[住宅価格]インフレ時代に求められる新しい住宅購入の選択肢

住宅事業者には、いつの時代も変わらぬ不変のテーマとして「より良い品質の住宅をより低価格で提供する」ことが求められてきた。しかし、特に近年、資材価格、人件費の高騰などを背景に、住宅価格の上昇が止まらない。住宅価格高騰という社会課題を解決していくために今何をすべきか。何が求められているのか。住宅業界が挑戦してきた過去の様々な取り組みの中にそのヒントがありそうだ。

住宅のコスト低減は、住宅業界の永遠のテーマといえる。特に住宅価格が上昇する局面で繰り返しコストダウン論争が起こり、産官学が協力し合い様々な取り組みが行われてきた。

戦後間もなくの戦災復興期に公営住宅が中心ではあったが、LCH(ローコストハウジング)開発への挑戦が行われ、住宅建設合理化への第一歩を印した。さらに、1976(昭和51)年には、やはり地価高騰、建築費上昇のもとで、通産、建設両省が国家プロジェクトとして「ハウス55開発計画(新住宅供給システム開発提案競技)」を打ち出した。”良質で低廉な住宅を”をキャッチフレーズに、土地・住宅建築費高騰のオペレーションブレークスルーとして実施された。「床面積100㎡のセントラルヒーティング付きの良質な住宅を500万円台で」の目標は、きわめて大きなインパクトを日本中に与えた。

ちなみに、不動産経済研究所の、首都圏の新規売り出しマンション及び建売住宅の価格と所得の乖離をまとめた調査によると、75年のマンション価格1530万円、年収倍率4.7倍、建売住宅の価格2101万円、年収倍率6.4倍から、91年には、マンション価格5900万円、年収倍率7.1倍、建売住宅の価格6778万円、年収倍率8.2倍にまでともに上昇している。

92年には、政府が「生活大国5か年計画」を打ち出し、この中で一般的な働く人の平均年収の5倍程度を目安に家が買えることを目指すという文章が盛り込まれ、「年収5倍論」という考え方が広まるきっかけとなった。

94年に建設省は、「住宅建設コスト低減に関するアクション・プログラム」を策定、スタートさせた。当時、我が国の住宅建設費は、外国に比べて割高(米国の約2倍)と指摘され、内外価格差、その低減が課題となっていた。さらに、ポストバブル経済の価格破壊現象の流れが追い打ちをかけ、再びコストダウンが命題になった時代でもあった。アクション・プログラムでは、2000年度までに標準的な住宅建設コストを、これまでの水準の3分の2程度に低減することを目標とした。生産システムの合理化、住宅部品・設備などの規格化・標準化、技術開発の推進―など生産性の向上や、設計段階におけるコスト管理の徹底、流通合理化、規制の合理化―など、多彩な住宅建設コストの直接的低減策が盛り込まれた。
また、96年には「住宅建設コスト低減のための緊急重点計画」が策定され、住宅の高コスト構造是正に向けて、建築規制の合理化や輸入住宅、海外資材・部品導入の円滑化などが位置付けられた。


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