2024.9.5

阿部興業、80期がスタート 新商品拡充し「都市開発事業」をさらに強化

超高級ゾーンの「ウルトラプレミアム事業」も

木製ドア・建具・造作家具のトータルサプライヤー阿部興業は1945年の創業から80期を迎えた。新商品を拡充し、近年好調な、ラグジュアリーホテルなどを対象とした「都市開発事業」などを強化していく。

同社は2023年5月、28年ぶりに社長交代を行い、三代目社長に40代の阿部清光新社長が就任した。第80期を迎えた現在、木製ドア・和建具・家具において年間約1万4000の案件に関わっている。昨年は、代表的なプロジェクトとして麻布台ヒルズの各施設に、同社木製玄関ドア、内装ドア、造作家具などを提供。売上、利益とも増収増益を続け、前期は過去最高利益を達成した。阿部社長は「案件ごとにお客様と連携し、プロジェクトマネジメントで設計、製作、施工を一気通貫で対応できることが当社の強み。“木製”にこだわり、和の伝統技術に裏付けされ、更にはデータ活用した商品開発で“本物”を作り続け、お客様に感動をお届けしていきたい」と話す。

ショールーム入り口に展示された「面発光高級障子」。日本の風土に合う新しいタイプの現代の障子として開発した

第80期を記念して7月23日に帝国ホテルで開催した講演会には、世界的に著名な建築家、妹島和世氏が「環境と建築」をテーマに登壇。その記念講演会の冒頭、阿部社長は事業計画などを発表した。24年度は、「VISION2024」として「『社会・環境』との良い距離感」を掲げ、戸建住宅、集合住宅、リフォームなどを対象とする「支店ビジネス事業」、ホテルや学校、オフィス向けの「都市開発事業」、そして、超高級住宅や迎賓館などを想定した「ウルトラプレミアム事業」の3事業に注力する。特に近年急成長するのが「都市開発事業」だ。阿部社長は、「多くのラグジュアリーホテルなどで、当社のAK木製防火玄関ドア、AK内装防火ドア、および造作家具を採用いただいている。ホテルのブランド価値を高められる本物の製品を作り届けていく。和のスタイルを折りまぜてインバウンド需要に対して価値創造を行う提案も強化していきたい」と話す。

「日本の技術、木製品にこだわり、本物の製品を提供し、多くのお客様にその良さを伝えていきたい」と話す阿部清光社長

7月22日、23日、24日には、同社ショールームで新商品展&商談会を開催し、新商品が並んだ。「内廊下タイプ マンション玄関向け 木製防火ドア」は、デザイン性を追求した防火ドア。木目の美しいウォールナットと、藍染め調の染色顔料とのコントラストによる意匠を表現した。マンションでは不可欠とされる60分の耐火性能を有し、特定防火設備の認定も取得している。一方、20分耐火性能を有し、防火設備認定を取得した「ホテル向け木製防火ドア」は、製造過程で発生する端材を有効活用し、様々な樹種をランダムに並べ、壁面パネルと一体化したデザインに仕上げた。特注建具として、ショールーム入り口に展示したのは、「面発光高級障子」。国の重要無形文化財に指定されている埼玉県の「細川紙」を使用。1枚の和紙を両面から格子で挟み、間接照明で背面から照らすことで、陰影を楽しめるように工夫した。「日本の風土に合う新しいタイプの現代の障子として提案していきたい」(同社)。そのほか、同社グループのネットワークをフル活用して製作した茶室用の建具なども展示。客用の小さな出入口の戸「躙り戸(にじりと)」や、高度な製造技術が求められる「太鼓貼り襖」などを展示した。