New   2025.7.29

省エネ化だけでは足りない! GXで幕を開けたエネマネ住宅の時代

再エネの自家消費、エネルギーリソースの制御が必須に

 

GX志向型住宅やGX ZEHで、高い断熱性や一次エネ消費量削減に加え、HEMSの設置が必須要件とされた。それは何を意味するか―。
再エネ導入と自家消費率の増大、蓄電池や高効率給湯器といったエネルギーリソースの制御、そして電力需給の最適化へ、住宅の姿は大きく変わっていきそうだ。

GX志向型住宅の補助
HEMS必須で激震

「子育てグリーン住宅支援事業」で展開されているGX志向型住宅への補助が好調だ。交付申請は3期に分かれており、第1、2期はすでに受付を終了、7月1日から12月末日までの予定で第3期の受付が行われており、すでに予算(1~3期の合計で上限額500億円)の58%に達している(7月15日時点)。

GX志向型住宅は、断熱等性能等級6、一次エネルギー消費量削減率△35%(再エネ除く)と、ZEHを大きく上回る要求性能が示されて大きな注目を集めたが、補助申請受付開始前に要件として「高度エネルギーマネジメントの導入」が追加された。具体的には、「ECHONET Lite AIF仕様」に対応する「コントローラー」として、(一社)エコーネットコンソーシアムのホームページに掲載されている製品を設置すること、というものである。

24年の補助事業において、環境省の「ZEH+」(ZEH以上の省エネ、設備の効率的な運用などにより再エネの自家消費率拡大他を目指した戸建て住宅)の補助金の要件として、「外皮性能の更なる強化、高度エネルギーマネジメント(HEMS)、電気自動車への充電という3要素のうち2要素以上を採用」という選択要件であったものが、GX志向型住宅ではついに必須要件となったのである。

この「必須要件化」を強い追い風に、コントローラーのメーカー各社は販売数を急激に伸ばしている。パナソニック エレクトリックワークス社の「AiSEG2」は、販売量こそ未公表だが、近年、前年比10%程度の伸びを続けてきた。今年3月に新商品「AiSEG3」を発売したことに加え、GX志向型住宅の補助金をきっかけに問い合わせが増加、販売も好調に推移している。「AiSEG3」の初年度の販売目標は25年度4万台であるが、GX志向型住宅の補助金が年内いっぱい続く予定であることを踏まえ、「固く見積もってもプラス5000台は増えるのでは」(電設資材商品部 住宅システム企画課 谷口祐二係長)と上振れしそうだ。

NatureのGX志向型住宅の補助対象製品である「Nature Remo E2」(旧「Nature Remo E」)の販売台数も「10倍以上」(塩出社長)と急激な伸びだ。スマートホームコントローラー「muiボード」を販売するmui LabでもGX補助金に関連して資料請求や問い合わせ、商談が増加、「GX志向型住宅の補助金が間違いなく大きなインパクトになっている」(事業開発部 金谷翔真氏)と、SNSでの広告など工務店や一般エンドユーザーに向けてGX志向型住宅の補助金のアピールを続けている。「目に見えるメリットがなければなかなか導入に結び付かない。補助の必須要件であることに加え、省エネを行うことのメリットをきちんと見せることができたことが問い合わせに結び付いた」(金谷氏)と話す。

HEMSの必須要件化が与えるインパクトは、単にHEMS市場の活性化にとどまらない。Natureの塩出社長は「太陽光発電の自家消費率を上げるためには機器単体ではなく家全体でエネルギーをマネージ(制御)しなければならず、ゲートウェイのデバイスをそれぞれの機器とつなげて統合制御することが理想。さらにそのゲートウェイをオンライン化して将来的には調整力として活用することを狙って『Nature Remo E』を開発してきた。国がHEMS機器をGX志向型住宅の補助を受けるための選択肢の一つではなく必須要件としたことは非常に大きなインパクト」と、GX志向型住宅で高度エネルギーマネジメントが要件化されたことの意味を語る。つまり、住宅全体のエネルギーマネジメントが必須の時代となる、HEMS搭載が前提のGX志向型住宅は、そんな時代の住宅の姿を示したものだといえる。

ECHONET Lite機器出荷状況 〈コントローラー〉

今回、GX志向型住宅の補助金におけるコントローラーに求められたのはECHONET Lite規格であること。そのECHONET Liteは、現在、国内でほぼスタンダードな規格となっている。その規格搭載率はヒートポンプ給湯器がほぼすべて、エアコンが74%、蓄電池は50%超えであるが認証を受けていないだけでほぼすべてが規格に対応と、家庭のエネルギーにかかわる機器はほぼ同規格に対応している。住宅一棟のエネルギーマネジメントを行って再生可能エネルギーの自家消費率を高める、さらにはデマンドレスポンス(DR)までを考えた時、ECHONET Liteを介して制御するという素地は十分にできている。

(一社)エコーネットコンソーシアムのデータによると、「コントローラー」の出荷は18年度から急上昇、21~22年度と12万6000~7000台となり、23年度にいったん落ち込んだものの、24年度は9万6620台に反転した。18年度からの増加はZEH補助金の選択要件に入ったことがきっかけとみられる。今、GX志向型住宅の補助実施を受け、コンソーシアムへの問い合わせが急激に増えており、「18年度のような、もう一段の急拡大に期待」(長沢雅人普及委員長)と、大きなムーブメントにつながりそうだ。

エネルギー制御の時代に商品開発も活発化

GX志向型住宅の補助要件とされたことも加わり、コントローラーのメーカー各社は活発な動きを続ける。


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