New   2025.8.27

最終的なゴールは移住・定住【”二地域居住”で地方創生はできるのか?:長野県佐久市】

関係人口増、二地域居住、試住を通じて定住人口増を目指す

 

長野県で移住先として知名度が高い佐久市。知る、来る、住むという段階的アプローチで、最終的なゴールを移住・定住と位置付けている。試住の取り組みにも力を入れており、実際の移住へとつながっている。

佐久市は、現在取り組みを進める「佐久市デジタル田園都市国家構想総合戦略」(24~26年度)において、社会動態増加数1350人、交流人口・関係人口125万人(市内観光地利用者数)、移住者1200人(22年度364人)という目標を掲げ取り組みを進める。「移住促進に軸足を置き、ゴールは定住人口増」(企画部 移住交流推進課 渡邉正人課長補佐)とスタンスは明確だ。

地域活性化における重要なキーワードの一つである「人」。少子高齢化、東京一極集中が進むなか、人口の社会増の手段として移住・定住の取り組みが進められる一方で、地域活性化の担い手として関係人口増加に力を入れていこうという動きも広がっている。

自治体によって考え方や取り組み方は異なるが、佐久市は移住・定住に重きを置いてきた。前戦略の「佐久市まち・ひと・しごと総合戦略」の時から、「知る」ことから「来る」ことへ、「来る」ことから「住む」ことへと繋げる段階的アプローチを意識した施策を展開、このサイクルを回すことで最終的に移住・定住につなげてきた。

佐久市では後述するクラインガルテンなど二地域居住につながる事業を展開しており、「交流人口は経済的効果が期待でき、それが関係人口へ、そして二地域居住へと進む可能性がある。また、関係人口の方々が佐久市に関して発信することで、佐久市に興味を持ってもらえる機会が増える」(渡邉課長補佐)と、その効果を評価しつつも、人口増加を最重要テーマに置き、最終ゴールを移住・定住に据えているのである。

〝暮らしやすさ〟をブラッシュアップ
移住を定住に結びつける

首都圏から近く、生活利便性と自然の豊かさをあわせ持つ佐久市

近年の佐久市人口の社会増減の推移をみると、20年が225人増、21年が306人増、22年が423人増、23年が286人増、24年が503人増とコンスタントに増加を続けている。この人数の中には進学や就職などの理由により転居した数も含まれるが、着実に移住・定住も進んでいる。

佐久市は、近隣の軽井沢町や小諸市のような有名な観光スポットがあるわけではないが、移住希望者の知名度は高く、「ふるさと回帰フェア」などで移住相談会を開催するとブースには多くの人が集まる。佐久市は、新幹線で約70分と首都圏からのアクセスが良いことが大きな特徴。加えて、中心部は日常的な生活の利便性が高く、少し離れるだけで農地や里山などが広がる自然に恵まれた環境を持つ。この〝ちょうど良さ〟が移住者にとっての大きな魅力のようだ。

加えて、佐久市の移住・定住に向けたさまざまな施策の積み重ねが実績に結び付いている。25年度、移住・定住に向けた支援策は、「佐久市移住検討者滞在費用補助金」、「佐久市UIJターン就業・創業移住支援事業補助金」、「佐久市リモートワーカー等新幹線通勤補助金」の3つ。「移住検討者滞在~」は移住検討者、「UIJターン~」と「リモートワーカー~」は、移住者を対象とする支援制度である。支援制度が薄いようにも見えるが、これは「この補助があるから移住するという狙いではなく、移住を検討している人に対する〝最後の一押し〟が目的。補助は一時のものであり、暮らしやすさがなければ定住に結びつかない」(渡邉課長補佐)と、貴重な財源を暮らしやすさへのブラッシュアップに注ぐ。実際、補助金活用者へのアンケートでも「この補助金がなくても佐久市に移住した」との回答が8~9割を占めており、補助はインパクトはあるものの理由にはなっていないという。

試住補助活用の4割が移住へ
滞在型農園も人気


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