インフレ、金利上昇の局面、金融政策がより重要に。賃上げと物価上昇の好循環を実現できるかの瀬戸際
ニッセイ基礎研究所 客員研究員 小林正宏
―日米の金融政策の動き、また住宅市場への影響をどう見ていますか。
アメリカでは、トランプ次期大統領がどのような政策を打ち出してくるのか予測することが難しい部分があります。大統領就任前の演説などを見ても、どこまで本気で言っているのか、実現可能性は低いけれど交渉の材料として打ち上げているところがあるようです。実現可能性のレベル次第で政策の影響は大きく変わってくると思います。
一般論として言うと、トランプ氏が主張する不法移民の強制送還や、強硬な関税政策は、基本的にインフレがより強まる方向で作用するということはほぼ一致した見方です。足元のアメリカの物価水準は、コロナが明けた後2020年から、特に22年のロシアのウクライナ侵攻以降、上昇し続けています。冷戦後、長く続いた世界の自由貿易体制が分断されていく中で、日本においても30年間続いたデフレ経済も終わりつつあります。物価水準を見ると、日米ともに、ちょうどベルリンの壁が崩壊する以前の1980年代とほぼ同じ水準になってきています。さらに昨年、日本銀行はマイナス金利を解除し、金利のある世界が戻ってきています。インフレと金利上昇の局面において金融政策が非常に重要度を増してきていると思います。
日本銀行は、1月の政策決定会合で金利をさらに引き上げるという見方が多い一方で、米国情勢が不透明な部分もあるため、植田総裁の発言も若干慎重になっているという印象を受けています。日銀の政策発表が1月24日で、トランプ大統領就任が1月20日ですから、就任演説でどういったことを言うかということを踏まえての判断になるとは思いますが、ほとんど期間はありません。ただ日本においては、インフレに対して非常にネガティブな見方が強まっています。かつてはデフレが悪だったわけですが、今はむしろ物価高に対して国民の反感がすごく強まってきている。足元で食料価格が急激に上がり、キャベツ1玉が300円超ということなどがニュースになっていますが、特に低所得者層の生活を直撃しています。石破首相は、そういったところへの目配りの意識を強く持っていると思われます。日銀が利上げをしないことによって円安と物価高が進むことに対するプレッシャーが高まってくれば、やはり利上げに踏み切らざるを得ないという判断もありうるかもしれません。現時点ではどちらに転ぶか微妙です。
―インフレ、金利上昇の局面において、日米それぞれの住宅市場へはどのような影響が出るのでしょうか。
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