「樹脂サッシリサイクルビジョン」策定
2030年に年間1万tの樹脂窓リサイクルへ
2024年1月9日、(一社)日本サッシ協会、樹脂サッシ工業会、塩ビ工業・環境協会の3団体が「樹脂窓リサイクルビジョン」を策定、樹脂窓製品のリサイクルに関する4つの考え方をまとめた。環境配慮が大きなキーワードとなるなかで、かつてはリサイクルが困難とされた樹脂窓に変革の時が訪れようとしている。
2024年1月、樹脂窓リサイクル検討委員会(以下、検討委員会)が「樹脂窓リサイクルビジョン」を発表し、今後の目標やリサイクルにおける留意点などについて明確にした。
検討委員会は、19年8月に発足した。それまでも各協会、工業会での研究やワーキングなどを進めていたが、三団体の力を結集して、より広域での活動を進めるため設立した。
検討委員会の清家剛委員長(東京大学 大学院教授)は、2月21日に行った記者会見で「これまで樹脂窓のリサイクルについては様々な議論があったが、2050カーボンニュートラルに向けて、腹を括って取り組みを進めようと委員会内で前向きな状況になったため、ビジョンの発表に至った」とリサイクルビジョン発表の背景を説明した。
ビジョンでは、「樹脂窓リサイクルの意義」、「樹脂窓リサイクルの目標」、「樹脂窓リサイクルビジョン実現への方策と留意点」、「再生材活用の留意点」という4つの考え方をまとめている。
樹脂窓リサイクルの課題としては、過去に安定剤として使われていた鉛系の添加物や異物をどこまで除去できるか、リサイクル品の定義やコスト面、回収の仕組みづくりなどがあげられている。こうした課題については、除去方法の研究を続けているほか、リサイクル材の使用場所の工夫、建築廃棄物の組合へのヒアリングをもとに回収に協力してもらうための方法などを探っている。
検討委員会の構成団体のひとつである樹脂サッシ工業会の奈良憲道会長は、「ビジョンを出すことで、ほとんどが廃材になっていた樹脂サッシについて、工務店、ビルダーの方たちに捨てずにリサイクルしましょうというPRができれば。リサイクルにはお金がかかるので、補助金、助成金など、なんらかのメリットが必要。そうした働きかけにもつなげたい」とした。
リサイクルの目標に向けて
サッシメーカー各社は取り組みを加速
同ビジョンにおいて注目すべき点は樹脂窓のリサイクルについて具体的な目標を定めたこと。「委員各社において、2024年までに使用済み樹脂窓由来の再生材(塩化ビニル樹脂)を用いたリサイクル製品の市場投入を目指す」、「工場内で発生する端材の再利用及び再生原料化、さらに使用済み樹脂窓を含めた再生材の回収に努め、2030年までに1万t/年の再生材活用を目指す」といった2つを掲げている。リサイクル量の数字については、1万tのうちの約8割を使用済み樹脂窓の再利用に比べリサイクルへのハードルが低い端材によるリサイクルで想定しており、工場内で発生する端材は30年までに100%リサイクルしていきたいと考えを示した。残りのおよそ2000tについては市中回収した使用済み樹脂窓の再利用を目指す。本州に比べ樹脂窓の普及が進んでいる北海道において今後廃棄が発生するであろう80~90年代の出荷量を鑑みて回収できそうな量を設定した。
目標に向けて、サッシメーカー各社も取り組みを加速している。
YKK APは、2000年代から樹脂窓フレームの工場端材のリサイクル技術検討・商品化に取り組み、17年頃から活動を本格化している。00年代前半に「エピソードⅡ」を代表とするアルミ樹脂複合窓にリサイクル材の使用を始め、19年に窓フレームにガラスを隙間なく取り付けるためのガスケットや、玄関ドア「ヴェナート」の扉内樹脂部材などにも使用先を拡大、22年からは基幹商品である樹脂窓「APW」の一部商品でもリサイクル材を利用している。
23年度末のリサイクル率は39%(推定実績)であるが、現在も樹脂形材へのリサイクル技術を構築中であり、24年度には樹脂窓「APW」やアルミ樹脂複合窓へのリサイクル材採用商品アイテムを拡大するほか、樹脂窓以外の再生用途も含めて技術開発を進めているとし、24年度末100%達成を目標にしている。今後は、行政主導の資源循環関連事業や、産官学連携のコンソーシアムへの参画、また同社のWEBサイトやSNSなどを通じて、国内外の幅広い年齢層のエンドユーザーへPR活動を積極的に進めていきたいとした。
LIXILは21年に発売した樹脂窓「EW」において樹脂フレームのリサイクル使用率を従来品から約3倍に拡大している。また、社内における樹脂窓の端材再生利用率100%を目指しており、24年3月期には達成する見込みだ。
エクセルシャノンは、樹脂サッシ工業会としてリサイクルの活動を進めるなかで、約5~6年前から自社で出た端材の形材への再利用を進めている。
不二サッシ、三協立山は、具体的な計画はないものの、課題として認識しているとし、取り組みを進めていく考え。
また、大信工業は3団体による検討委員会の委員メーカーには含まれていないが、樹脂サッシ工業会に所属するメーカーとして取り組みを進めており、自社工場内で発生する端材のほぼ100%をリサイクル活用しているとのことだ。
今回のリサイクルビジョンの策定により足元の状況や課題、目標が広く公表され、樹脂窓リサイクルへの取り組みに加速がつきそうだ。
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