深化する工務店ネットワーク
営業、施工、資材調達まで工務店生き残りを支援
工務店を取り巻く環境は年々、厳しさを増している。最大のネックは人材不足であり、新人社員が働きやすい環境を整備して戦力化していくことが求められている。また、近年、資材高騰や、外的要因による資材ショートなどのリスクが高まる中で、資材の安定調達を実現していくことも大きな課題だ。一方で、脱炭素化の流れの中で法改正が続き、その対応も待ったなしとなっている。2025年4月から「省エネ基準適合義務化」、「4号特例縮小」がスタートする。競争力の強化に向けレベルアップし、より高性能な住宅づくりを行っていくことも不可欠になってきている。工務店が置かれている環境は近年大きく変化を続けており、個々の事業者が自社のみで対応するのは困難になってきている。そこで注目を集めているのが「工務店ネットワーク」だ。FCやVC、あるいは工務店と対等な関係で経営ノウハウを提供するものまで様々な形態がある。営業、施工、資材調達などの一連の業務をシステムでバックアップする工務店ネットワークが存在感を増してきている。
工務店経営最大の課題は人材不足
仕組み化で新人も住宅を売りやすく
人材不足、物価高の影響により、建設業の倒産が増えている。帝国データバンクによると2023年に発生した建設業の倒産は、8月までに1082件。8月までの累計で1000件を突破したのは2017年以来6年ぶりだった。また、6月に単月で160件に達し、2014年10月以来9年ぶりの水準になった。このペースで推移すれば、年内の建設業倒産は1600件を超え、過去5年で最多となる。
建築業界に若年層が入ってきにくくなっており、入ってきても2年、3年で辞めてしまうことが少なくない。注文住宅を販売するスキルを身につける前に辞めてしまうという課題もある。
加えて、資材価格の高騰に連動して住宅価格も上昇しており、住宅購入のマインドは低下する傾向にあり、集客自体も難しくなりつつある。
(一社)住宅生産団体連合会の「2022年度戸建注文住宅の顧客実態調査」によると、全体の住宅取得費(土地代を含む)は前年度比587万円上昇の6370万円で8年連続で過去最高を更新。初めて6000万円を突破した。
このうち、建築費は408万円上昇の4224万円で15年連続の上昇で過去最高となった。
住宅購入へのハードルは高くなり、商談は長期化し、購入を先送りする、あるいは断念せざるを得ないケースが増えている。
地域工務店には、若手を中心に新人が働きやすい環境を整備すること、属人的な要素を可能な限り排しての新人の営業スタッフが住宅を売りやすくする仕組みを構築すること、さらには限られた人員で施工品質を確保していくことなどが求められており、多くの工務店ネットワークは、仕組み化、システム化により、こうした課題の解消をサポートする動きを強化している。
急成長する住宅会社が経営ノウハウを提供
アイ工務店は、2020年に工務店経営のプラットフォーム「Ai‐COSS」の提供をスタートした。同社は2010年の創業以来、住宅企業では売上げ成長率№1の実績を誇る(東京商工リサーチの調べ)。北海道から鹿児島まで200を超える営業拠点を構え、2022年度は売上高1341億円、経常利益161億円。受注棟数4962棟、完工棟数4635棟となった。「Ai‐COSS」は、急成長するアイ工務店の経営ノウハウを提供することで、工務店経営をバックアップする取り組みであり、人材不足、物価高などに対応していくことが工務店に求められている中で、新しいソリューションとして注目を集めている。
同社では、「住宅業界は地域性が強い。地元に根付き、信頼を得ている工務店に、ブランドやルールに縛られることなく、信頼を得ている屋号で事業を継続してもらいたい。そんな想いから、FCやVCではなく、加盟金・ロイヤリティが不要の”業務提携”という形を採用している。当社で開発し、使っているシステムを、ほぼそのままリリースしているだけなので、FCやVC展開のためのシステム開発費や販売管理費などを抑えられるため、安く使ってもらえる」と話す。
「Ai‐COSS」は、即提案・速契約を実現する営業プレゼン・見積システム「PRMIA(プレミア)」、生産性向上に貢献する基幹業務システム・施工管理システム「AIsys(アイシス)」、調達コストの削減を促す調達代行システムという3つの仕組みで構成されている。いずれもアイ工務店の成長を支えてきたものだ。
なぜ同社として独自に築き上げてきた家づくりのシステム、経営ノウハウを工務店に提供するのか。「我々も小さな工務店から発展してきた。家づくりの理念、考え方を共有する地域工務店と共に木造住宅の業界を盛り上げていきたい。当社のシステムを使ってもらうことで、もっとこうすれば使いやすくなる、といったようなフィードバックがあること、それぞれのいいところを吸収し合えることなどにも期待している」という。現在、全国約50社の工務店が「Ai‐COSS」を導入している。対等な関係を維持しながら理念を共有できると判断した工務店との提携を進めていく考えだ。
営業プレゼン・見積システム「PRMIA」は、簡単なマウス操作とドラッグ&ドロップによって営業担当者でも簡単に平面プランを作成できるツール。その情報から3Dの立面図やパース、さらにはルームツアーが行えるVR画像も自動で作成できる。このツールを活用することで設計担当者が同行することなく、営業担当者だけでプラン提案が行えるようになるため、営業力の強化、さらには設計業務の効率化などを実現できる。一般的な設計ソフトとは違い、専門的な知識がなくても、直感的に使うことができ、すぐに見積り額を提示できる。いわば”営業契約支援ツール”と言えるものだ。
同社の成長要因の一つは、営業と間接部門の人数比を示す直間比率であり、これを支えるのが特許取得済の「PRMIA」だ。一般的な住宅会社では間接部門比率7割ということが多いのに対して、同社では営業比率7割弱となっている。「PRMIA」には、平面プラン作成と同時に見積書が完成するリアルタイム見積り機能が標準搭載されている。これにより、従来かかっていた見積り作成期間を99%削減することに成功。圧倒的なスピードアップを実現したことで、間接部門の人員を抑えつつ営業人員を増やすことができる。さらに、新たに「Z‐MAP」というプラン集の提供もスタートした。これは顧客の要望を聞きながら、その場でアイ工務店の458プラン(反転プラン含む)から最適なものを提案できるというもの。プランをカスタマイズすることも可能で、ゼロからプランを作成するよりもスピーディにプラン提案を行えるようになる。打ち合わせの場でプラン提示を行うことも可能になり、営業担当者による即提案、さらには即契約にもつながるツールとなっている。
「AIsys」は、顧客・商談管理から原価、発注、請求、アフターサービスなどの住宅建築の全ての業務をサポートするクラウド型の基幹業務システム。電子発注なども行えるようになっており、業務負荷の軽減や効率化に貢献する。電子帳簿保存法の改正やインボイス制度などにも既に対応している。
施工管理機能も備えており、社外の協力事業者との情報共有やコミュニケーションを円滑に進めることができる。ID数に応じて料金が高くなるということもなく、協力事業者が増えてもコストが変わらない。施工管理を効率化する専用ツールについては、様々なものが登場してきているが、元請けとして必要な機能に絞り強化している。
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JIBUN HAUS.は、「スマホでできる自分だけの家づくり体験」をコンセプトに、規格住宅「ジブンハウス」のFC事業を展開し、VRでの内覧や、リアルタイムの見積もり、明朗な会計を通じて、誰もがよりスマートに自分の理想の暮らしを実現できる、新しい家の買い方「スマートカスタム住宅」を提供する。2016年に東京でスタートしてから加盟店数は北海道から沖縄まで全国約140以上にのぼる。
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