首都圏白書 コロナの収束で東京回帰の流れへ

住みたくなる地域づくりが重要に

首都圏、特に東京圏において人口や機能が過度に集中する東京一極集中を是正するための取り組みが進んでいる。地方の魅力向上や、政府機関の移転など今まであった首都圏と地方のイメージが変わっていく。

我が国の人口は2008年をピークに減少局面に転じ、今後も加速度的に進むことが予測されている。特に、地方においては急激な人口減少による経済・産業活動の縮小などが問題となっている。一方で、コロナ禍でテレワークが普及し、場所に捉われない働き方、暮らし方が注目を集めた。首都圏白書によると、首都圏転入者数から転出者数を引いた「社会増減」は、新型コロナウイルス感染症が拡大した20年以降、減少が続いており、東京都で転出超過が起こるなどテレワークの普及による住み替えが進んだ。しかしながら、22年は首都圏全体で社会増に転じた。改善に向かうかと思われた東京一極集中だが、21年9月に全地域で緊急事態宣言が解除されて以降、出勤の割合を増やす会社も徐々に増え、東京回帰が始まったとみられる。

住民基本台帳人口移動報告によると、22年の東京圏の転入超過数は、約10万人(前年比約2万人増)となり、20年(約9.9万人)と同程度まで増加した。また、世代別の転入超過の状況については、10代後半から20代の若者が大部分を占める傾向が続いている。

図1 東京都における転入超過率

図2 東京圏の年齢5歳階級別転入超過数

こうした東京一極集中の是正にあたって、政府は、デジタル技術を活用することで地方の課題を解決し、持続可能な経済社会の実現や新たな成長を促す施策として、「デジタル都市国家構想」を掲げ、22年6月に「デジタル田園都市国家構想基本戦略」を、12月に「デジタル田園都市国家構想総合戦略」を閣議決定した。魅力的な地域をつくることを重要な柱の一つとして位置づけ、「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」の実現を目指す。例えば、デジタル田園都市国家構想において地方の取り組みビジョンの類型のひとつとして例示された「脱炭素先行地域」は、民生部門の電力消費にともなうCO2排出の実質ゼロを実現し、運輸部門や熱利用なども含めて、その他の温室効果ガス排出削減も地域特性に応じて実施する地域のことで、25年度までに少なくとも100カ所の選定が目指されている。この脱炭素先行地域に選定された地域では、畜産バイオマスを核としたバイオガス発電による資源循環・エネルギー地産地消のまちづくりや、市内を走る乗り合わせタクシーで農作物も運ぶMaaS事業など脱炭素化と地方活性化を実現するための様々な構想がされている。

また、白書では地方公共団体における、移住促進などへ向けた取り組みとして栃木県宇都宮市や、群馬県安中市の例を挙げている。宇都宮市は、22年11月に、移住定住相談窓口「miya come(ミヤカム)」をJR宇都宮駅東口直結の複合施設内に開設。相談窓口では、移住に関する助成金などの支援制度などの相談のほか、市内の教育環境・企業情報、移住者の暮らしの実例に関する情報の発信や、市の魅力発信などを行っている。群馬県安中市は、23年2月に運送事業などを行うセイノーホールディングス、産業用ドローンの研究開発を行うエアロネクスト(東京都渋谷区、田路圭輔代表取締役CEO)と連携し、買物弱者や医療弱者などの地域課題の解決に貢献する新スマート物流モデルの構築に向けたドローン配送の実証実験を実施した。ラストワンマイルにドローン配送を組み込み、地上輸送とドローン配送を連結する新スマート物流の構築に向けた取組で、市内の3拠点を農産物や食料品、処方薬など、常に積み荷を空にすることなく運用した。

企業の本社機能の移転促進
都内学生の収容定員を抑制

東京一極集中の是正にあたっては、その他にもさまざまな取り組みが行われている。


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