凶悪化する侵入盗に住宅はどう立ち向かうか

匿流による強盗被害の拡大など、住宅侵入盗の手口が凶悪化するなか、住宅の防犯についての関心が高まり、防犯関連建材などの販売、問い合わせが増加している。
住まいの防犯は、2000年代前半にピッキングなどによる侵入盗が相次ぎ、注目が高まった。その後CPマークの認証制度が確立するなど住宅建材の防犯性能が見直されるきっかけともなった。一方で、防犯性能を有する建材について、生活者に正しい理解が行き届いていない側面もある。各社は改めて防犯製品の提案に力を入れ、安心できる住まいづくりへの啓蒙を行う。
また、2000年代との変化としてスマートホームとの連携も活発化。各社の動きとともに今の時代の住宅防犯を探る。

凶悪化する犯罪に各所で呼びかけ
生活者の意識が高まる

警察庁「住まいる防犯110番」によると、住宅対象の侵入窃盗の認知件数は、2004年から22年まで減少していたが、23年は1万7469件で前年から11.3％増加。また、凶器などで家人を脅して金品を強奪する侵入強盗は、住宅対象は04年を最多とし、21年まで減少傾向であったが、23年は152件（前年比＋17.8％）で、2年連続で増加した。25年2月に公開された令和6年（24年）の犯罪情勢によると、24年の住居侵入は前年比で減少しているが、一方で不安視されるのが、匿流による犯罪の増加だ。

匿流とは、SNSや求人サイトを通じて緩やかに結びついたメンバーが役割分担を行い、強盗などを繰り返す「匿名・流動型犯罪グループ」のこと。実行犯が個人情報を握られ指示役から脅されているケースもあり、凶悪な手口による侵入強盗が後を絶たない。

警察庁は24年4月に匿流の犯罪手口、資金源などの活動実態を明らかにするなど、事件検挙体制を新たに整備。また、10月には犯罪実行者募集情報の応募者やその家族などを保護すると呼びかけて警察への相談を促す動画を公開し、12月末までに全国で181件の保護措置を実施した。

住まいの防犯としては、2000年代前半、ピッキングの増加に始まり住宅侵入盗が急増。官民合同会議が「防犯性の高い建物部品」に対して共通標章「CPマーク」を貼る制度を開始するなど、住宅業界でも対応が急拡大した。こうした対応により、当時に比べ、ピッキングによる侵入盗は大幅に減少した。しかし、近年凶悪な住宅侵入盗による事件が頻発していることを受け、改めて住まいの防犯を考えるきっかけとなっている。

防犯建物部品の性能試験、認定を行う5団体防犯建物部品普及促進協議会が一戸建て住宅を購入、もしくは住宅購入時に検討した人に対して行った防犯意識についてのインターネット調査では、生活者の間で危機感が高まっていることが分かる。「昨今の防犯事情に関するニュースなどを見て、新たに住まいの防犯対策を講じたか」の問いに対しては、回答者445人のうち、32.1％が既に対応したと回答、53％が今後対応しようと考えていると答えた。同協会はオリジナル動画や展示会への出展を通じて、CP部品の普及拡大に努める。

防犯製品についての具体的な支援の動きも出始めている。

東京都は、住宅の省エネ再エネ化を支援する「災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業」に、令和7年度予算において、住宅の断熱改修に対する補助に防犯機能を備えた断熱窓への上乗せを新設した。これまで、既存住宅において断熱窓改修を行う場合に戸あたり100万円、助成率1／3の補助を行ってきたが、さらに防犯性能の高い断熱窓を導入する場合に、防犯性能の付加によって増加した分の費用を補助金で賄う。東京都環境局は「匿流による事件増加などで、防犯機能を有する窓への支援制度が必要なのではないかと議論が起きた。防犯をフックにして断熱改修を推進したい」とする。

防犯の視点から開口部が再注目

生活者の防犯意識の高まりに伴って、再注目されているのが開口部商品だ。

先の「住まいる防犯110番」では、一戸建て住宅について、令和5年に発生した侵入窃盗の侵入経路の半数以上（55.2％）が窓からの侵入であることが示されている。例えば、匿流による侵入盗については、「窓ガラスを破壊して住宅に押し入るなどの手口がみられることから、窓、玄関などへの防犯性能の高い建物部品の設置や防犯カメラの設置など防犯設備の強化が考えられる」（警察庁）というように、開口部を中心とした防犯対策が重要となる。

こうしたなか、特に防犯性能の高い建材が一般的になる以前に建てた築年数の古い戸建住宅に住む高齢者を始めとして住まいの防犯性能向上ニーズが高まっており、各社に防犯に関する開口部製品への問い合わせが相次いでいる。

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