2025.2.21

(一財)住宅産業研修財団、大工志塾の制度を大幅改定 個人事業主も入塾可能に

単年度での受け入れ体制も整備

 

(一財)住宅産業研修財団は、運営する大工志塾について、2025年度の塾生募集から大幅な制度改定を行う。個人事業主も参加可能になるほか、単年度の入塾も行えるようにする。

大工志塾は、(一財)住宅産業研修財団と優良工務店の会(QBC)が共同で運営している。大工職人が働きながら、木造伝統構法に関する基本的な大工技術・技能を習得できるもので、25年度で8期目に突入する。

規矩術と呼ばれる木造大工の加工技術を学ぶ場を提供しており、プレカット材の普及によって技能継承が難しくなっている、墨付け、刻みという大工技術・技能を習得するための育成プログラムを提供している。

教室講義(座学・実技)と全教室合同の集合実技研修で構成しており、3年間かけて初級、中級、上級という3段階に分けて、技術と技能を学ぶことができる。

1年ごとに「初級・中級・上級」へとステップアップ可能に
各地の教室で行う教室講義(座学)の様子

工務店でのOJTの機会も提供している。工務店と役務契約を締結して教育訓練を行うことで、基本的な作業の安全管理やマナー、大工道具の使用方法なども習得する機会を得られる。

3年目には実際の住宅を建築するプログラムも用意しており、群馬県の神流町で伝統構法を用いて町営住宅を建築するといった取り組みを実施してきた。
25年度については、能登半島地震の被災に鑑み、木造応急仮設住宅を建設する予定となった。

一人親方にも技能習得の場を

教室講義(実技)を通じて大工技術・技能を習得していく

大工志塾では、基本的には工務店などに所属する社員大工を受け入れてきた。しかし、25年度から入塾要件を緩和し、個人事業主も参加できるようにする。いわゆる一人親方にも技能習得の場を提供しようというわけだ。

ただし、所属工務店が無い場合、入塾前に塾長と副塾長による面接を受ける必要がある。

入塾生紹介の特典も用意している。一人親方として活躍している大工を入塾生として紹介すると、1年後に年間プログラムを修了した時点で、紹介者に3万円を支払うというもの。

なお、開校場所については、全国6カ所(東京、名古屋、大阪、福岡、長野、新潟)で行う予定だが、多くの入塾生が集まったエリアを追加することも検討していくという。

単年度制に変更
修了までのハードルを軽減

その他の制度変更としては、3年制から単年度制へと移行する。

先述したように、これまでは3年間かけて1年、2年、3年へと連続してステップを踏んでいくことになっていた。しかし、特に個人事業主の大工にとっては、仕事をしながらの受講になるため、3年間続けて受講できない場合も想定される。

そこで、例えば最初に初級のプログラムを1年かけて修了し、次の1年は休み、2年後に中級に入塾して受講するといったことができるようにしていく。これによって、修了までのハードルを軽減しようというわけだ。

講師ライセンス制度も新設

新たに大工志塾講師ライセンス制度も創設する。

これは、一人親方などが墨付けや刻みの練習をする際に要請に応じて認定講師を派遣し、個別指導が行えるようにするものだ。

認定講師規約に基づき、主に大工志塾の教室講義や集合実技研修の講師経験者を認定し、認定証(ライセンス)と認定カードを交付する。

受講者と認定講師が相談し具体的な指導内容などを決め、受講者は指導料を講師に直接支払うことになる。

(一財)住宅産業研修財団では、ホームページに認定講師のプロフィールなどを公開し、受講者と認定講師をマッチングするための情報提供などを行う方針だ。

集合実技研修では、塾生同士の交流を図りながら、伝統的な大工技術を学んでいくことができる

住宅業界の人手不足が深刻化する中で、大工の育成は喫緊の課題となってきている。しかし、中小の工務店の中には、自社で大工を育成するだけの人手や時間を割けないケースも少なくない。

また、社員大工ではなく、一人親方として活動している大工にとっては、自らの技能を伸ばし社会に評価され安定した収入を得たいと考えても、特に伝統的な大工技術については、働きながら学べる場が限られる。

大工志塾では、広く入塾の門戸を開くことで、昨今のフリーランス支援の一助を担い、人手不足の解消と大工技術の伝承を促していきたい考えだ。