花粉症発生源対策で10年後スギ人工林を2割減
【白書を読み解く】林野庁「林業白書」
戦後植樹した森林が伐採期を迎え、また、脱炭素といった観点から、木材利用促進の機運が高まっている。加えて、花粉発生源対策としてもスギ人工林の伐採・植替えなどの対策が加速している。
令和5年度林業白書の特集テーマは「花粉と森林」とし、花粉発生源対策などを解説している。戦後、国は荒廃した国土の緑化や旺盛な木材需要へに対応といった社会的要請に応え、スギなどの人工林を拡大させてきた。一方、これらの人工林が成長するにつれて、スギ花粉などによるアレルギー疾患が顕在化し、国民を悩ませる社会問題となっている。スギ花粉症は1964年に初確認された。スギ花粉症の正確な患者数は不明だが、全国的な疫学調査によれば有病率は1998年の16%から約10年ごとに約10ポイントずつ増加し、2019年は39%に達したと推定されている。
これまで各省庁で様々な取組が行われてきたが、花粉症の有病率は高く、多くの国民が悩まされ続けている状況であることを踏まえ2023年4月、政府は「花粉症に関する関係閣僚会議」を設置し、5月に「花粉症対策の全体像」を決定した。花粉の発生源であるスギ人工林を減らす「発生源対策」、発散防止剤の開発などの「飛散対策」、治療薬の増産などの「発症・曝露対策」に総合的に取り組む。さらに23年10月、花粉症に関する関係閣僚会議において、「花粉症対策の全体像」が想定している期間の初期の段階から集中的に実施すべき対策を「花粉症対策 初期集中対応パッケージ」として取りまとめた。「花粉症対策の全体像」における花粉発生源対策の目標として、10年後には花粉発生源となるスギ人工林を約2割減少させる。これにより花粉量の多い年でも過去10年間の平年並みの水準まで減少させる効果が期待できる。さらに30年後に花粉症発生量を半減させる目標を掲げた。
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