2026.1.6

積水ハウス・遠州鉄道、東海地方で初のSI事業提携  法人向け共同建築事業の開始を決定

地域素材を取り入れたモデルハウス完成

 

積水ハウスが自社の構造体をオープン化し、共同建築する「SI(エスアイ)事業」で、新たに遠州鉄道(静岡県浜松市、丸山晃司取締役社長)と提携を結んだ。
東海エリア初のパートナーとなる遠州鉄道は地域密着の強みを活かしSI事業のみで年間30棟受注を目指す。
同時に大賀建設(埼玉県さいたま市、須賀亮代表取締役社長)とも提携し、パートナー企業は計10社となった。

積水ハウスが2023年から展開する「SI事業」は、同社が培ってきた技術を住宅業界に広くオープン化し、国内における良質な木造住宅ストック形成に貢献することを目的とした、業界初の共同建築事業である。一般的なフランチャイズチェーン(FC)契約とは異なり、積水ハウスグループが施工プロセスの一部を直接担う点に特徴がある。

同事業において、積水ハウスは「S(スケルトン)」部分を担当する。住宅の耐震性能の根幹となる基礎、構造躯体、および接合部の設計と施工を担い、積水ハウスグループの施工会社である積水ハウス建設が施工を提供する。さらに、ソフト面でのサポートとして「SI-COLLABORATION」という商標提供や、全棟における許容応力度計算による構造計算も担う。一方、提携するパートナー企業は「I(インフィル)」部分を担当する。外装、内装、設備機器の選定や施工、土地の仕入れや販売活動、顧客対応を担う。パートナー企業は自社の強みである地域特性に合わせたデザインや提案、自由なプランニングを維持しながら、耐震性というハード面での付加価値を高めることができる。

パートナー提携発表会に出席した左から遠州鉄道 住宅事業部長渡邊一弘氏、遠州鉄道 取締役 不動産事業本部長 鈴木憲之氏、積水ハウス 常務執行役員 経営戦略担当 廣田耕平氏、積水ハウス 経営戦略本部 戸建事業戦略部長 板倉浩二氏

独自技術DJ工法で耐震3以上の安全性

技術の上で大きな特徴となるのが、積水ハウスの独自技術「ダイレクトジョイント(DJ)工法」だ。従来の木造軸組工法では、基礎の上に土台となる木材を敷き、その上に柱を建てるのが一般的だが、地震発生時には、この土台が基礎から引き抜かれたりすることで倒壊のリスクが生じることが近年の研究で明らかになっている。DJ工法は、この土台を廃し、専用の金物を用いて基礎と柱を直接緊結する技術である。この工法の導入により、耐力壁の強度は一般的な在来工法の約2倍にあたる7・3倍となる。この強い耐力壁により、安全性だけでなく、設計の自由度も高めることが可能となる。このDJ工法の採用により、耐震等級3以上の安全性をパートナー企業に提供する。

積水ハウスにとって、SI事業は自社の独自技術を普及させるための重要な戦略である。現在500万戸超ある耐震性能不足の既存住宅を、安全な住宅へと変えるのを自社単独で実現するのは難しい。また、同社の新築戸建平均単価が5000万円を超え、幅広い層へのアプローチが難しくなりつつある。地域密着の企業と協力することで、自社単独では届かない顧客層に、安全な住まいを提供することが事業の狙いだ。同社の常務執行役員経営戦略担当 廣田耕平氏は「パートナー企業と一緒にDJ構法を装備し、高い耐震性能を有した木造住宅を早期に数多く供給していきたい」と説明する。

静岡県浜松市内に完成した「SI-COLLABORATION」のモデルハウス外観
「SI-COLLABORATION」モデルハウスのリビングルーム。DJ工法により
柱のない大空間と大開口を実現した

大手の技術と地元の安心感
併せ持つ住まいにニーズ

SI事業の新たなパートナーとなった2社のうち、東海エリア初の提携となった遠州鉄道は1943年の創業以来、静岡県西部地域を基盤に、鉄道・バスの運行を基幹として「遠鉄グループ」として多角的に事業を展開する企業である。住宅事業は「遠鉄ホーム」のブランド名で展開し、約30年にわたり5500棟を超える住宅を供給してきた。現在は、注文住宅と分譲住宅を合わせて年間約200棟を供給している。

遠州鉄道にとって、今回の提携の目的は「お客様の選択肢を広げ、地域の耐震性の向上に寄与することにある」と同社の取締役 鈴木憲之不動産事業本部長は説明する。「住宅ニーズが多様化するなかで、大手メーカーの技術力と地元企業の地域密着の安心感を併せ持つ住まいを求める声が増えている」。同社はこれまで木造軸組工法の住宅を主力商品とし、坪単価60万円程度の商品を展開してきたが、今回のSI事業による商品を、耐震性能や設備仕様をグレードアップした最上位ブランドとして位置づけ、坪単価80万円程度での販売を予定する。従来の顧客に加え、高付加価値の住宅を求める層へ訴求していく。また、静岡県は南海トラフ地震の想定震源域であることから、高いレベルの耐震が住まいに求められている。積水ハウスが持つ技術力で、地域住民の「安全・安心」への強いニーズに応える狙いだ。

遠州鉄道は、提携と同時にSI事業で建築したモデルハウスも公開した。26年1月中旬から一般公開し、本格的な販売を開始する。浜松市内中央区に建てられたモデルハウスは、土地面積183、97㎡(55、65坪)、延床面積117、58㎡の2階建て。リビングは幅4、5mで約21帖。「DJ工法」により、柱や耐力壁を減らすことで、大空間と大開口を実現した。すっきりした空間にアクセントを付けるため、天井の窓側には折下天井を設け、静岡県産の高級杉材「天竜材」を採用した。遠鉄ホーム設計課の大瀬浩太課長代理は、「最近はリビングの柱を極力減らしたいという要望が多い。このSIコラボレーションによる柱のない大空間は大きなPRポイントになる」と話す。

事業開始初年度の26年度はSI事業での15棟受注を目標に掲げ、29年度には年間30棟の受注を目指す。