ナチュラル、ライト系は安定の人気 落ち着いた空間をベースに変わる価値観と共にアレンジ

パナソニック ホームズ 商品企画担当 三浦沙耶 氏

 

近年、一次取得者層をターゲットとする規格住宅の提案が相次いでいる。時代のニーズに合わせて住宅会社のノウハウを落とし込み、プランを厳選することでコストを抑えやすいというメリットもある。パナソニック ホームズ 商品企画担当の三浦沙耶氏に、規格住宅購入者の傾向などからわかる、人気のインテリアトレンドを聞いた。

パナソニック ホームズ 商品企画担当
三浦沙耶 氏

──2021年4月、WEB販売住宅〈ヴェッセ〉を発売しました。

20歳~30歳代が多数を占める住宅の一次取得者層を主なターゲットに設定したWEB販売の戸建住宅です。頑強な鉄骨構造だからこそ実現した、万一地震で全壊・半壊があった場合に当社が原状復帰する独自の制度「地震あんしん保証」や、ZEHにも対応可能な快適性を備えた高品質・高性能な住宅を、一次取得者層が、WEB上で間取りやデザイン・仕様のシミュレーションを簡単・効率的に行うことで求めやすくし、2200万円台(税込2500万円台)から新築することが可能です。

ITリテラシーが高い同世代のニーズに合うように、オンラインシミュレーション機能を充実させた、これまでの展示場ビジネスとは異なる家づくりです。開発のきっかけは、これから家を購入する層の価値観の変化が始まりですが、ヴェッセを発売したのは21年4月で、丁度コロナ禍により展示場に来場して住宅購入を検討することが難しい時期でした。非対面でもじっくり家づくりを楽しんでもらいたいという思いもありました。WEBだからこそ、共働きなどで忙しい人でもパソコンやタブレット、スマートフォンから、自分のペースでいつでもどこでも家づくりができる、新しいカタチの住まいづくりを提案しています。

家づくりを簡単で効率的にするため、3ステップのフローを設定しています。先ずは、「LIFE STYLEシミュレーション」で、住む人の好みのライフスタイルや理想の住まいのイメージを膨らませた上で、①「家づくりシミュレーション」で、プランや外観・インテリア・設備仕様などを、価格を確認しながら選択し、②お客様にとって住まいに必要な価値、こだわりアイテムをセレクト③最後はお客様がシミュレーションしたベストプランを当社営業と対面で確認し、住まいを完成させていきます。

ヴェッセでは、簡単なシミュレーションを行うだけで住宅価格の規模感が分かるため、家づくりのハードルをぐっと下げることができます。ヴェッセをきっかけに家づくりをスタートし、もっとこだわりたいのでとフルオーダーの自由設計で注文住宅を検討されるケースも増えています。また、お子さんが自立して夫婦2人でよりコンパクトな住まいに住み替えるタイミングなどで、ヴェッセで住宅購入を検討される方もいます。

一般の方は、ご自身がどのようなインテリアが好きか明確に言語化できる方は多くありません。しかし、何となくこのようなイメージが好きといったことであればわかるはずです。頭の中のぼんやりしたイメージを具体的な絵にしてイメージを明確化するお手伝いができれば、家づくりのハードルを下げることができます。インテリアは、決めることが多くて大変な面もありますが、一生に一度と言われる家づくりなのでワクワクしながら建てるプロセスも楽しんで選んでもらいたいという思いで「LIFE STYLE シミュレーション」を開発しました。

カップや時計などの小物や、椅子・空間の雰囲気など、画面に表示されるデザインやカラーの好みを答えていくだけで、自分のライフスタイルや暮らしの価値観を診断。理想の住まいの実現の参考にすることができます。シミュレーションシステムには日本カラーデザイン研究所のノウハウを活用しスタイルを細分化。さらに、Google CloudのAI分析ツールで当社オーナー1万人の住宅デザインのデータを分析することで、シミュレーション結果に出たオススメのインテリアや外観が、どのような世代や職業の方に選ばれているのかまで確認でき、納得度の高い診断を実現しました。

スタイルは、12分類から提示し、その後の「家づくりシミュレーション」の選択のしやすさにつながるよう、おすすめのインテリア、外観などを表示します。

グレイッシュ、グレージュも近年のトレンド

──ヴェッセにおける人気のインテリアの傾向について教えてください。

一般の方でも選びやすくできるかが非常に重要なので、ヴェッセでは、簡単に選んでもらえるように、まずナチュラル系、アーバン系の2通りのスタイルを選択いただき、その後にそれぞれ、ライト系、ミディアム系、ダーク系というカラーのトーンが落ちていくような形で、どれが好きかをお聞きしています。その結果を見ると、自然をイメージしたナチュラルなインテリアは、21年の発売当初から、23年~現在までの直近においても継続して人気です。また、ライト系と呼ばれる一番軽い印象のトーンが3年前と変わらず人気が続いていて、数字にも顕著に表れています。

