AQ Group、日本初、8階建て純木造の本社ビルが完成
坪145万円、従来の木造ビルの半分のコストで実現
さいたま市西区三橋において建設を進めてきた新社屋「8階建て純木造ビル」が完成した。これまでの木造ビルの1/2の費用、坪あたり145万円で建設。「普及型純木造ビル」のプロトタイプとして、木造ビル普及に向けた取り組みを加速させる。
同社グループではこれまで一般流通構造材料と住宅用木材プレカット加工技術を採用することで、コストを抑え、特殊な技術や資材を使用しない方法で、中大規模木造建築の普及実現に向けた取り組みを行ってきた。16年には埼玉北支店社屋を建築。17年にはつくば支店社屋を、特別な金物を一切使用しない一般大工による施工で実現している。
今回のAQ Group8階建て木造新社屋(延べ床面積6076㎡)についても、木構造体の接合部を特殊な金物に頼らず日本古来の継手・仕口の技術を住宅用プレカット工場で量産加工してつくることで、普及資材、工法で、地域の中小ゼネコン、工務店が施工し、免震装置に頼らない耐震構造を実現した。創業45周年を迎えた今年5月、本社機能を移転した。
脱炭素、SDGsといった観点から、炭素貯蔵効果などが期待される中大規模木造への注目度が高まっているが、耐震性能、耐火性能、コストなどの面で課題も多く、これまではシンボリックなビルが多いのが実情である。
対して今回の取り組みでは、同社が培ってきた木造住宅の「材料+生産システム+施工システム」に、同社の技術力、構想力をプラスしたことで、普及することができる工法と価格帯で建設することに成功した。特に耐震・耐火・耐久性能で国が定める基準をクリアすること、「木のあらわし」を生かすことのバランスが最大の課題であったが、実物大耐震実験や川崎5階建ての建築・施工工程の事前検証を繰り返し、構造設計者をはじめ、ゼネコン、プレカット工場、大工など、工程に携わるすべての有識者の知恵を結集した。住宅用プレカット工場で製材、加工した木材で建設、特殊な建築金物なども極力使用せず、普及しているものを活用。併せて、設計、施工の標準化にも取り組んだ。その結果、坪145万円で実現でき、大手ゼネコンによる先導的な木造ビルに比べると約2分の1、鉄骨鉄筋コンクリート造の約4分の3と大幅に建築費を抑えられることを実証した。
フォレストビルダーの募集を開始
「普及型純木造ビル」を全国に
AQ Group本社ビルは、同社が推進している日本の街並みに木造建築物を復興する「Re:Treeプロジェクト」の象徴となる。宮沢俊哉代表取締役社長は、「木造ビルにチャレンジする地域の工務店や中小ゼネコンに対して『フォレストビルダー』として5月から仲間の募集を開始する。『普及型純木造ビル』を全国に広め、地球規模の課題であるカーボンニュートラル社会の実現を目指していきたい」と話す。
森林林業白書によると、5階建て以下の非木造建築物の床面積は3900万㎡。同社は、㎡当たり単価を40万円とすると約15・7兆円の市場規模があると試算する。「普及型木造ビル」の技術を駆使し、5階建て以下の両機で木造ビル・木造マンション・商業ビルを展開していく考えだ。
伝統技術と現代技術を融合
木の魅力を感じられる空間に
AQ Group本社ビル建設に向けては、木質構造研究の第一人者である元東京大学教授の稲山正弘氏などと共同研究を進め、社寺建築でも取り入れられた伝統技術と現代技術を融合させた。
より高いレベルの耐震性能が求められるため、低層階には、梁に国産カラマツ集成材210×520と、210×760を用い、柱にヒノキBP材(構造用製材を積層・圧着した大断面木質材料)を2丁合わせとした「相欠き合わせ柱式木質ラーメンによる高耐力フレーム」を使用。鋼板などの金物を使わずに相欠き仕口の木のめり込みによってモーメントに抵抗する。また、両ネジボルトと角座金しか金物を使わない「引きボルト式木質ラーメンによる高耐力フレーム」は、柱にLVLを用いることでめり込み変形を抑え、初期剛性を従来の2倍以上に向上させた。耐力壁の強度を競い合う「壁︲1グランプリ」への参加などにより培ってきた高耐力壁も効果的に使用した。壁倍率35倍相当の強度をもつ「組子格子耐力壁」や、構造用合板24㎜両面張りで壁倍率40倍相当の高耐力壁なども使用している。
耐火性能については、1~4階は2時間耐火、4~8階は1時間耐火で設計。長期鉛直荷重を支持する主要構造部は強化石こうボード耐火被覆を施し、水平荷重のみ支持する耐震部材(耐力壁やラーメンフレーム)については、室内に木現しで構造体を露出し、木の魅力を最大限に感じられる空間を実現した。
「木造建築技術研究所」も新設
新社屋とのシナジーで技術革新を加速
新設したAQ Group本社ビルから車で約15分、埼玉県上尾市に1万5000㎡超の「木造建築技術研究所」も新たに整備する。この研究所は、同社の技術開発の拠点となる。新社屋とのシナジーで、戸建て住宅から中規模木造建築の大規模な研究や開発、技術革新を加速させる方針だ。構造実験棟(木造平屋建て、面積512㎡)などの第一期工事は24年4月に完了、5月にオープンした。500kNで実験可能な面内せん断試験機と圧縮引張試験機などを導入、おおよそ10階建ての木造ビルの耐力壁を開発でき、住宅で通常使われる壁の10倍の強さで実験することができる。今後、部資材のノックダウン検証、AIの活用による最適物流の研究などを行う「施工効率化センター」(木造平屋建て、面積768㎡)の建設も計画している。
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