特集で振り返る住宅産業
ビジネスチャンスの糸口はどこに?
ハウジング・トリビューンは、今号で700号の節目を迎えた。1986年の創刊以来、一貫して住宅産業の動きを追い続けてきた。
2024年4月には、創樹社の創業40周年を記念して、「ハウジング・トリビューンで読む40年」と題し、3回連続のシリーズ企画として1980年代、1990年代、2000年代と40年を振り返った。
特に直近の過去5年、2020年代以降は、人口減少・ストックの流れが本格化し、住宅業界を取り巻く市場環境は大きく変化している。戦後から経済成長期にかけて圧倒的な住宅不足を解消するための住宅生産改革ではなく、職人不足に対応した生産性改革が求められている。住宅ストックを循環利用するための新しい仕組みづくりも重要だ。また、ウェルビーイングの追求ということが言われ、成熟化する消費者ニーズにどうきめ細かく対応していくことができるか。加えて、脱炭素の流れの中で住宅高性能化のニーズはより高まっていく。地震、水害が多発する中で、災害に備えた住宅開発が期待されている。デフレからインフレの時代への転換期に入り、住宅も価格上昇が続く。
今住宅業界が直面している大きな課題は何か。ビジネスチャンスにつなげていく糸口はあるのか。700号の節目のタイミングで、ハウジング・トリビューンの600号以降の100号分の特集を繰り、過去を振り返り次の10年、20年につなげたい。
コロナで変わる住まいの姿
2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により、日本を含む世界各国で経済社会活動が大きく制限された。これまでの常識が覆され、日常生活やビジネスの在り方が変化し、「ニューノーマル」への適応が求められた。
住宅業界においても、対面接客の制限やテレワークの普及による「巣ごもり需要」の拡大が影響を及ぼした。20年9月のHT604号では、「コロナで変わる住まいの姿」と題し、感染リスクを低減し、安全な住環境を確保するための施策を特集。「非接触」「抗ウイルス」「換気」といったキーワードが浮上し、住まいづくりにも大きな変化が求められるようになった。また、在宅勤務の定着に伴い、「家時間を快適に過ごしたい」「仕事に集中できる個室がほしい」といったニーズが顕在化し、間取りやプランニングの見直しも進んだ。コロナ後も、テレワークが定着して、家で過ごす時間が長くなる人が増えている。家にいる時間が長くなれば、家の中をもっと快適で、安らかに過ごしやすい空間にしたいというニーズは高まっていく。どうやって幸せに暮らせるか、ウェルビーイングの実現のための感性に訴える提案などが重要になってきそうだ。
コロナはサプライチェーンの脆弱さも浮き彫りに
一方で、コロナは、住宅産業のサプライチェーンの脆弱さを浮き彫りにした。中国の移動制限や封鎖措置により生産工場がストップ。その影響を受け、住設機器などの輸入が滞り、住宅が引き渡しができない事態に陥った。
加えて、ウッドショックが住宅業界を襲った。コロナ禍に端を発し、国内外の木材の需給バランスが崩れ、外材が高騰し、不足するという問題が表面化した。
HT622号(21年7月)では、「ウッドショックが突きつける課題」と題し、特に問題が深刻化した工務店関係者の動きや、新たに国産材のサプライチェーン構築を目指そうとする動きなどを報じた。
NPO法人活木活木(いきいき)森林ネットワーク理事長の遠藤日雄氏は、「かつては旺盛な住宅需要があった日本は、外材の輸出先として魅力があり、世界の4大産地から外材が入ってきた。しかし、今や日本の木造住宅市場は低迷し、米国、中国が経済をけん引する中で、日本は蚊帳の外に置かれているといっても過言ではない。世界での日本の立ち位置を考え、林業・木材産業、住宅産業を立て直していく必要がある」と指摘する。
ウッドショックは落ち着き、平時に戻っているが、外部要因により次のウッドショックが起こるリスクはある。
外材と国産材のバランスを取り、平時から安定した木材を調達のサプライチェーンを構築することが求められる。
脱炭素に大きくシフト
上位等級の家づくりが加速
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