New   2025.11.25

ミサワホーム 「ウエルネス事業」に名称変更、事業領域を拡大

東大・大月教授と協業開始、リフォーム提案を強化

 

ミサワホームは2024年度に「介護事業」を「ウエルネス事業」に名称変更し事業領域の拡大を推進中だ。2025年7月には東京大学の大月教授との協業を開始。高齢者向け住宅ソリューションの開発を進めている。

ミサワホームのウエルネス事業は1982年に伊豆高原での早期リタイアメントヴィレッジ「プライムコミュニティ伊東」から始まり、40年近い歴史がある。2022年度に事業本部制を採用し、5つの事業領域(新築事業、ストック事業、まちづくり事業、海外事業、ウエルネス事業)を明確化した。2024年度には「介護事業」から「ウエルネス事業」へと名称を変更し、事業領域の拡大を図っている。

ミサワホームグループの介護会社としては、マザアズとセントスタッフの2社があり、全国51拠点、定員2779人の施設を運営。福祉施設・高齢者住宅定員数ランキングでは全国46位の規模だ。特に千葉県の流山・柏エリアでは、自立から看取りまでの様々な施設を運営し、地域包括ケアシステムを実現している。過去10年間で医療系施設を806棟受注、2012年~2022年の受注高(医療・介護・高齢者住宅・障碍者施設累計)は966億円となっている。

常務執行役員 ウエルネス事業本部長の在川秀一氏は、「『介護』という言葉が終末期をイメージさせるため、より幅広い提案ができるよう『ウエルネス』に変更した。メディアアーティスト/研究者の落合陽一氏が代表を務めるピクシーダストテクノロジーズなどと新たな企業との連携が進んでいる。また、将来的には自立者向けのマンション賃貸事業なども検討している」と述べた。

クリエイティブアドバイザーの吉田肇氏は、30年以上の介護事業経験から「自宅で暮らす限界点」「早めの備え」の重要性を強調する。アンケート調査によると、多くの高齢者が自宅での介護を希望しているが、実際には70%が病院で亡くなっており、理想と現実にギャップがあるという。

「高齢者に適した新耐震・バリアフリー・断熱に備えた住宅ストックを用意する必要があるが、現状ではそのような住宅は2割弱しかない」と介護を取り巻く環境について説明する在川常務

ミサワホームでは、この課題に対応するためストック事業本部と連携した教育研修「ミサワウエルネスPLAN」(WEB研修・3時間)を開発しリフォームエンジニア全員(約1300人)に研修を実施。「人生100年時代」を切り口としたリフォーム提案を強化している。また、介護現場での体験型研修も行い、実践的な知識を身につけた人材を育成。現在、研修を受けた人材による商談が、上期だけで22件、4件が契約に至っている。

「50代・60代の時点で早めに備えることで、自宅での生活期間を5〜10年延ばせる可能性がある。選択肢としては『住み続ける』か『住み替える』かの二択であり、それぞれに適した対策が必要」と話すクリエイティブアドバイザーの吉田肇氏

さらに、東京大学大学院工学研究科建築学科専攻の大月敏雄教授と協業を開始した。大月教授は2025年7月からミサワホーム総合研究所の技術アドバイザーに就任。高齢者向け住宅ソリューションの開発を進めている。 住み替えか住み続けるかを判断するための簡単な診断ツールも開発中だ。

吉田氏は全国でセミナーを開催し、「親子で考える」をキーワードに、50代・60代からの早めの備えの重要性を伝えているが、特にコロナ禍以降、親の介護への関心が高まっているという。また、佐賀県では既存の展示場をリフォーム専用展示場に変更し、ウエルネスプランの具体的な提案を行っている。