国土交通白書 デジタル化で地域公共交通を再構築

人口減少に対応した変革が求められる

人口減少が続くなか、地方では人手不足による地域公共交通の衰退が懸念されている。デジタル技術を活用した次世代交通システムを確立していくことで、移動に制限がない社会の実現に期待が高まる。

現在、日本では少子高齢化が急速に進んでおり、人口減少に歯止めがかからない状況が続いている。総務省が住民基本台帳を基にまとめた「人口動態調査」によれば、2023年1月1日時点の日本人総人口は1億2242万3038人で、22年比80万523人の減少となった(同減少率0.65%)。14年連続の減少であり、減少数、減少率共に68年の調査開始以来過去最大だった。

また、国土交通省の「メッシュ別将来人口推計(2018年推計)」では、50年時点の人口減少率(15年比)の推計をまとめており、人口規模が小さい市区町村ほど人口減少率が高くなる可能性を示唆している。例えば、人口が1万人に満たない自治体の50年の人口は51.2%減少すると推計している。
今後、人口減少の波はますます拡大し、地方の中規模都市にも波及すると見込まれており、人手不足から暮らしを支える生活サービスの提供機能の低下・喪失が懸念されている。

こうした懸念がされている生活サービスのなかで人々が重視しているものの一つが地域公共交通だ。

国土交通省の「国民意識調査」で、居住する地域での暮らしや生活環境に関する10項目についての「重要度」をたずねたところ、「公共交通の利便性」について「とても重要である」と回答した人は40.8%で3番目に多く、「やや重要である」と回答した人(43.4%)を含めると84.2%と8割を超える人が関心を寄せていることが分かった。

また、同調査では「公共交通の減便、廃線等により移動手段が減少して困ること」(複数回答可)についても調査した。最も多かった回答は「買い物」の43.7%、次いで「通院」が31.5%だった。特に、高齢者ほどこの傾向が強く、80代では63.6%が「買い物」、56.1%が「通院」を挙げた。買い物や通院は生活していく上で必要不可欠であり、こうした行動の移動手段として公共交通は欠くことのできないものであることがうかがえる。

輸送人員が不足
“地域の足”が衰退の危機

しかし、近年では地域公共交通の維持が難しくなってきており、特に地方においてこの傾向が顕著になっている。交通手段のうち、乗り合いバスについて見ると、00年度以降三大都市圏以外では輸送人員の減少が続いており、19年度には00年度比で3割弱減少した。さらに、20年度にはコロナ禍の影響も受け約5割にまで減少し、人員不足に一層拍車が掛かった。


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