New   2025.12.25

福井コンピュータアーキテクト、3D建築CAD最新版を発売 ハウスプラス住宅保証と協業、住宅審査対応を強化

 

福井コンピュータアーキテクトは、3D建築CADシステム「ARCHITREND ZERO Ver.12」を2025年10月に発売した。建設業界における生産性向上や働き方改革への対応として、確認申請業務を支援する機能などを多数搭載している。

ARCHITREND ZEROは、主に木造住宅の設計、確認申請業務、構造計算などに使用されるCADソフト。有料CADソフトの中では全国で半数以上のシェアを占め、約1万4000社が継続して利用している。無料CADソフトとしてはJWCADなどもあるが、専用CADの強みとして、メーカー製品の建具やキッチンなどの情報をそのままCADに落とし込める点があり、断熱材・サッシの熱貫流率などの情報も含まれており、省エネ計算や法規チェックがボタン一つで行える利便性がある。

最新版の開発にあたり、特に注力したのは、確認審査の省力化に向け、申請業務の質を高める出力支援機能の強化だ。2025年4月の改正建築基準法施行により、4号特例縮小がスタートし、2階建て木造戸建てなどの建築確認手続きが見直された。2階建て以上、または延床面積200㎡超の木造平屋建てなどが該当する「新2号建築物」は、確認申請の際に構造関係規定等の図書の提出が必要となった。これに伴い、建築確認申請図書の作成における負担が増大している。

確認検査業務を行うハウスプラス住宅保証のオペレーション統括本部 審査部の江夏慎一氏は「申請側も審査側も十分に慣れていない状況で、図書の不整合などが多発し、審査時間が大幅に延びている。従来30分程度で済んでいた審査が1時間から1時間半かかるようになり、その積み重ねで全体の業務が滞っている。特に構造図との整合性確認や省エネ関連の新しいチェック項目が増えたことが時間増加の要因として挙げられる」と話す。

こうした現状を踏まえ、福井コンピュータアーキテクトは、「ARCHITREND ZERO Ver.12」の開発にあたり、ハウスプラス住宅保証の協力のもと、審査プロセスの省力化に取り組んだ。審査機関へのヒアリングを通じて時間を要する項目を抽出し、申請側が負担なく必要な情報を出力できる仕組みを構築した。
具体的には、木造壁量計算の一括出力機能を拡張し、平面図と壁量計算結果の整合性チェックを自動化。すべてのチェックを通過するとスタンプが自動押印され、申請前の確認作業を軽減する。

例えば、平面図と壁量計算の整合性が確保された状態から、平面図に柱を一本追加すると、システムが自動的に整合性の問題を検出し警告を表示。また、修正後に再計算を行い、計算が正常に完了すると「出力確認済み」のマークが表示され、審査機関側も正しくチェックされた出力であることが分かるようになっている。

また、採光・換気・排煙計算の一覧表機能も拡充し、審査機関の要望に沿った仕様表作成機能も新たに追加した。こうした出力支援機能強化により、申請図作成業務の約10%効率化と、1棟あたり30分から1時間程度の審査時間削減を目指している。

誘導基準への対応強化

さらに、昨年発売したオプションの「省エネ仕様基準」への対応機能を大幅強化し、今回のバージョンアップでは、2030年を見据え誘導基準(ZEH水準)に対応できるようにした。性能評価や長期優良住宅、低炭素住宅などの申請手続きをよりスムーズにする。仕様基準の「省エネ設備」を一括自動配置する機能も新たに追加し、データ入力の省力化も図った。

さらに、リノベーションにおける省エネ基準適合確認申請にも新たに対応できるようにした。RC造の断熱リノベーション時に活用できる付加断熱と充填断熱の色分け表示や、申請領域に合わせた自動作図機能を追加し、増改築における設備や開口部一覧、面積表の作成もサポートする。

福井コンピュータアーキテクト開発部 住宅商品開発室の城地優一室長は「部分的なリノベーションでも省エネ基準を満たすための計算や、大規模リフォームの確認申請に必要な図面作成をサポートする機能を実装した。これらの機能は、リフォーム市場の拡大に対応するものであり、ユーザーからも待望されていた」と話す。

BIM図面審査へも対応

2026年4月に開始予定のBIM図面審査を見据えた機能強化も図った。2026年からBIMデータが審査の参考資料として使用可能になり、2029年からはIFC(※Industry Foundation Classesの略。BIMデータをソフトウェア間で共有するための国際標準フォーマット)データを用いた本格的な審査が始まる予定だ。

今回のバージョンアップでは、自社開発のBIMソフト「GLOOBE」で培った技術とノウハウを活かし、立体モデルをIFC形式で出力する機能を標準搭載した。従来のPDF図面に加え、審査機関とCDE(共通データ環境)を介した情報共有が可能となり、図面だけでは伝わらない立体的な詳細情報も補完できるようになる。

「BIMの導入により図面間の整合性確認が省略できるようになるメリットがあるが、日本独自の耐震基準や省エネ基準をIFCデータにどう組み込むかという課題もある」(城地室長)と説明する。

基本構成「ZERO基本」の価格は90万円(税別)、オプション「省エネ仕様基準」は20万円(税別)。IT導入補助金の活用も可能だ。