New   2025.12.19

40年度までに再エネ比率を4~5割に引き上げ エネルギーを賢く使う時代に

 

国は第7次エネルギー基本計画のもと、太陽光発電や蓄電池の導入を促進するとともに、電力需給調整に資するデマンドレスポンスや高度エネルギーマネジメントの普及を進める。自治体による設置義務化や補助制度も追い風となり、住宅業界では創蓄連携およびエネルギー制御を前提とした住宅仕様の標準化が視野に入ってきた。

政府は、2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画で、2040年度までに電源構成に占める再エネの比率を4~5割にする目標を示した。23年度の実績は22.9%で、2倍近い引き上げとなる。

エネルギー基本計画とは、国内のエネルギー需給に関する政府の中長期的な方針を示したもので、およそ3年ごとに見直している。前回の第6次計画を策定した21年以降、ロシアのウクライナ侵攻や中東の紛争の影響を受け、世界のエネルギー情勢は大きく変化。加えて、国内ではDX・GX政策の進展に伴う電力需要の増加が見込まれている。こうした変化を踏まえ、政府はエネルギー安定供給と脱炭素を両立する観点から、再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入していくことを決めた。

制度改正と新技術が進める太陽光発電の普及

再エネ比率引き上げにおいて大きな役割を期待されているのが太陽光発電だ。第7次エネルギー基本計画では、引き上げ後の再エネ電源のうち、23~29%を太陽光発電が担うものとしている。

ただ、太陽光発電には、①初期費用が高い、②設置場所が限られている―といった課題があり、住宅を中心に足元の普及率が伸び悩んでいる。そこで、①については、経済産業省がFIT制度を改正し、住宅用の太陽光発電電力の買取価格を当初4年間、25年度の1.6倍にする案を通し、新築住宅については10月から新FIT制度を開始。初期投資費用の回収にかかる期間を短縮できるようにすることで、設置率の向上につなげる。②については、折り曲げて建物壁面などに設置できる次世代電池のペロブスカイト太陽電池の普及を図る。国は、次世代電池の普及目標として40年を目途に20GWの導入を目指す目標を掲げている。こうした目標に向けて、環境省では「窓、壁等と一体となった太陽光発電の導入加速化支援事業」、「ペロブスカイト太陽電池の社会実装モデルの創出に向けた導入支援事業」など次世代太陽電池の開発を後押しする支援事業を行った。

ジョイフルホーム(北海道旭川市)は屋根面と壁面に太陽光パネルを設置したモデルハウスを公開

こうした後押しもあり、2025年は次世代太陽電池の実装が現実味を帯びた一年でもあった。積水化学工業は積水ソーラーフィルムを立ち上げ、量産化へ向け27年度に100MWの生産ラインを稼働予定だ。また、YKK APは24年から各所で建材一体型太陽光発電(BIPV)実証実験を行っており、26年度中に実装したい考えだ。

創蓄連携とDRが住宅の電力利用を転換

創エネをめぐる2025年の動き

一方で、4月からは東京都と川崎市で、一定以上の供給を行っている事業者に対して新築住宅等への太陽光発電設備の設置などを義務付ける制度がスタートした。とりわけ東京都の義務化はインパクトが大きく、都内で事業を行う住宅事業者には、4月を待たず太陽光発電の設置を標準化する動きが進んだ。

特に、太陽光発電とセットで蓄電池をつけた創蓄連携の住宅が拡大した。東京都や千葉県などの自治体による補助金は、住民のレジリエンス強化や、再エネ活用の最大化、電力需要のピークカットなどを理由にして蓄電池の設置を推進するものが増えている。また、新FIT制度は、当初4年間の売電価格引き上げ以降、5年目からは買取価格を大幅に引き下げ、自家消費を促すもので、売電から自家消費へのシフトが推し進められている。

一方、再エネの拡大は需要が少ない時に供給が過剰になる可能性がある懸念から、国は電力の使用者側で需給バランスを調整するデマンドレスポンス(DR)を進める。令和7年度補正予算で示された新たな3省連携補助事業「みらいエコ住宅2026事業」では、対象となる3つの住宅(「GX志向型住宅」、「長期優良住宅」、「ZEH水準住宅」)すべてにおいて、DRに活用可能な家庭用蓄電池システムを導入すると補助率3/10を受けることができる。


この記事はプレミアム会員限定記事です

プレミアム会員になると続きをお読みいただけます。
料金・詳細はこちら

新規会員登録

無料会員登録後にプレミアム会員へのアップグレードが可能になります

アカウントをお持ちの方

ご登録いただいた文字列と異なったパスワードが連続で入力された場合、一定時間ログインやご登録の操作ができなくなります。時間をおいて再度お試しください。