2023.10.2

高性能化のニーズに応え相次ぐ新商品開発

旭ファイバーグラスは、今年7月に今年10月から世界的な脱炭素化の流れを受けて、グラスウール製品の品種構成及び在庫運用の変更を発表した。より高性能商品へのシフトを行ったもの。背景には建材トップランナー制度など国の方針、高性能品が充実するなか製造キャパシティとのバランスなどもあり、「いずれは実施しなければいけないことであり、この機会に一挙に製品ラインアップを整理した」(池田昌彦グループリーダー)。パラマウント硝子工業も7月に9月末で「ハウスロンZERO」の一部商品について販売を終了すると公表した。断熱材に対するニーズが高性能品へとシフトしているなか、商品群の整備と見直しを行ったものである。マグ・イゾベールも高性能化に対応する商品拡充と、それに並行しての商品の統廃合を進めていく考えだ。

市場が大きく変わりつつあるなか、上位等級向け断熱材の新商品開発や商品バリエーションの充実が図られるとともに、低い性能の商品の統廃合が進み始めている。30年に省エネ基準適合義務のレベルが等級5に引き上げられる予定であり、等級4を前提とした商品を揃えておく必要はなくなる。特にグラスウールは多くのバリエーションを揃えていることが強みであるが、同時に安定供給の面から生産のキャパシティとの兼ね合いが重要であり、どのように統廃合を進めていくかが一つの課題となっている。住宅の高性能化が進むなか、今後も引き続き高性能品の拡充と低性能品の統廃合が進むことは間違いない。

上位等級の需要に対応
高性能品が相次ぎ投入

断熱材は大きく繊維系と発泡プラスチック系の2種に大別される。繊維系の主な断熱材はグラスウール、ロックウール、セルローズファイバー。発泡プラスチック系は「押出法ポリスチレンフォーム」(XPS)、「ビーズ法ポリスチレンフォーム」(EPS)、「硬質ウレタンフォーム」(PUF)、「ポリエチレンフォーム」(PE)、「フェノールフォーム」(PF)などがある。これまで、それぞれの断熱材が強みを生かし、さまざまな部位で使用されてきている。

住宅事業者の等級6・7という上位等級への取り組みが広がるなか、これら断熱材メーカーは上位等級のニーズに応える商品開発に力を注いでいる。

旭ファイバーグラスは、等級5・6に対する提案に力を入れている。5~7地域においては「アクリアα」を使えば、等級6までは付加断熱なしの充填断熱だけで対応できる。「従来は、等級6は付加断熱をしなければ対応できないという認識もあり、それがハードルになっていたことも」(池田グループリーダー)と、充填のみで対応が可能であることを大きなメリットとして打ち出している。

商品面では、今年1月に20K250㎜厚で熱抵抗値7・1㎡・K/Wと「アクリアα」シリーズで最高性能を誇る天井用断熱材「アクリアαR71」を、続いて4月に誘導仕様基準対応製品「アクリアR45 14K‐170㎜」、「アクリアウールα 28K‐89㎜」、「アクリアUボードNTα 20K‐120㎜」を発売。また、同月に「断熱等性能等級5、6、7の推奨仕様例パンフレット」も発行、省エネ基準の地域区分別に、各断熱等級に対応する天井、壁、床の断熱仕様例を提示し、住宅事業者へ上位等級への取り組み提案を強化している。

また、今年5月に真空断熱材「VIP‐Build(ビップビルド)」の販売を開始した。熱抵抗値4.0㎡・K/W、熱伝導率0.004W/(m・K)と非常に高い性能を持ち、工務店やゼネコン、一般施主からの問い合わせが多く寄せられている。厚さ16㎜と薄いことが大きな特徴であり、住宅事業者はどのような部位に使えるかの検討を進めているようだ。付加断熱で等級7に対応しようとすると構造など色々と変更を検討しなければならず、コストが高い「VIP‐Build」であっても、使い方次第でコストや手間を抑えながらも高い性能を発揮できる可能性があり、この部分にメリットを感じての問い合わせが多い。また、土地が狭い都市部などで狭小住宅が増えるなか、外に付加するとなるとさらに家が狭くなる可能性もあることから、できるだけ現在の壁厚を変えずに性能を高めたいというニーズもあるという。リフォームでも問い合わせが入っており、実物件に採用されるのもそう遠くはなさそうだ。

マグ・イゾベールは今年、高性能断熱材について「イゾベール・コンフォート」のλ32×53㎜商品を新たに追加した。「イゾベール・コンフォート」は防湿層が付属されていない、いわゆる裸のグラスウールで、防湿気密シートを別施工する必要がある。高性能化にともない、より高気密化が重要となるなか「イゾベール・コンフォート」を前面に打ち出す展開を進めている。「場合によっては53㎜のまま付加断熱や床に使うという使い方もある。グラスウールとして国内最高レベルの性能の認知度を高めていきたい」(マーケティング部 魚躬大輝住宅商品戦略マネージャー)としている。