2023.10.30

次世代太陽光、実用化に向け活発な動き

屋根軽量化、災害対応などの要求に対応

ぺロブスカイト太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池といった次世代太陽光の開発、住宅分野への活用を目指す動きが活発化している。

次世代太陽光として今大きな注目を集めているのはペロブスカイト太陽電池だ。主な材料はヨウ素と鉛の化合物。塗布や印刷技術で量産でき、フィルムやガラス面へ透明性を維持したまま発電が可能。発電効率についてはラボレベルで、既存のシリコン系と同等の20%を超える結果が出ている。一方で、熱、紫外線に弱く屋根材としての商品化が難しいという課題がある。国は「2030年を待たず早期に社会実装を目指す」とし、民間での実証実験も活発化している。パナソニック ホールディングスはガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池のプロトタイプを開発し、神奈川県藤沢市のFuhisawaサスティナブル・スマートタウン内に新設されたモデルハウスで実証実験を開始した。南南東に面した2階バルコニー部分に設置し、目隠し性と透光性を両立させたデザインとともに、長期設置による発電性能や耐久性などを検証する。積水化学工業は大阪本社が入居する堂島関電ビルに国内で初めてフィルム型ペロブスカイト太陽電池を実装した。発電量のモニタリングや経年変化など、長期的な品質評価に活用する。三井不動産レジデンシャルと京都大学発のスタートアップでペロブスカイト太陽電池の開発を手掛けるエネコートテクノロジーズは、住宅におけるペロブスカイト太陽電池の活用に関する共同研究を開始した。

スウェーデンハウスは住宅メーカーとして初のフィルム型太陽光の実証実験を開始。2025年度の販売開始を目指す。スウェーデンハウスの村井秀壽社長(左)とF-WAVE の眞野重治社長

一方、アモルファスシリコン太陽電池は、国内調達が可能で十分な供給量があるシランガスやゲルマンガスからのみで製造ができる。200℃以下の低温プロセスで製膜できるため、製造に要するエネルギーが小さく、フィルムなどの柔軟性のある基板にセルを搭載できる。熊本に生産工場を持つF‐WAVE(眞野重治代表取締役社長)により、すでにプラスチックフィルムを基盤に使用したフィルム型アモルファス太陽電池が開発、商品化されている。

スウェーデンハウスは、F‐WAVEと協力関係を結び、全国の住宅メーカーとして初となるアモルファスシリコン太陽光電池を搭載したフィルム型太陽光発電設備の実証実験を2023年9月から開始した。23年度に屋根全体のシステムを構築し、24年度に施工などのノウハウを構築、25年度に本格販売を開始する。現時点で、既存の太陽光発電に比べて発電効率は約半分、生産コストは約2倍という課題がある一方で、夏場の高温環境下でも発電効率の低下が少ない。パネル式に比べ破損しにくく飛び火試験にも合格するなど耐久性が高い。軽量で構造への負担が少ない。製造エネルギーが小さくリサイクル性に優れるといった様々な優位性を持つ。発電効率、生産コスト、量産化について関連企業と連携して研究・開発を進めていく。