2023.12.22

鶴弥、テスト製品をアップサイクルした“いぶし瓦”

創嘉瓦工業と協業して開発、高級層向けに販売

鶴弥は創嘉瓦工業と協業して鶴弥の工場で発生するテスト製品を利用した“いぶし瓦”の販売を開始した。いぶし瓦を新たに商品ラインアップに加え、高級層へ訴求する。

三州地域で陶器瓦の製造を行う鶴弥が、同地域でいぶし瓦を製造する創嘉瓦工業(愛知県高浜市、石原史也代表取締役)と協業し、アップサイクル瓦「スーパートライ110 スマート(いぶし瓦)」の販売を開始した。これまで粉砕物(シャモット)として粘土に混ぜ込むことで再利用していたテスト製品をいぶし瓦へアップサイクルすることで活用の幅を広げSDGsを促進、さらには新たな市場開拓をねらう。

スーパートライ110 スマート(いぶし瓦)

いぶし瓦とは、瓦の焼成後に蒸す、燻化の工程を加えることで独特の色味を出す粘土瓦だ。一方、鶴弥が扱う商品は釉薬によって色を付ける陶器瓦で、いぶし瓦を製造する設備はなかった。同社は新しい取り組みとして、創嘉瓦工業と協力し、いぶし瓦を販売できないかと検討するなかで、テスト製品活用の可能性を見出した。テスト製品は、鶴弥が所有する焼成窯をメンテナンスで一時停止したあとに、再び焼成温度まで昇温、窯内部の温度分布などを安定させるために工程に流すもの。これまで、焼成温度などの必要条件を満たさないテスト製品は、陶器瓦組合が所有するシャモット工場で粉砕し、瓦の原料となる粘土を製造する業者によって粘土に配合されていた。このような取り組みにより再利用率は100%であったが、新たな活用方法として創嘉瓦工業の設備で焼成(燻化)することでテスト製品をそのままの形で付加価値を持った瓦商品にアップサイクルできる。

他社との大々的な協業も同社にとっては初の取り組みだ。両社間での規則のすり合わせには苦労したとのことだが、協業によって、厳しい状況にある建材業界を活気づけたいという思いで実現したという。

こだわりを持つ高級層に
洋風なフラット形状のいぶし瓦を

価格は鶴弥で販売する一般的な商品と比べて2.5倍程度。いぶし瓦が、製造の複雑さから高価なものであることに加え、2社をまたいで製造を行うため、コストがかかるという。加藤開発部長は「いぶし瓦は粘土瓦のなかでも最高級品、加えてフラット形状の『スマート』も当社のシリーズのなかで最高級ランクのもの。そのため住宅にこだわりを持つ高級層をターゲットに販売していく」とし、まずは、テスト製品のうち年間54tを「スーパートライ110 スマート(いぶし瓦)」へアップサイクルする。これはおよそ15棟分の瓦になるといい、今後、市場ニーズを見て増産などを検討する。

10月31日より受注生産で販売を開始しているが、フラットな形状のいぶし瓦は市場に少ないこともあり、工事店などからの反応は上々だという。

また、「SDGsへの貢献はもちろん、社会課題として人手不足があり特に建築業界では深刻。瓦としてもできるだけ簡単に施工できるものを用意していく必要がある」(加藤部長)と、これからの商品開発の方向性としては、職人不足に対応できる省施工のものを開発していきたいとした。