2023.12.25

大和ハウス工業、「2024年問題」を見据え建設DXを加速

サプライチェーン連携、建設横断プラットフォームも視野に

第7次中期経営計画の中で、持続的な成長モデル構築に向けた基盤としてDXを位置付ける。建設DXを加速することで「2024年問題」へ対応、将来的にはサプライチェーン連携、建設横断プラットフォームの実現も視野に入れる。

2022年5月、2027年3月期を最終年度とする5カ年の「第7次中期経営計画(2022~2026年度)」を策定。「収益モデルの進化」「経営効率の向上」「経営基盤の強化」の3つの経営方針と、8つの重点テーマに取り組み、「持続的成長モデル」を構築し、最終年度の2026年度には、売上高5兆5000億円、営業利益5000億円、純利益3400億円を目指す。この第7次中期経営計画の中では、持続的な成長モデル構築に向けた基盤としてDXを位置付ける。

住宅分野(戸建住宅・賃貸住宅)では、D‐Camera(統合カメラ管理システム)、物件ポータルサイト(物件情報一元化)、ダッシュボード(複数物件情報可視化)などのスマートコントロール基盤を導入。第7次中計終了時の目標として、施工担当業務の生産性を、住宅で50%、集合で35%向上させるとしているが、2023年度末時点で住宅35.8%、集合26.2%向上に資する開発完了の見込み。2023年12月から、施工店自主検査写真のAI自動判定を開始した。自主検査200項目弱のうち3項目で全国展開、2024年4月までに段階的に約50項目に増やす予定だ。

大和ハウス工業が取り組む[建設DX推進指標]

また、2017年からBIMの推進を開始し、2020年には同社が建設する全ての商業施設や事業施設の設計業務においてBIM化を完了した。CDE(共通データ環境:クラウド保管場所を指す)の蓄積件数は企画設計が年間4000件、実施設計が年間900件となっている。

2023年9月には、BIMと連携したメタバース『D’s BIM ROOM」の導入を開始した。オンラインで建材を選定するクラウド管理システム「truss」を展開するトラス、企業向けメタバースプラットフォーム「WHITEROOM」を提供する南国アールスタジオのグループ会社2社と共同開発したもので、計画する建物の建設地において、更地に竣工した建物イメージをMRで表示し、建物の3Dモデル内から、実際の周辺環境をみる、建材の仕様を検討するといったことも可能だ。

技術統括本部建設DX推進部の宮内尊彰次長は、「個々の企業でBIMデータにばらつきがある状態では、共通データ基盤の構築はおぼつかない。だからこそ、トラスの『建材データベース』が重要になる。多くの事業者を巻き込んでいきたい」と話す。将来的には、BIM活用サプライチェーン連携、建設横断プラットフォームの実現なども視野に入れる。同社のDX推進を支援する日本マイクロソフトの前川敦常務は「製造業の分野では、社外の関係事業者も参加できる形で事業プラットフォームをオープン化し、案件ごとに最適な形で部品を調達できる仕組みを構築している企業もある」と話す。建設業界において同様の仕組みの構築を目指す考えだ。