コストや設計の手間を削減 大臣認定を取得した制震装置を提案

BXカネシン「EQ GUARD(イーキュー ガード)」

 

「EQ GUARD」は「地震に強い家づくり」を追求してきた木造建築用接合金物メーカーのBXカネシンが京都大学と共同開発した制震システムである。高い耐震性能と共に、制震をプラスすることで、地震後も補強せずに住み続けられる住まいづくりを提案する。

木造建築用接合金物メーカーのBXカネシンが京都大学と共同で開発した「EQ GUARD」。鋼板ダンパーを使いコストダウンにも成功した

多くの制震ダンパーが高減衰ゴムなどを活用し、地震の揺れを熱エネルギーに変換して建物の変形を抑制するが、システム自体の価格は高減衰ゴムの価格に左右されてしまうという問題があった。高減衰ゴムは高価であるため、大幅なコストダウンが難しいのだ。

そこで同社では、しなやかに伸びる鉄の特性を利用し、コストダウンを図った制震ダンパーを独自に開発した。鋼板製の部品の一部を変形させることで、揺れを吸収する仕組みになっており、繰り返す揺れにも制震効果を発揮する。

3つの部材で効率的に揺れを吸収し、構造体へのダメージを低減する。四角鋼管部とベース部で鋼板ダンパー部を挟み込むことで、圧縮時に鋼板ダンパー部が大きく変形しすぎないように工夫した。鉄の鋼材が地震の揺れで変形する時、同じだけの地震エネルギーを吸収して建物の揺れを抑える。鉄は何度でも伸縮を繰り返して、安定した制震効果を維持する。直近では資材高騰などによる住宅価格の高騰もあり、制震の導入に慎重な事業者が出てきていることも事実だが、EQ GUARDは、同社の従来品と比較して3~4割のコストダウンを実現しており、大幅コストアップを避けながら耐震化を図れる点も支持を集めている。

実証実験では、阪神・淡路大震災の地震波を10回にわたり加えても、建物へのダメージがほとんどないことが分かっている。EQ GUARDを設置した場合としなかった場合とで、揺れによるダメージの比較検証実験を行った。実験では阪神・淡路大震災の地震波を繰り返し10回発生させて建物へのダメージを検証。設置なしでは、1回目の揺れで大きく変形し耐震性が低下。繰り返す大きな揺れに耐えることができず3回目で筋かいが壊れた。対して設置ありでは、10回大きな揺れを受けてもEQ GUARDが変形を抑え、耐震性の低下を最小限に抑えていることが分かった。

新たにメーターモジュール仕様の「EQ GUARD M (イーキューガード エム)」も発売している。EQ GUARDが壁倍率2.8倍、EQ GUARD Mが3.2倍の大臣認定を取得している。そのため、EQ GUARDを設置した壁が耐力壁となり、従来品のように制震装置を配置する雑壁を新たに設ける必要もない。

コストメリット、大臣認定(壁倍率)取得による設計のしやすさ、壁量確保のしやすさなどが支持され、オプションではなく標準仕様として採用する住宅会社も少なくない。ここ数年は毎年売上が拡大しており、24年度も着工数減少の影響を受けながらも、販売実績は昨年度比5%増で推移している。共同開発者である京都大学 生存圏研究所の五十田博教授は、「強い壁をバランスよく基準よりも多く配置したり、繰り返しの地震に対して性能劣化の少ない制震壁を使ったりして大地震時に損傷を抑え、継続して住まうことが可能な住宅を設計することは現在の技術では可能」と話す。

阪神・淡路大震災の地震波を10回にわたり加えても、建物へのダメージはほとんどなかった