New   2026.3.4

CES 2026 現地レポート前編 AIが「インフラ」となったスマートホームの現在地

「アンビエント」な暮らしとMatter・Aliroによる標準化のその先

 

2026年1月6日〜9日、ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」。本レポートでは、スマートホームのプロフェッショナル集団X-HEMISTRYの代表であり、Matterをはじめとする国際標準規格の国内普及を推進する新貝文将氏が、現地で体感した「AIホーム」の最前線を2回にわたり解説する。前編では、生成AIと標準化技術がもたらす「アンビエントな暮らし」の具体像について、後編では、ロボティクスや「Longevity(健康寿命)」といったキーワードから読み解く、住宅産業が直面するゲームチェンジについて詳報する。

AIのインフレとある種の「納得感」

予想通り、ラスベガスで開催されたCES 2026は「AI一色」のイベントとなった。会場の至る所で「AI」の文字が踊り、あらゆる製品にインテリジェンスが宿る近未来が披露された。

しかし、数日間にわたる視察を終えた率直な感想を述べれば、心底あっと言わせるような、魔法のようなAI実装製品やソリューションには、正直出会えなかったというのが本音である。未知の技術に対する驚愕というよりも、「あぁ、それは生成AIでできるよね」「なるほど、そういうユースケースもあり得るよね」といった、ある種の「納得感」が支配していた。冷静に考えれば、従来では考えられなかった機能が数多く登場していたにもかかわらず、である。

「Know Bofore You Know(あなたが知る前に察する)」というキャッチコピーと共に展示されたXandar Kardianの製品

一部メディアでは「AIへの過剰な依存」「プライバシーの侵害」「消費者を置き去りにした高価格化」といった否定的な論調も見られた。確かに、目新しさを競うような展示が皆無だったわけではない。

だが思い出してみると、ChatGPTの登場以前、2022年以前のCESにおけるAI関連展示は、「それは本当にAIなのか?」「単なるアルゴリズムをAIと呼んでいるだけではないか」という疑念に満ちていた。だが、生成AIの登場以降、状況は一変した。かつて数少ない「リアルなAI」として存在していた技術は急速に進化し、当時では夢物語だった機能が、現在では無料あるいは極めて安価に、消費者の手に届くようになった。

これは驚くべき変化であり、「インターネット以来の巨大インフラ」が出現したと言っても過言ではない。専門家でなくとも少し学べば使いこなせ、いったん手にすれば手放せなくなる。私自身にとっても、AIはすでにインターネットやスマートフォンと並ぶ不可欠な存在である。そしてこれから、AIはスマートホームをはじめとする技術を通じて、生活空間や職場などあらゆる領域に浸透していく。

住宅・IoT業界では長年、「IoTのデータは金脈である」と言われてきた。しかし、膨大なデータを価値に変える術は見つからず、その言葉は半ば幻想のように扱われてきた。だが、LLMをはじめとするAI技術の急速な発展により、いよいよそれが「錬金術」として現実味を帯び始めた。今年のCESは、そんな社会実装の「元年」であったと感じている。

もはや「つながること」は当たり前であり、これからの競争軸は「得られたデータをAI化し、いかに顧客体験を高めるか」に移行しつつある。

IoT×AIが起こす真のデータ活用とアンビエントな暮らし

AIがIoTにとっての〝錬金術〟となったことを最も象徴していたのが、Samsungが掲げた「AIとともに暮らす(Companion to AI Living)」というビジョン、そしてそこから導かれた「ゼロ家事」の提案である。


この記事はプレミアム会員限定記事です

プレミアム会員になると続きをお読みいただけます。
料金・詳細はこちら

新規会員登録

無料会員登録後にプレミアム会員へのアップグレードが可能になります

アカウントをお持ちの方

ご登録いただいた文字列と異なったパスワードが連続で入力された場合、一定時間ログインやご登録の操作ができなくなります。時間をおいて再度お試しください。