地方創生の出発点~“人”を生かす~ 単に“女性を集めよう”だけでは飽きられる 津南町町長 桑原悠氏
ハウジング・トリビューン、観光経済新聞、東京交通新聞、塗料報知、農村ニュースの専門5紙誌では、
2025年度の共同キャンペーン企画として「地方創生の出発点 ~〝人〟を生かす~」を展開している。
地方創生を若者、女性、外国人という「人」に焦点を当て掘り下げる。
第3回目のインタビューは、津南町町長で政府の男女共同参画会議議員も務める桑原悠氏に地方創生における女性活躍の課題や今後などについて話を聞いた。

桑原 悠氏
津南町町長
1986年生まれ、新潟県津南町出身。早稲田大学社会科学部卒業後、東京大学公共政策大学院修了。2011年津南町議会議員選挙当選。2018年津南町長選挙で当選、第6代津南町長に就任(当選当時全国最年少)。政府の男女共同参画会議議員、中央教育審議会委員を務める。
―― 男女共同参画会議に参加して見えてきた課題は。
まず、改めてこれまでの経緯を振り返ると、男女共同参画の根本として、戦後の日本国憲法の『法の下の平等』と婚姻・家族分野での両性の本質的平等から端を発しており、法律としては国際法の整備に付随する形で1986年に男女雇用機会均等法が成立したのが大きな流れ。その後、1999年に男女共同参画基本法が制定されたことに伴い、5年ごとに「男女共同参画基本計画」が改訂、取り組みが進められている。現在(2025年)、第6次となる計画の検討が進められているところだ。実際のところ、男女共同参画基本法の制定後25年間で女性管理職の増加や働き方改革などの動きとも繋がって男女共同参画が進んできた。
2021年からは、女性活躍・男女共同参画の取り組みを加速するために、毎年6月をめどに政府決定し、各府省の概算要求に反映することを目的とした「女性活躍・男女共同参画の重点方針(女性版骨太の方針)」が策定されている。2025年の方針は「いつでも・どこにいても、誰もが自分らしく生きがいを持って生きられる社会を目指す。多様な地域で多様な幸せを実現させ、活力ある日本を目指す」というテーマのもと、5つの柱立てで構成されている。その1番目に来ているのが、「女性に選ばれ、女性が活躍できる地域づくり」だ。そのなかでも、「女性起業家を増やす」という点が最も上にきている。ただ、現場としては「そう簡単ではないし、そう多くはない」というのが本当のところ。まずは、女性が働きたいと思える「良い職場」にしていく事が重要だ。
令和6年度の「地域における女性活躍・男女共同参画に関する調査報告書」によると、出身地を離れた理由として、①希望する進学先がない②やりたい仕事・就職先が少ない③地元から離れたかった、の3点が多くを占めていた。特にこのうちの①、③の理由は女性で顕著となっており、多くの女性が出身地に『居づらさ』を感じていることがわかる。これが地方にとって重要なポイントだ。各職場が率先して、働きやすい、面白いと感じられ、ここに残りたいと思える職場になることが必要だ。それに加えて、免許など様々な資格の取得支援や子育ての補助、同じ悩みを抱える女性が会社横断、業界横断で出会えるコミュニティづくりも必要となる。
一方、都会の女性で(産業によっては競争の過熱で)厳しい環境に陥っている方々、辛い思いをしている方々を都会の中だけで解決しようとするのではなく、地方創生の議論とも連動させ、地方の職場や生活環境を魅力的にすることで、地方が受け皿になれないかとも考えている。
出身地を離れた理由の2番目である「やりたい仕事・就職先がない」については、現在津南町で取り組んでいることがある。町にはかつて公的年金資金で建設された「グリーンピア津南」があり、町が土地・建物を所有、民間が運営している。これを再生させ観光立て直しを図るため、民間への譲渡をしたいと考えている。民間資本、民間運営とすることで女性にとって魅力的な職場の選択肢の一つとなることを期待している。
観光は、女性や若者が力を発揮しやすい、リードしやすい産業の一つだと感じている。
―― 女性版骨太の方針では、地域における人材確保・育成なども項目として挙げられていますが。
まず、地方創生に関するデータとして、男女問わず仕事を理由に地元を離れるというものがある。ただし、高校生までの間に地域産業・地域企業についてよく知っている人はUターンする率が高まるという。そうした意味でも子どものときから地元の産業と連携して知ってもらう取り組みが重要となる。
