New   2025.7.4

大和ハウス工業、錦糸町に同社最高額6億円の5階建てモデルハウス

土地の有効活用、増加する外国人客への訴求も

 

大和ハウス工業が、同社モデルハウスでは最高価格となる約6億円の重量鉄骨造5階建てを総合住宅展示場「錦糸町住宅公園」(東京都墨田区)内にオープンした。都内で増加する海外顧客や土地の高度利用のニーズに応える。

大和ハウス工業が、「大和ハウスskye(スカイエ)錦糸町展示場」をオープンした。元々2階建てのモデルハウスだったが、5階建てまで対応可能な重量鉄骨造の戸建住宅商品「skye」をベースに、多様なニーズを盛り込んだ5階建てモデルハウスに建て替えた。

「大和ハウスskye(スカイエ)錦糸町展示場」の外観。1階には大判のタイル外壁を採用し、高級感を演出

土地活用を想定した総延床面積597・98㎡、5階建ての建物に、二世帯住宅、店舗、インバウンド向けのゲストルームを設けた。1階は賃貸収益を得られる店舗の他、2台分駐車可能なビルトインガレージを想定し、大空間・大開口を実現。2階は、二世帯住宅親世帯の住居スペースとし、リビングに坪庭を設置するなど、落ち着いた和モダンな空間とした。将来的に賃貸とすることも想定した。室内階段でつながる3、4階は二世帯住宅の子世帯住居スペースで、2m72㎝の天井高と吹き抜けを組み合わせた開放的なLDK(42帖)を設けた。4階にはサウナを備えたバスルームにバルコニーをつなげ、シアタールームを想定した防音室「奏でる家」も採用した。5階はゲストルームとし、インバウンドの民泊対応もできるよう、1階から直接アクセスできる階段を設置している。高級旅館やホテルをイメージし、ベッドを複数台おける広々としたスペースのほか、バルコニーには枯山水を取り入れた本格的な和風庭園を創出した。

新たに5階建てモデルハウスを開発した背景には、東京都内での住宅取得環境の変化があるという。東京本店住宅事業部岡田陽(あきら)事業部長は「都心でのマンション価格は高騰しており、特に都心6区(千代田、中央、港、文京、渋谷、新宿)は中古の坪単価が1000万から2000万円と非常に高くなっており、一般の方が非常に手を出しにくい。このような状況下で、マンションと比べて割安感のある戸建住宅への注目が高まっており、特に国内および海外富裕層からの需要が高まっている。その中で、限られた土地を最大限に活用して店舗や賃貸住宅などを併設して収益を図りたいという需要や、二世帯住宅ニーズが高まっている。さらにコロナ禍以降のインバウンドの回復もあり、民泊ニーズや海外のお客様の不動産購入が増加している。ゲストハウスの要望も多い。今回のモデルハウスは、こうしたニーズに応える間取りとした」と説明する。

3階の子世帯住居のリビング。吹き抜け部分は5m60㎝の高さがある 

このモデルハウスの大きな特徴が、オーナーの居住スペースを増やし、さらに富裕層に好まれるラグジュアリーなインテリアにこだわった点だ。これまで都内にあった多層階のモデルはいずれも賃貸併用を特徴としたものだった。この物件も将来的な賃貸併用を視野に入れているものの、富裕層への訴求力を高めるために居住空間を広々とした間取りとし、ホテルや旅館をイメージしたラグジュアリーな空間に仕上げた。岡田住宅事業部長は「これまで富裕層の方に向けた提案の場所がなかった。この物件は1世帯、2世帯、海外の方にもお見せできる」と話す。

4階の子世帯住居のバスルーム。請負で人気のサウナを採用し、入浴後は隣接するバルコニーでくつろぐことができる 
5階のゲストルーム。高級ホテルの室内をイメージし、人気のある暖炉スペースを設けた

平均単価は2億円超

5階のバルコニーにある和風庭園。手前は三重県産の石を使用した枯山水。右側は山の風景を表現するなど本格的な庭をつくりあげた

新築住宅市場が厳しい中でも、都心の富裕層向け住宅需要は堅調だ。同社も国内外の富裕層をターゲットとして、特に都心6区や城南エリアでの請負事業や分譲事業を強化し、受注を増やしている。請負事業では、都内での多層階住宅「skye」が好調に推移しており、24年度の受注は40棟で、平均単価は2億1000万円だった。24年度の上半期から下半期にかけて受注が約20%増加しており、需要が徐々に高まっている状況だ。特に海外富裕層からの10億円超の受注も増加傾向にあるという。

不動産分譲事業では、24年度に都心6区、城南エリアを中心に高額分譲物件を強化したところ、売上が前年比50%近く増加した。ここでも海外富裕層の顧客が増加し、売上の半数近くを占めるまで至っているという。請負、分譲ともに海外顧客は「中国の方が圧倒的に多い。その他は様々な国からこられるが、最近はタイ、フィリピン、台湾の方が増えている」(岡田住宅事業部長)。こうした国内外の富裕層ニーズを確実に捉えるため、新たなモデルハウスを活用していく考えだ。

「大和ハウスskye錦糸町展示場」への年間1000組の来場を目指し、都内での「skye」受注を昨年の40棟から60棟へ伸ばす計画だ。