New   2026.1.28

「実需」が支える首都圏マンション高騰 金利上昇局面を迎え住宅ローンの選び方にも変化の兆し

ニッセイ基礎研究所 小林正宏 客員研究員

 

資材価格の高騰、土地価格の上昇により、住宅価格も高くならざるを得ない時代となり、特に都市部において住宅の取得環境は悪化し続けている。
一方で、金利上昇局面に入り、借入限度額への影響も懸念されている。
住宅価格高騰、金利上昇は、2026年の住宅マーケットにどのような影響を及ぼすのか。
ニッセイ基礎研究所の小林正宏 客員研究員に聞いた。

ニッセイ基礎研究所 小林正宏 客員研究員

首都圏マンション価格高騰の背景
供給制約と強い実需

―― 2025年は、東京など大都市部で新築マンション価格の上昇が続きました。2026年はどうなるのか、都市部での住宅価格の見通しについて教えてください。

昨今の首都圏マンション市場における価格高騰は、単なる投機的な動きだけではなく、構造的な要因が強く影響しています。

2025年は首都圏マンション価格高騰に関連して外国人の投機的購入が影響しているのではないか、ということが話題となりましたが、2025年11月に、国土交通省が登記情報などを活用して行った新築マンションの取引についての調査結果からは、国外に住所がある者による取得割合は東京都で3.0%であり、意外と少ないということがわかりました。

国籍が登記情報に入っていないことなどから、実態が必ずしも反映されないのではないかといった話もありましたが、首都圏のマンション市場においては、日本人による「実需」が非常に根強いのが実態かと思われます。

新築分譲マンションの価格は、高額な大規模物件が出ると跳ね上がるため、月次の数字を追ってもあまり意味がありませんが、12カ月移動平均で見ても上昇トレンドが続いています。マンション価格は、基本的には需要と供給のバランスによって決まりますが、現在は供給戸数が大幅に減少しており、価格を下げる要素が見当たりません。

実際にマンション供給戸数と平均価格のデータを見ても、図1のとおり、供給が減っている中で価格が上がっているということが明確に分かります。

供給が減り価格が上がっていることが問題であれば、供給戸数を増やせばいいのではないかというのが経済学的な観点からの分析だと思いますが、現実問題として供給戸数はそう簡単には増やせません。

図1 首都圏マンション新規供給戸数と価格

マンション建設で重要なことは、まず立地です。しかし、首都圏においてはマンションが建つような好立地の、比較的面積がまとまった場所は、すでにほぼ開発され尽くしています。仮に出てきたとしても、外国人の訪日客が増え、宿泊施設の需要も増える中で、マンション用地とホテル用地が競合する中で土地代が上がってしまう。

さらに、人手不足による工事費の上昇、加えて、円安の影響による建設資材の高騰なども加わり、建設コストも上がっています。

デベロッパーとしては、上昇する土地代、建設費をマンション価格に転嫁せざるを得ません。その高い値段であっても、買ってくれるような顧客に訴える、よりブランド性があるプレミアな物件に注力する動きが強まっています。

そうした中で、都心部では1億円を超える物件、“億ション”が特別なものではなくなっています。2025年は、1月から11月までの累計で27.8%が1億円以上で、全体の4分の1の物件が億ションです。少なくとも23区の中では、億ションは、当たり前といった雰囲気が醸成されてきています。千代田区、中央区、港区などの都心3区では、所得水準の高い層が流入し続けており、彼らの購買力が価格を支えています。

一方でその新築の億ションについても、立地や仕様において、かつての億ションに比べると若干見劣りする物件も出始めている中で、少し契約率が下がってきています。億ションの中でも、若干選別が進んできているという印象は受けます。

