BXカネシン、開発試験センターB‐Labを開設　中大規模木造建築の製品技術開発を加速

建築金物メーカーのBXカネシン（東京都葛飾区、二村一久代表取締役）は、東京本社に隣接する敷地に、開発試験センターB‐Labを開設した。中大規模木造に関する製品や技術のよりスピーディな開発を目指す。

脱炭素を背景に中大規模木造市場に追い風が吹いている。従来は、大手ゼネコンなどがメインプレイヤーであったが、昨今は中堅クラスや地方のゼネコン、ハウスメーカー、工務店、設計者などが積極的に取り組もうとする流れが大きくなっている。こうした背景がある中で同社は「MP木造建築」という名称を2018年に策定。MPとは、Multi Purpose（マルチパーパス）の頭文字を取ったもので、「多目的に木造を使用していく」という意味を込めている。また、MP木造建築は同社の中大規模木造建築への取り組みを分かりやすくブランド化したものでもある。

これまで、中大規模木造建築用の金物は特注の製作金物が主流であったが、そもそも設計できる人が少ない、費用がかさむといったことが課題であった。できるだけ既製品の金物を使うことが望ましいが、既製品は主に木造住宅向けの規格で作られているものであるため、中大規模木造建築で使用することが難しいという問題もあった。そこで、こうした溝を埋めるために、同社ではある程度規格化した金物の開発を進めている。

また、22年4月には中大規模木造建築における構造と接合金物に関する疑問を無料で相談できるWEB上の窓口として「構造金物相談所」を開設。図面をもとに、構造・接合部の相談、金物の見積り、構造設計者の紹介などを行っている。

今回、東京の本社敷地内に開発試験センターB‐Labを開設したのは、中大規模木造建築の需要増加に対応するためだ。本社敷地内にある既存の開発試験センターA‐Labでは、耐力壁試験などで使用する100kN面内試験機、引張試験、せん断試験、圧縮試験などを行う500kN万能試験機を導入しているが、耐力壁試験などで高さ3m程度の低い壁にしか対応することができなかった。引張試験などの容量不足の問題もあった。そこで、B‐Labには、新たに4・5mの高さまで対応できる200kN面内試験機、1000kN万能試験機を導入した。開発本部 技術開発部の槙田剛部長代理は、「MP建築に注力し、MP建築では4mを超える壁に対応しなければいけいことも多々あることが分かってきた。需要増に対応するためB‐Lab開設で大幅な試験設備の増強を図った」と話す。

依頼試験への対応力向上もB‐Lab開設の目的の一つだ。住宅着工が減少する中で、ハウスメーカーや工務店は、自社住宅商品のオリジナル化、差別化の取り組みとして、中大規模木造建築の技術開発を強化している。同社開発部はサポートの一環として、試験設備を貸し出し依頼試験に対応しており、業務の半分は、依頼試験への対応が占めているという。しかし、A‐Labだけでは、一つの会社が壁の試験をしていると、ほかの試験設備は空いているが、他の会社を入れることができないため、試験依頼があっても3カ月以上待たせてしまうという状況が生じていた。B‐Lab開設によりこうした問題が解消される。「B‐Lab開設により、MP建築の設計対応が強化でき、依頼試験での対応力も上げることができる。MP建築の開発スピードを上げて、技術力を蓄積し、業界の発展に寄与でしていきたい」（槙田部長代理）考えだ。

MP建築の実例
プロモーションにも活用

また、B‐Lab開設にあたり、同社のMP建築の技術を活用して建設した。準防火地域／防火地域に建つ、延べ床面積313・91㎡（106坪）の木造建築物で、450㎜の平角柱と基礎を接合し協商耐力壁を実現する「ベースセッター」を多用したほか、屋根トラスには、接合部をビスとボルトで構成する発想の引張接合システム「MPねじ接合システム」を使用し、大空間を創出した。今後、MP建築のプロモーションにも生かしていく計画だ。営業本部 特需営業部 MP課の村西大介課長は、「接合金物などの製品を設計事務所や施主にアピールしてもなかなか響かない。直接、建物を見ていただくことが有効なアピール方法になる。B‐Labには、当社が持っている様々なアイテムを詰め込んだ。東京近郊にあり、手軽に見に来ていただけることも大きな強み」と話す。

6月にB‐Labを開設し、依頼試験がひと段落した11月に見学会、また、B‐Lab内に新設した試験機を使用した金物接合部の公開実験を行った。