住宅業界で広がる生成AI活用

近づくシンギュラリティ 影響は不可避

2022年11月、米国OpenAI社により自動応答型の生成AI「ChatGPT」が無料公開され、世界中から注目を集めている。公開から6日目にユーザー数は100万人を突破、23年1月には1億人を突破し驚異的なスピードで普及する。人間に近いより自然な文章を生成し受け答えが可能で、ビジネスの分野においても生成AIを活用することで革新的なサービス創出への期待が高まっているのだ。日本の住宅、建築、不動産などの分野でも、ChatGPTをはじめ様々な生成AIを活用したサービスが登場している。活用事例から住宅業界における生成AI活用の可能性が見え始めてきている。

生成AIとは、様々なコンテンツを生成できるAIのこと。従来のAIが決められた行為の自動化が目的であるのに対し、生成AIはデータのパターンや関係を学習し、新しいコンテンツを生成することを目的としている。やり取りする文脈を踏まえた人間に近い自然な文章生成などが可能となってきている。これにより、カスタマーサービス、教育、エンターテイメント、医療、創作支援など多岐にわたる分野で革新的な利用が期待されている。

データ学習加速で回答の精度も向上

いまなぜ生成AIは世界中で急速に注目され始めているのか。やはり2022年11月に無料公開されたChatGPTのインパクトが大きい。GPTとは、Generative Pre‐trained Transformerの略で、ChatGPTは、分かりやすいインターフェースで、特別な知識がなくても誰でも直感的に操作でき、質問事項を入力すれば、スピーディに人間らしい文章を作成し解答してくれる。日本語にも対応している。しかも、その回答文章の精度が従来のAIよりも飛躍的に高まっている。

多くのユーザーがChatGPT体験を経る中で、プライベートはもとより、ビジネスにおいても使えるものとして認識が高まりつつある。

OpenAI社のウェブサイトで公開されているChatGPT無料版の利用法は次の通りだ。ChatGPTのページ(https://openai.com/blog/chatgpt)を開き、「Try ChatGPT」をクリックする。「Sign up」をクリックしてアカウントをつくりログインする。もしくは、「Log in」をクリックしてGoogle、Micosoft、Appleのいずれかのアカウントでログインすれば利用できる。

試しにChatGPTに、「いまなぜ生成AIが注目されているのか」と質問してみた。その理由として「自然な会話の実現」の次に挙げたのは「進化する技術」であった。「AIの生成技術は急速に進化しており、従来のモデルよりも高い品質と多様性を持つ生成が可能になっている。これは大量のデータと高度なアルゴリズムによる学習の進化に起因している」と回答。加えて、「産業への適用」も挙げ、「生成AIはビジネス領域でも応用が拡大しており、マーケティング、コンテンツ制作、デザイン、製造、金融、自動運転など、様々な産業での効率化や革新が期待されている」との回答であった。

ただし、ChatGPT、生成AIは、質問や会話のやり取りの文脈を理解して回答しているわけではない。現時点で、回答は100%完璧なものではなく、事実とは異なる内容や、文脈とは関係ない情報が出力されて文章が生成される「Hallucination(ハルシネーション)」が起こるリスクもある。特にビジネスで生成AIを使用する際には、ハルシネーション発生のリスクを知らせること、最終的に人間が判断することが求められる。

宝島社新書『ChatGPTは神か悪魔か』の中で、著者の一人、インタラクション・デザイナーの深津貴之氏は、「ChatGPTは会話形式での応答が自然になるようにチューニングされている。また、不適切な回答をしないように教育されてもいる。いずれにせよ、ユーザーが理解すべき最も重要なことは『ChatGPTは手前の文に、確率的にありそうな続きの文を繋げているだけであり、真の意味での知性は持っていない』ということ」と指摘する。

テキストだけでなく
画像、音声、動画も自動生成

ChatGPTは、「いまなぜ生成AIが注目されているのか」との問いに対して「応用の多様化」も挙げる。「生成AIはテキストだけでなく、画像、音声、動画、プログラムコードなど、様々なメディア、コンテンツの生成にも利用されている。これにより、多岐にわたる応用が可能になり、広範な分野での利用が期待されている」という。

山本康正 京都大学経営管理大学院 客員教授は、著書『アフターChatGPT 生成AIが変えた世界の生き残り方』(PHPビジネス新書)の中で、「2022年以降、作成したい画像のイメージをテキストで指示すると自動で画像を生成する『画像生成AI』も急速に進化を遂げている」と指摘する。イギリスのスタートアップ、Stability AI社が公開した「Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)」など、急速に普及する画像生成AIも現れ始めている。「Stable Diffusionの着目すべきところは、オープンソースであり、かつ、商業利用にも制限をかけなかった点。つまり、膨大な学習済みのソースコードを公開し、無料かつ無制限で『ご自由にお使いください』とオープンにした。ゲリラ商法的な手法とはいえ、これによって画像生成AIの世界が活発化し、一気に市場が開けた」(山本客員教授)。

巨大IT企業が開発競争
ビジネス応用の幅も拡大

OpenAI社のChatGPT、また、Stability AI社のStable Diffusion以外にも、米国の大手IT企業や研究機関などを中心に、様々な生成AIの開発が急ピッチで進んでいる。

Microsoftは2019年から、OpenAI社に対し大規模な出資を行っている。OpenAI社が開発した様々な研究成果を独占的に提供できる権利を得ており、同社のクラウドサービスである「Azure(アジュール)」上でChatGPTを提供し、ChatGPTを検索エンジン「Bing」と統合するなど、サービス連携を進めている。
Googleは、大規模言語モデル「LaMDA(ラムダ)」を使った対話型AI「Bard(バード)」をテスト公開しており、2023年5月には検索エンジンに生成AIを組み込むことを発表している。Amazonは、2023年9月、生成AIへの対応を強化したクラウドサービス、AWS(アマゾンウェブサービス)の新サービスとして「Amazon Bedrock」の一般提供を開始。AWS上からテキストや音声、画像などを生成できるようにした。Meta(旧Facebook)は2023年9月、最新のスマートグラスとVR用ゴーグル型端末、これらに搭載する会話アシスタント機能を持つ消費者向け生成AI「Meta AI」を発表した。

ChatGPTの登場が引き金となり、米国の巨大IT企業を中心に、生成AIの開発競争はさらに激しさを増してきており、今後、指数関数的に発展し、実現できること、ビジネスへの応用の幅も急速に広がっていく可能性が高まっている。

カスタマーサービスに導入
顧客対応の精度、品質を向上

日本国内の住宅業界においても生成AIの活用が拡大してきている。目立つのはカスタマーサービスに生成AIを搭載して、顧客対応の精度、品質の向上を図ろうとする動きだ。


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