「三重苦」が業界変化のチャンスになるか 新たな住宅供給の形やサーキュラーエコノミーの進展に期待
野村総合研究所(NRI)コンサルティング事業本部 統括部長 榊原 渉
価格高騰、労働者不足、金利上昇の三重苦
―2025年の住宅マーケットの見通しを教えてください。
明るいことを言えず申し訳ないですが、一言でいえば「三重苦」です。
1点目は原材料高騰の継続です。世界経済のブロック化が背景にあり、この先原材料価格が下がる要因を予測することは難しいとみています。昨年は世界的な選挙イヤーとなり、各国で右傾化、ポピュリズムが進展しました。そのため米国に限らず各国の経済のブロック化が進むと予想され、一部の国産木材をのぞき、ほとんどの資材を輸入に頼る日本の住宅産業はさらに苦しくなっていくと思われます。
2点目は労働者不足です。生産年齢人口の減少に加え、産業間の人材獲得競争に負けている中で、女性、高齢者、外国人らの建設技能労働者を増やす取り組みも一部ありますが、そもそも日本は女性や高齢者の労働参加率が高まっているため、伸びしろはあまり期待できません。さらに、人口ボーナス期が世界的に終わりつつあり、世界レベルでの労働者の奪い合いが起きていくと予想されます。世界の総人口はまだ増加していますが、世界の生産年齢人口の比率は2020年ぐらいで頭打ちになっており、2030年ぐらいから減少し始めると予測されています。結果、労働力の奪い合いが世界的に激しくなり、国際的な人材競争の中で、日本で働くメリットは薄れていきます。労働環境を変えるなど、まだ改善の余地はあるかもしれませんが、乾いた雑巾を絞るようなレベルになってきていると感じます。
3点目は金利の上昇です。住宅ローン金利も上昇するリスクをはらんでいます。消費者からすれば、住宅に関する原価、材料費、人件費、土地代などすべてが上がっているうえに、住宅ローン金利まで上昇し始めると、購入意欲が減退する可能性があります。本来は物価上昇とともに所得が上がるはずですが、まだ追いついていないのが現状です。こうした「三重苦」から、2025年も厳しい状況が続くと思います。
―そうした苦しい状況の中で、住産業界はどのような取り組みをしていくべきでしょうか。
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