とは言えない。結局、リノベする側が自分の天井で何とかするしかないのです。「下の階の天井で音を止める」というのは、リノベ業界にとっては長年の悲願、いわば「夢」なのです。ロックウールなどの吸音性能がある断熱材を天井裏に上手く施工して、室内環境を整える。こうした「静かな空気」をつくる建材は、今後ストック活用が進む中で、断熱性能と同じくらい重要視されるはずです。
開口部のリノベーションの可能性を広げる建材として、YKK APの「ウチリモ 内窓」も選びました。断熱性の低い寒い住宅を断熱改修で暖かくしたいと思っても、サッシにアプローチするのは非常に難しく、基本的に選択肢は内窓になります。しかし、納まり寸法の問題で設置できないケースが多い。既存の間窓枠に、ふかし枠を追加して、内窓をつけることもあるのですが、この「ウチリモ 内窓」は、見込み寸法最小47㎜から設置可能です。
内窓は、外窓ほど気密性能や耐風圧強度は求められません。外窓で防火設備の認定を取っていれば内側では必要ありません。そういう製品特性を考えると、さらに薄くできるはずです。さらに30㎜程度まで薄くできれば、より多くの場所に設置可能になると期待しています。
内窓は窓額縁の内側に収まることが大前提ですが、そもそも窓額縁が十分に確保されていない窓も多い。そういうところにも簡単に付けられる内窓があれば使いたいですね。
化学物質問題は次の建材リスク
── その他に注目した建材はありますか。
建築業界の将来を大きく変える可能性のある重要な課題として化学物質問題があると見ています。化学物質過敏症の潜在的罹患率は全世界で10数パーセントに達するとされ、日本でも同様の傾向が見られます。現在のシックハウス法はホルムアルデヒドなど限定的な規制にとどまっており、より厳しい規制が導入された場合、建材業界は相当な影響を受ける可能性があります。
対策として二つのアプローチがあります。一つは化学物質除去技術の活用です。ルノンの「空気を洗う壁紙Ⓡ」は、ホルムアルデヒドに加えて、ニコチン、酢酸、アセトアルデヒド、硫化水素、アンモニア、トリメチルアミン、メチルメルカブタンの8つの原因物質に対して、触媒の作用で吸着・分解の効果を繰り返し発揮します。実際に使用し一定の効果があり、高く評価しています。
もう一つは自然素材をはじめとした有害な化学物質を放散しにくい材料の使用です。以前、千葉大学と積水ハウスなどが共同研究するケミレスタウンで、珪藻土系壁材、自然系塗料、無垢フローリングなど有機合成物質を極力使わない建材で構成された住宅を体験したことがありますが、入った瞬間に空気環境の違いが分かりました。
化学物質の話に付け加えて言うと、頻繁にリノベーションの仕事をやっていて思うのは、安易な短周期リノベーションを繰り返さないことも重要だということです。リノベを行うことは、結局、新しい建材を使うことになります。化学物質は新しい建材から放散されて、徐々になくなっていくものです。リノベだから気軽にどんどんやればいいという風潮には疑問を感じます。そうした観点から田島ルーフィングの60年の耐久性を持つ「マスタールーフィング」も選びました。建材・建築空間のライフサイクル延長に貢献し、化学物質・エコ両面で重要な意味を持ちます。こうした超高耐久の製品を実現できるのであれば、あえてライフサイクルの短い製品は残さずに標準仕様にした方がいいとも思います。屋根の下葺き材は外装なので化学物質はそれほど問題になりませんが、内装材でも長い時間を共に過ごせるような製品が増えていってほしいですね。
宅配ボックスは社会インフラ
── 『プレミアム住宅建材50』の商品だけに限らず、注目している建材はありますか。
この記事はプレミアム会員限定記事です
プレミアム会員になると続きをお読みいただけます。
料金・詳細はこちら
新規会員登録
無料会員登録後にプレミアム会員へのアップグレードが可能になります
アカウントをお持ちの方
ご登録いただいた文字列と異なったパスワードが連続で入力された場合、一定時間ログインやご登録の操作ができなくなります。時間をおいて再度お試しください。
住まいの最新ニュース
リンク先は各社のサイトです。内容・URLは掲載時のものであり、変更されている場合があります。
イベント
内容・URLは掲載時のものであり、変更されている場合があります。
-
ジャパンホームシールド、住宅事業者向け不動産ビジネス成功戦略ウェビナーを開催
2026.03.17
-
インテグラル 中大規模木造の構造デザインをテーマにセミナー
2026.02.26
-
ソトダン21 特別オープンセミナーを開催
2026.02.26




