それでも“ああ、秋だ!”だ/庭こそ身近な自然
それでも“ああ、秋だ!”だ
地球温暖化はいまや地球沸騰化と名を変え、日本の気候をも変動させている。夏が長く、秋と春がなくなる二季の国になるとの御託宣も冗談話ではなくなりそうだ。そんな脅迫が頭をかすめはするが、短くはあるもののそこここに秋の訪れを感じる昨今ではある。
わが家では昨年、金木犀と花梨の樹が大きくなりすぎて隣家に落葉や落果で迷惑をかけているとの家人の言葉で盛大に伐採した。せめてもの償いは採れた花梨の実で花梨酒をつくったことだろうか。当然ながら小さく丸坊主の樹に今年は実がなるはずがない。昨年の花梨酒にその名残りをとどめるだけで、一抹の寂しさはいかんともしがたい。ところがだ。諦めていた金木犀はわずかに残った下枝からあの金色の花を咲かせた。気がついたのはあの香りだ。窓を開けたときに飛び込んできた。伐った張本人の家人も嬉しそう。秋を感じ、確認できた瞬間だった。ツルゲーネフの“ああ、秋だ!”だ。小さな庭ながら庭のある喜びと言ったら大げさだろうか。
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