ここからは、ヴェッセだけでなくインテリア全体に視野を広げてお話しますが、SDGsといった時代背景もあり、天然素材やサステナブルといった言葉に関心を持つお客様は増えています。時代の流れとともにこうした傾向はより強まっていくと見ています。インテリアにおいても天然素材を使用したサステナブルな家具、自然素材や植物を取り入れたデザインは人気です。使うほどに味わいが増していく経年変化を楽しみたい、育てていきたいというニーズの高まりも感じています。工業化住宅の安定品質に信頼感を置いて当社を訪問してきてくださるお客様は多いため、自然素材を使用したものをどう取り込んでいくのかは、重要な検討課題です。もうひとつキーワードになるのが「素材感」です。SNSなどで様々なものを見られているので、インテリアに対する感度が非常に高まってきています。素材感、手触り感、マット感のあるものを求められることが非常に多くなってきていると感じています。

インテリアのトレンドで言うと、イタリアのミラノ市で開催されるミラノサローネのトレンドの影響も大きく、その影響が2年後ぐらいに日本に入ってくるので、当社としても次にどんなものが流行るのかは抑えておく必要があります。

インテリアは様々な要素で構成されますが、例えばカラーについて話すと、そのミラノサローネのトレンドとして2、3年前から言われているキーワードは、「グレイッシュ」、「グレージュ」です。目に馴染むアースカラーでやさしい雰囲気を演出し、ほっと安らげる空間づくりに寄与します。同色系で合わせても統一感のある万能カラーですが、主張が強くないため、あえて鮮やかな色味のファブリックなどで差し色を入れてアクセントで映える空間にすることも可能です。近年は、グレーから温かみのあるベージュやオフホワイト、淡いピンクへとシフトしてきています。オレンジ、ブラウンなどのエネルギッシュな暖色系のカラーの人気も高まる傾向にあります。当社でも最近のトレンドに沿って、住宅新商品のインテリアは、床の色をオークでもグレージュ系に塗装したものを使用したり、クロスに淡いグレーを使うなど、ベースの空間はあまりメリハリをつけずにグラデーションや近いトーンでまとめたり、また、褐色系のエネルギッシュな色を差し色にして入れ、空間にアクセントをつけるということを意識して行っています。

24年4月に発売したセミオーダー方式の注文住宅『フォルティナ セレクトプレミアム』の内観。グレージュやベージュをベースにしながら、ビビット系の褐色のアイテムを差し色として入れている

落ち着いた空間がインテリアの基本

──顧客の嗜好が多様化する中で「インテリアのトレンドはこれだ」と言い切ることが年々難しくなっている気もしますが。

SNSの普及により、インテリアのスタイルや嗜好性は更に細分化されバリエーションも広がっていることは確かですが、落ち着いた空間を整えていくことが、インテリアの基本であることは変わらないと思っています。トレンドに左右されすぎずベーシックな床の色とホワイトのクロスにするなど、空間自体はシンプルに整えた箱が基本としてあり、家具やカーテンやクッション、ラグなどでトレンドを取り入れていくのがおすすめです。

例えば、ミラノサローネのトレンドを取り入れて、グレージュやベージュに寄せ微妙に色を出して変化させる、差し色でビビット系の褐色を入れる。あるいは家具の形やフォルムは、角ばったものが人気なのか、丸みを帯びたものが人気なのか。トレンドに合わせて変化させていくのが全体として目指すべきところだと思います。

ナチュラル、ライト系が安定して人気があるのも多分、関係していて、器としてナチュラル、ライト系のベース空間があり、そこに例えば今はブラックサッシなどのアクセントが入ることによって、空間を引き締める効果を生かしたインテリアも提案が増えています。器の部分と、トレンドに寄せてちょっと味を出していく部分が、インテリアの中でも分かれているのです。

家を建てた当時の価値観のまま、一度もインテリアに手を加えず暮らしていくのかというと多分そうではありません。自分がいいなと思うものは年齢とともに変わっていく。そうなったときに空間全体を変えるのではなく、例えば家具を変えれば、同じ空間でも全然違う印象になる。そうしたニーズに対応していくことが大事だと考えています。