2023.10.18

持続可能な建設業に向けた施策を中間とりまとめ

受注者側の責務について言及

国土交通省は、持続可能な建設業の実現に向けて早急に講ずべき施策の「中間とりまとめ」を策定した。建設工事において、受注者による不当に低い代金や著しく短い工期での請負契約の締結を禁止することなどを提言した。

近年、建設業界では人手不足が深刻な問題となっており、担い手の処遇改善や働き方改革を推進することで新規入職を促進、将来の担い手となる若手の確保・育成をしていくことが必要不可欠となっている。また、直近の課題として資材価格の高騰や2024年4月から適用される時間外労働規制などへの対応が求められている。

こうしたなか、国土交通省の中央建設審議会と社会資本整備審議会産業分科会建設部会が合同設置した基本問題小委員会が中間とりまとめを策定。①適切な労務費等の確保や資金行き渡りの担保、②魅力ある就労環境を実現する働き方改革と生産性向上、③請負契約の透明化による適切なリスク分担―の3分野について、建設業法等の改正も視野に入れた早急に講ずべき施策を示した。

具体的に、①では「標準労務費の勧告」、「受注者における不当に低い請負代金の禁止」、「適切な水準の賃金などの支払い確保のための措置」の3つを掲げた。

標準労務費とは、適切な工事実施のために計上されるべき、中長期的にも持続可能な水準の標準的な労務費のことで、中央建設審議会が勧告を行うとした。労務費の見積もりが曖昧なまま工事を受注した場合、技能労働者に対する適切な賃金の確保ができない可能性があるためだ。

また、現状では発注者のみが適用対象となっている建設業法第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)の適用範囲を受注者にも拡大し、指導や勧告などの対象とすることで労務費を大本とする廉売行為を制限する。

さらに、法令を整備し、建設業者が労働者の適切な処遇確保に努めることを求めるとともに、標準約款に適正な賃金支払いへのコミットメント(表明保証)や技能労働者の賃金および社会保険加入状況の開示への合意に関する条項を追加することを明記した。

一方、②では「適切な工期の確保」、「生産性の向上」の2つを掲げた。

工期に関しても現状では発注者のみが建設業法第19条の5(注文者による著しく短い工期の禁止)の適用対象とされているが、この対象に受注者を追加する。

生産性向上の観点では、ICTの活用などによる適切な現場管理のための指針を国が作成し、特定建設業者に同指針に則した現場管理に努めることなどを求める。

また、③については価格変動などのリスクへの備えや対応に関して受発注者間で認識の齟齬が発生しているなどとして見積もり時などに建設工事に関するリスク情報を受注者から発注者に提供することを義務化するといった施策を示した。

なお、今後はこうした施策のほかに重層下請構造の実態を踏まえた建設業許可の合理化、繁閑差に応じた労働力の需給調整、多能工評価のあり方、建設業の許可を得ていない小規模工事の適切な管理などの事項についてもそれぞれの実態把握に努め、あるべき方向性について検討を行っていく方針だ。