家づくりのトレンドは省エネな暮らし、小さな暮らし

2023年度 住宅新商品

脱炭素の取り組みの加速、人口や世帯数の減少、消費者ニーズの個性化など、社会は大きく変わりつつある。
こうしたドラスティックな変化を踏まえ、住宅各社の商品開発も多様化を極めている。
断熱性向上や再生可能エネの導入など省エネ化をめぐる取り組みが目立つ一方で、平屋やコンパクト住宅など“小さな暮らし”の提案も活発だ。
2023年度に発売された住宅新商品を通じて商品開発のトレンドを追った。

フラッグシップは等級7へ
等級5を標準に魅力あふれる提案で差別化

今、住宅業界の大きなトレンドとなっているのが住宅の省エネ性の向上だ。

国の「2050年カーボンニュートラルの実現」に向けて、住宅分野でも次々と新たな施策が打ち出されている。25年の省エネ基準への適合義務化および30年のZEHレベルへの適合義務化により住宅に求められる最低限の性能の底上げを図り、住宅性能表示制度の断熱等性能等級の等級6・7の新設によりさらに高い性能への誘導が図られた。

これらの動きに連動して補助や優遇税制などの支援制度が展開されていることもあり、住宅業界では非常に速いスピードで性能向上が進んでいる。大手ハウスメーカーは言うまでもなく、一定以上の力を持つ地域のビルダーでもZEH仕様は当然の標準仕様といえるまでに広がっている。また、当初はオーバースペックだ、対応が難しいと言われていた等級6・7への取り組みも想像以上の速さで広がっている。

23年度に発売された住宅新商品では、こうした動きが如実に表れている。

一条工務店の「グラン・スマート」は等級7へ対応

大手ハウスメーカーのなかでも高気密化・高断熱化の先陣を切ってきた一条工務店は、主力商品の「グラン・スマート」、「アイ・スマート」において断熱等性能等級7への対応を図った。同社が供給する住宅の9割以上がすでに等級6に適合した断熱性能を持つことから、新開発の断熱玄関ドアなどわずかな変更で早期の対応が可能となった。

住友不動産は、その名も「断熱最高等級7の家」を冠した注文住宅を発売した。2×6工法、内外壁のダブル断熱、高断熱樹脂トリプルガラスの組合せで等級7の性能を実現、あわせて独自工法により高断熱の性能を保持しながらも、居住性を損なうことなく注文住宅の高いデザイン性を両立したフラッグシップ商品だ。

積水化学工業は多雪エリアに向けて「スマートパワーステーションN-FX GREENMODEL-S」を発売 

積水化学工業は、環境フラッグシップモデル「GREENMODEL」シリーズの多雪エリア商品「スマートパワーステーションN‐FX GREENMODEL‐S」を発売した。同社は断熱性はもとより、エネルギーを自給自足する住宅として20年から同シリーズを展開、累積引渡し棟数は3ヵ年で4110棟となっている。新商品は同シリーズ初の多雪エリア向け住宅で、気象条件の厳しいエリアでもレジリエンス、環境貢献、経済性を兼ね備えた暮らしを提案する。大容量太陽光発電システム、大容量蓄電池のほか、新たに「多雪エリア専用の蓄電池グリーンモード運転機能」を持つHEMS「スマートハイムナビ」を開発、搭載した。

また、同社は、木質系住宅でも「グランツーユー 平屋 つながる暮らし」を発売した。ZEHを標準とし自給自足率78%を実現するが、断熱等性能等級6にも対応可能となっている。

トヨタホームはシンセ・シリーズの最上位モデル「SINCÉ Code」で等級6に標準で対応

トヨタホームは、主力商品シンセ・シリーズの最上位モデル「SINCÉ Code(シンセ・コード)」を発売。サステナブルデザインを追求し、環境性能・機能を深化させた。外壁の断熱材の厚みを増し基礎断熱を強化するなどで断熱等性能等級6に標準対応、瓦一体型太陽光発電や全館空調「スマート・エアーズplus」、停電時にEVなどから給電できる「クルマde給電」などを搭載。北側防眩仕様の太陽光発電などを設置することでLCCM住宅にも対応する。こうした仕様だけでなく水平ラインを強調した屋根形状や深い軒の出、スクエアフォルムなどが多様な敷地条件下でも反映できるよう、建物フォルムや屋根形状、外装材などをコード化し、外観デザインの再現性を担保している。

LIXIL住宅研究所フィアスホームカンパニーは「アリエッタDS」をモデルチェンジ、G2グレードを標準とした

LIXIL住宅研究所フィアスホームカンパニーは15年から世界基準の断熱性能の家として、自由設計の「アリエッタDS」を展開してきたが、性能のさらなる向上を図りモデルチェンジ、HEAT20のG2グレードを標準として発売した。開口部にはLIXILのトリプルガラス樹脂サッシ「EW」を採用しサッシによる熱損失を抑え、鉄鋼筋交い(スマート・ブレース)により採光の確保と耐震性を両立した。

このような等級6・7を目指す先進の商品開発が進む一方で、標準的な住宅商品はZEHレベルが当たり前になっている。30年に予定されているZEHレベルの義務化を待たず、等級5を標準に、どのような差別化を打ち出せるかが住宅の商品開発のポイントになっているのである。

ミサワホームは木造住宅の「MJ Wood」ブランドに企画タイプの「NYSTYLE N」をラインアップした。「家族も自分も楽しめるJust Fitな住まい」をコンセプトに、20~30代の共働き3人以下の世帯を想定した企画型住宅だ。家事効率を高めながらひとり時間も満喫できる「マルチヌック」、将来的なライフスタイルの変化に対応する「可変空間」などを備える。ZEHを標準仕様に、暮らし方や予算にあわせた太陽光発電システムの「3つの買い方プラン」を提案する。

ライフデザイン・カバヤは、企画住宅「AREBA!(アレバ!)」を発売。企画住宅が持つ分かりやすさと着工までのスピーディな打合せというメリットはそのままに、現代の暮らしにフィットしながら、幅広いニーズに柔軟に対応する。性能を4つにパターン化したことがポイントで、標準でHEAT20のG1を全プランでクリアするほか、「高断熱パック」でG2と第一種換気、「ZEH+パック」でG2、第一種換気、太陽光発電を、「高気密・高断熱パック」でG2とC値0・65、第一種換気を提案する。

ナック ハウスパートナーはエースホームブランドの「WadiA(ワディア)」で、コロナ禍で生まれた癒しや安らぎを求める価値観に寄り添う暮らし方を提案する。北欧的なインテリアをベースに和風要素を取り入れたスタイル「ジャパンディー」のインテリア、ひとり癒される場所としての「ヌック」のほか、女性トレンド総研ハー・ストーリィと共同で子育てママに実施した調査に基づき、「これが欲しい!」アイテムを整備して盛り込んだ。断熱等性能等級5、一次エネ消費量等級6に標準で対応する。

同ブランドから「FLAT‐X(フラットエックス)」も発売したが、こちらは断熱等性能等級6(5地域以南)、一次エネ消費量等級6に標準で対応する。

25年に省エネ基準への適合義務が予定されているが、その先に控える30年のZEHレベルへの適合義務を踏まえ、国の支援制度なども等級5への誘導が進む。住宅の商品開発は等級5を必須条件に、等級6・7という上位等級への取り組みがさらに加速しそうだ。


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