大和ハウス工業、ストック事業「リブネス」が着実に拡大
買取再販に注力し、26年に売上高4000億円を目指す
2018年に立ち上げたストック事業「Livness(リブネス)」が年々成長し、23年度は売上高3537億円を達成した。今後は買取再販に注力するとともに、事業・商業施設を対象とした新ブランド「BIZ Livness(ビズ リブネス)」を立ち上げ、26年度に事業全体で売上高4000億円を目指す。
住宅ストック事業の強化を目的にグループ統一のブランド「リブネス」を18年1月に立ち上げてから約6年、住宅価格の高騰、購入者の意識の変化、空き家の増加などの背景を追い風に、事業は右肩上がりで伸びている。18年度の全体売上高は1814億円だったが、23年度は3537億円まで拡大。「リフォーム」(1730億円)、「買取再販」(1425億円)で約9割を占めている。平井聡治リブネス事業推進部長は、「リブネス事業が立ち上がった当初は、一戸建て、区分マンションを中心に、売却時に当社が仲介する、もしくはリフォームを行う、場合によっては買取再販することからスタートした。その後、世の中に相当数の当社のアパートがあることがわかり、売却時に仲介する、リフォームする、もしくは買い取る仕組みをつくった。最近は法人所有の建物、工場、倉庫などにも対象が広がっている」と説明。26年度の目標を4000億円と掲げているが、「会社の大きな命題として1兆円を目指す。早いほうがいい」とさらなる成長を見据える。
再販住宅の5割超が3か月以内に成約
これまでのデータが好調の理由を示している。同社住宅事業部における取引別住宅販売価格(土地+建物)によると、同社の新築分譲の1棟平均価格は、22年に4980万円だったのが、23年に5244万円と物価高の影響を受けて1年間で264万円増加した。一方、買取再販は22年の3648万円から3483万円と逆に165万円下がっている。これは地方での売却が多かったことも影響しているが、価格が安定しており、新築と比べ購入しやすいことが分かる。
加えて、19年4月から24年3月までの住宅買取再販データでは売却者、購入者の状況もみえてくる。これまでの225件の売却者のうち居住中は61%で、空き家は39%。売却者年齢の平均は56.9歳。売却理由で最も多いのが住み替えで42%、次が離婚で19%だった。1~5年で手放す家主が10%もいるため、築年数平均は16.2年。一方、購入者のデータでは、世帯年収平均が700.4万円、最も多い購入理由は立地で35%。再販物件の販売開始から成約までの期間は、3ヶ月以内が5割超と回転率が高い。
扱った物件のうち自社が9割となっているが、平井リブネス事業推進部長は「世の中には木造や他社の建物がたくさんある。もっと増やしていかないといけない」と全国のグループ営業網を拠点にさらなる顧客の掘り起こしを狙う。5月に総務省が公表した最新の土地統計調査によると、全国の空き家は全住宅の13.8%、過去最多の約900万戸と問題の深刻化が進む。空き家探しは個人情報の取得が容易ではないため手間がかかるが、それも含めて引き続き買取再販を進めていくという。
新たな性能、トレンドを加え付加価値をアップ
買取再販では、新築よりも短い期間で家づくりができるため、時代に合わせた最新機能やトレンドを取り入れやすい。「そのスピード感がリノベーションの良さ」と平井リブネス事業推進部長。築17年の他社住宅を改築し再販した世田谷区瀬田の例でも、時代に合った新たな試みが多くみられる。桧家住宅施工の木造住宅で、間取りは4LDK+2WCL+小屋裏収納、床面積は303.57㎡(52.56坪)。約2200万円(内装に約1600万円、外構に約600万円)をかけてリノベーションを行い、床の間付きの伝統的な和室をモダンな印象の和室へと変更。また、壁に古木やもみ殻などアップサイクル材を使用し、環境へも配慮した。家族での「家事シェア」をコンセプトに、水回りを集約し使いやすくするなど、現代の暮らし方に合うような住宅へと作り替えた。販売価格は2億5800万円(税込)。この住宅は高級住宅地という土地柄、富裕層や外国人を対象に改築した例だが、同様に買い取った中古物件に新たな性能を加えて付加価値を付ければ、新築に並ぶ選択として、さらなる注目と需要が見込まれるとみられる。特にこれから活性化しそうな地域を狙って、魅力的な買取再販の中古住宅を増やしていく。
工場、倉庫などの大型案件で売上増目指す
非住宅分野の新ブランド「BIZ Livness(ビズ リブネス)」も始動した。国土交通省の「平成30年法人土地・建物調査」によると、築30年を超える倉庫や工場が計20万件と全体の5割以上を占め、老朽化した施設が増加している。また、日本ショッピングセンターの「SC白書」によれば、開業20年を超える複合商業施設が全国で2000件を超え、住宅だけでなく非住宅分野の建物の修繕やリノベーションの需要が高まっている。さらに、昨今の資材高騰や「2024年問題」への対応などにより、既存施設の再生への関心も高まっている。こうした背景を踏まえ、非住宅ストック事業を拡大するため、ビズ リブネスを立ち上げた。同社はこれまで、製造施設、医療・介護施設、オフィスなどを約2万2000件、店舗・商業施設など約4万8000件を建築してきた。非住宅ストック事業においても大きなアドバンテージを持つ。
「ビズ リブネス」には、同社をはじめ、大和ハウスリアルティマネジメント、大和ハウスプロパティマネジメント、フジタビルメンテナンスが参画する。これまで事業施設事業・商業施設事業で培ってきたノウハウや全国に展開する営業拠点網、同社グループのネットワークなどを生かし、自社施工物件はもちろん、他社施工物件を含む既存施設の買取再販やリノベーション、テナント企業の誘致などをより積極的に行う。また、テナント企業のニーズに合わせたバリューアップ工事を行うなど、収益物件として資産価値を向上させることで、不動産投資家のニーズにも応えていく。建て替えはもちろん、顧客のニーズやその土地の地域特性に合わせた多様なソリューションを提案し、不動産の新たな付加価値を提供していく。
ビズ リブネスでは、特に買取再販に注力していく。「既存の事業・商業施設を、これぐらいの金額でリノベーションして、これぐらいの金額で次の売却先を探すという経験則が溜まってきている。価値を上げることができると確信できる案件であれば、積極的に買取再販に取り組んでいく」(平井リブネス事業推進部長)。
例えば、「駒ヶ根リブネスプロジェクト」では、遊休資産となっていた工場を有効活用して、市場価値の高い倉庫に再生。工場売主(製造企業)、倉庫買主(投資法人)、テナント(物流企業)、それぞれのニーズを満たした。「Dプロジェクトリブネス伊勢崎」では、早期に倉庫を売却したい売主(製造企業A)と、工場用地を探していた買主(製造企業B)の双方のニーズにスピーディに対応。製造企業Aと協議し、草加から工場へ、用途変更・遵法性確保が可能か確認して同社が購入。「1年後に工場稼働」という製造企業Bのニーズに応えるため、倉庫から工場への用途変更後に売却した。平井リブネス事業推進部長は、「すでに商業ビルの買取再販を40億円で売却した実績はある。ショッピングセンターを買取り、3年かけてテナントを入れ替えて、利回りを良くして次の投資家に売却すれば100億円は超える。今そうした案件に取り組んでいる」と話す。
「リブネス」全体の23年売上は、住宅が74%、非住宅が26%だったが、26年にはその割合を6対4と想定する。個々の案件の単価が高い非住宅分野に注力することで、さらなる事業拡大を目指す。
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