国立研究法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所、超厚合板の実用化に向けた課題を解説
原料調達、製板技術などに難点
渋沢龍也研究ディレクターが「超厚合板実用化に向けた7つのキーワード」をテーマに講演を実施、原料調達や製板技術など実用化に向けた課題を解説した。
合板の日実行委員会が開催した「令和5年度 『合板の日』記念式典」において、国立研究法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所の渋沢龍也研究ディレクターが「超厚合板実用化に向けた7つのキーワード」をテーマに講演を行った。
超厚合板とは、最大厚さ30㎜程度の厚物合板を超える厚さを持つ合板のこと。国内では、日本合板工業組合連合会を中心に研究開発が進められており、森林総合研究所もプロジェクトに参画、2019年から林野庁の補助事業として採択されている。
近年、木材利用促進の観点から中大規模木造をめぐる動きが活発化してきているが、その実現には大断面を有する部材の開発が必要だ。超厚合板は、構造用合板をさらに厚手化することで大断面を実現、面材自体に強度を持たせることで、中大規模建築への利用を可能にしている。
しかし、その実用化には課題も多く、渋沢ディレクターは、課題として「原料調達」、「単板選別」、「大断面化」、「製板技術」、「性能保証」、「LCA評価」、「コスト」の7点について解説した。
特に注目すべきは「原料調達」の面で、渋沢ディレクターは、短尺材やB材の原料利用の可能性ついて提言した。国内で調達可能な原木の最大長さは一般的に4mであり、超厚合板の試作品もそれを原料として開発が進められている。だが、こうした長尺材は運搬などの観点から出材が難しく、まとまった量の確保ができないこともあるという。
一方、通常の合板は長さ1~2mの短尺材や細り、曲がりがあるB材も原料として利用することができ、資源の有効利用、原料調達がしやすいという利点がある。
渋沢ディレクターは、「こうした資源を超厚合板にも利用できれば、実用化がより現実味を帯びてくる。だが、短尺材から中大規模用の大面積の製品を作るためには『たて継ぎ』による素材の接着が必要になるため、強度面に課題が残る。こうした性能上の課題も同時にクリアできるように検討を進めていかなければならない」と話す。
また、製造面での課題としては「製板技術」の確立も重要な要素と言える。現状、試作品の超厚合板には熱硬化型の接着剤を使用しており、熱圧プレスを行って製造している。しかし、熱圧プレスは熱板から圧締物の厚さ方向に伝熱していくため、熱を伝えられる製品の厚さに限界があるという。そのため、製品規格によっては接着剤が硬化する温度まで中心層の温度が上がらない可能性が指摘されている。
こうした課題の解決策として、「常温硬化型の接着剤や、高周波加熱によって圧締物全体を均質に温められる高周波プレス機の利用が有効ではないかと考えており、今後検討を進めていく必要がある。また、製品ストックの観点からも、原木からワンショットで超厚合板を造るのではなく、厚物合板を二次接着する手法も検討していくべきだ」(渋沢ディレクター)と指摘した。
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