津南町では、探究学習として、児童・生徒の時代から地域の産業に関わって町を変える、社会に関わって良くしていくという経験をしてもらっている。例えば、高校生が小学生に向けて防災について、先生をするといった取り組みを実施して大人になってからの活躍イメージをもってもらうようにしている。
―― 津南町における若者・女性の社会増減の現状はいかがでしょうか。
残念ながら増加とはなっていない。大きな減少ではないが、毎月減少が続いている。実際の状況をみてみると、一旦来ていただいた人でもすぐ出ていってしまうことがある。なかなか都会からすぐに地方での生活というのは難しい部分がある。そのための取り組みとして、都市と地方が連携した工夫やチームづくりなど、女性がその地域の中で居やすい工夫を少しずつしているところ。
一例として、24年に町立病院に勤務いただいた女性医師の例がある。津南町だけでなく、東京との2地域で活躍していただいた。女性医師には、現場の患者さんをみるという臨床だけでなく、病院の経営に参画していただいた。そうした、若くして裁量が大きい仕事ができるという点が、チャレンジ精神の強い女性にはアピールとなったようだ。いずれにせよ、単に女性を集めよう、人を集めようという目的だけでは、見透かされて、飽きられてしまうのも早い。しっかりとその地域の骨太なビジョンを伝えていくことが人を集めるのに重要なのではないか。こうした二拠点居住の好事例が出てきたので、医療人材だけでなく、別の産業にも広げていければと考えている。
拡大に向けては政府が取り組んでいる『ふるさと住民登録制度』における特例措置などもあるので、そうした国の制度も活用しながら取り組んでいきたい。
―― 地方創生において「観光」が果たす役割とは。
若者・女性から選ばれる地域づくりが地方創生の一番の柱となっており、遍在性の解消が地方創生の大きなテーマとなっている。そうしたなかで観光は女性や若者が活躍しやすい、リードしやすい産業の一つだと感じている。
地方にとっては地域資源を活用した重要な産業であり、女性や若者にとってより魅力ある職場となり、産業全体が更に盛り上がることを期待している。
―― 街づくりにおける魅力ある景観形成策は。
例えば、空き店舗を国の「地方創生テレワーク交付金」や「コロナ対策交付金」を活用してリノベーションを行い、地元の木を使ったきれいな施設にし、それによって同施設の利用率が増えた。
そうした点からも、若者や女性が魅力的に思う建築、景観づくりが重要だと感じている。
加えて、景観で言えば、十日町市とともに取り組んでいる大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレも重要な取り組みの一つ。自然とアートを織り交ぜながら表現することで女性の注目を集めるイベントとなっている。特に20代、30代の女性の訪問が多く、更には単に訪れるだけでなく、芸術祭に関わってみたい、運営するNPOに就職してみたいという女性も出てきている。
―― 空き家対策について何か実施しているか。
空き家バンクを運用し、改修支援なども行っている。更にただ売り手と買い手をマッチングするだけでなく、移住コーディネーターを配置し、例えば、津南町の場合、豪雪地帯であるため、雪の苦労を理解していただけるようなソフト面でのサポートも行っている。
また、近年は手伝いをしながら旅をする「おてつたび」というサービスを活用し、お正月行事など集落の行事に参加してもらうといったことも取り組んでいる。関係人口から定住人口へとステップアップにつながればと思っている。
―― 女性が交通分野に参画する際のポイント、期待について。
津南町では、実際のドライバーでの事例はないが、女性の活躍に向けては、なにより女性が働きやすい環境づくりが重要だ。まず、他の産業にも言えることだが、ハラスメント対策の徹底、会社として従業員を守る姿勢をきちんと見せるということ。すなわち、当たり前のことをしっかりとやっていくことが大切だ。そのうえで、免許などの取得支援や子育ての補助、女性コミュニティの形成などの取組も進めていく必要がある。
―― 農業において、女性が参画するうえでの課題(特に経営面)や必要なことは。
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