イタリアのアグリツーリズムに学ぶ 都市と農村の交流人口拡大、地域経済活性化策

近年、日本において地方創生の一環として「農村観光」、「農泊」推進の動きが加速している。地方、農村において、農業人口の減少、過疎化、遊休地・空き家の増大など様々な課題が山積する中で、今あるものを再構成し、新たな地域マネジメントを行い、付加価値を新たに見出し、都市と地方の交流を深め、持続可能な経済を地域にもたらす取り組みだ。その農村観光、農泊の先進地がEUであり、特にイタリアの「アグリツーリズム」は、近年大きく進化しており、海外観光客の獲得、農作物輸出の競争力強化、地域経済の活性化につながっている。日本の農村観光、農泊がさらに発展していくためには何が重要になるのか。食環境ジャーナリストの金丸弘美氏と、イタリアのエミリア＝ロマーニャ州在住で、アグリツーリズムに詳しい岡崎啓子氏が対談を行った。（進行・沖永篤郎）

──地方創生の一環として近年、農村観光、農泊が注目されています。

金丸　これまで観光地ではなかった農村への観光、都市と農村の交流、新規就農・起業・移住の支援を行う国の施策が充実し、全国で成功事例が増えています。農村の宿泊施設に泊まり、地方ならではの風景・食事・農業体験を楽しむという大きな流れが生まれています。

農業人口の激減、過疎化、遊休地・空き家の増加など、地方、農村が抱える様々な課題の解消に向け、農村観光、農泊がソリューションの一つとして注目されているのです。また、日本では、国内のインバウンド（海外観光客）の誘致増大を目標に掲げており、その重要な位置づけに農村観光、農泊があります。2030年までに、全国500地域に広げ、インバウンドを6000万人、消費額を15兆円にするとしています。

農林水産省では令和6年度、「農村漁村発イノベーション促進・整備事業」を予算化し、「農泊推進事業」などを強化しています。農山漁村の所得向上と関係人口の創出を図るため、農泊地域の実施体制の整備や経営の強化、食や景観の観光コンテンツとしての磨き上げ、国内外へのプロモーション、古民家などを活用した滞在施設の整備などを一体的に支援しています。農林水産業はじめ、飲食業、宿泊業、金融業、旅行業など多様なプレーヤーで構成される地域協議会に対して一体的に支援するというものです。令和7年度までに、都市と農山村の交流人口を1540万人、農泊地域での年間延べ宿泊者数を700万人泊にまで増加させる事業目標を掲げています。そのほか、観光庁では、農村観光とインバウンドの強化、文化庁では、食の海外発信・ツーリズムの推奨などの各事業を予算化しています。

農村観光、農泊推進の一環として、空き家をリノベーションして宿泊施設などとして有効活用することで、地方でも深刻化する空き家問題の解消に生かすことも期待できます。総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると空き家総数は過去最高の900万戸に達しました。なかでも問題視される「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」の数は前回調査比37万戸増の385万戸、空き家率は同0・3ポイント増の5・9％と増え続けています。こうした中で国土交通省は、令和6年度の「空き家再生等推進事業」において、市区町村が重点的に空き家などの活用を図るエリアを「空家等活用促進区域」として定め、規制の合理化などを措置することを可能にしました。空き家をリノベーションして宿泊や観光などの用途で使うことも支援しています。

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