「億ション」が中古市場へ波及
良質かつ好立地の物件が人気

―― 新築マンションが高嶺の花となる中、中古マンションに目を向ける層が増えています。

中古価格も新築に並行して上昇しており、東京23区では中古でも1億円を超えるケースが珍しくありません。築年数の浅い分譲マンションの中古物件の中には、非常に質の良く、かつ好立地の物件もあり、そこに価値を見いだす人も増えています。そうした背景があり、新築マンション価格の上昇とほぼパラレルな形で中古マンションの値段も上がってきています。

東京23区の中で他の県・東京市部に隣接していない11区と、それを除いた首都圏に分けて、中古マンションの70㎡換算価格の推移をみると、前者は、なおも上昇を続け億ションの水準に達していますが、後者は、緩やかに4000万円台へと上昇していますが、既に頭打ち感が出てきています。

高騰を続けているのは都心の一部であり、全体としては落ち着いてきています。また、地域によっては、値ごろ感がある所も存在しているようです。

図2 平成25年から令和7年にかけての人口増加率(年率換算)
図3 一人当たり課税対象所得の推移

また、2025年上期の、首都圏の中古マンション70㎡換算価格と、1人当たり課税対象所得の相関関係を可視化したところ、当然ですが、完全に綺麗な曲線を描いて、マンション価格の高いところには、所得の高い人が住んでいることがわかりました。落ち着くところに落ち着いているということが現実としてはあるわけです。

ただし、都心部と、それを除いた首都圏で中古マンションの、何千万円という大きな価格差を正当化できるのか。確かに都心は利便性が高く、非常に収入の高い方であれば、通勤時間を考えたときに、タイパという観点でみるとコストをかけてでも時間を節約して共働きの状態を維持することがその家計にとって良い結果を生むということもあり得ますが、都心に住むということに対して今一度、見直す局面に来ているかもしれません。

一方で、日本では、そもそも新築偏重で中古住宅市場の活性化が長らく課題とされてきましたが、遅ればせながらようやく中古住宅の価格が上昇に転じて欧米のように住宅が資産として積み上がってきたことは評価すべき事象とも言えるかもしれません。

新築価格の上昇を悲観するばかりでなく、中古住宅市場が活性化しているという目で捉えて、社会がより成熟した方向に向かっているのだと前向きに評価する、といった論調が広まってくるといいと思っています。

もちろん今家を持っていない方々にとって住宅が買いにくくなっていることは事実ですが、そこは住宅ローン減税の拡充や、あるいはフラット35の限度額の引き上げなど、様々な政策対応が取られています。

一部先鋭的に都心部の物件価格が上がったという事実をもって、これがバブルだからと急激に抑え込むような政策をやってしまい、マーケット全体でようやくその資産価格が上がり始めている時にそれを冷やして、バブル崩壊後に長く続いた「失われた30年間」といったものが発生する局面が繰り返されないように、注視していく必要があります。

図2のとおり、都市部のマンション価格高騰の背景には、やはり日本人の人口が増えていることが原動力になっています。また、図3のとおり、都心の千代田、中央、港区は、もともと所得水準が高いのですが、非常に所得の伸びが大きい。「億ションのような高い物件を買える日本人がどれだけいるのだ」という話がよくありますが、実は日本人にもお金を稼いでいる方はたくさんいて、そうした方々が買っているわけです。

憶測で外国人が投機目的で新築マンションを買っているのが主要因ということが言われていますが、それも一定にあるにしても、仮に今後、外国人にターゲットを絞り規制を強化しても、日本人の実需はあり、かつ所得が伸びているという現実の中で、さほど大きな影響はないと見ています。

さらに言えば、資産価値という観点では、現在のマンション価格は株価の動きとも連動しており、その株価も30年前のバブル期と比較しても株価収益率は遥かに低く、世界標準の適正価格に収斂しつつあるという見方もできます。

金利1%上昇で借入額は15%減る
デフレの常識が通用しないリスクも

―― 金利上昇局面を迎え、住宅ローンの選び方にも変化の兆しが見られます。


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