住宅の省エネ化の加速で、断熱材業界が動く
商品統廃合、コラボ、改修など次世代を見据えた動き
住宅の省エネ性能向上の動きが急速に広がりつつあるなか、断熱材業界が大きく動いている。住宅には、繊維系や発泡スチロール系などさまざまな断熱材が、さまざまな部位で使用される。高断熱化が加速し、断熱仕様が大きく変わるなか、商品戦略、販売戦略は大きく変わりつつあり、各社の動きは次世代を見据え百花繚乱の様相を呈している。
住宅の高断熱化が加速するなか、比較的好調な推移を見せているのが断熱材だ。
旭ファイバーグラスの断熱材出荷量は前年比105%程度で推移している。住宅事業者の上位等級への対応が進むなか高性能化が進み、一棟当たりの使用量が増えていることが大きな理由だ。こうしたなかで高性能な「アクリアα」のアクリア全体に占める比率も10%強へと高まっている。
また、マグ・イゾベールの上半期の住宅用グラスウールの出荷は微増。新設住宅着工が厳しいなかでも高断熱化へのシフトによる重量増が底上げにつながっている。
押出法ポリスチレンフォーム断熱材を展開するJSPの断熱材の出荷は新築住宅着工減の影響で減少したものの高性能品「ミラフォームΛ(ラムダ)」は前年度比で約10%増となった。その理由の一つは性能の高い断熱材への置き換えをすること。4~7地域の床断熱で省エネ基準をクリアするためには「ミラフォーム」なら65㎜が必要だが、熱伝導率0.022W/(m・K)の「Λ」であれば50㎜で済み、根太からはみ出ることなくしっかりと施工することができる。
また、硬質ウレタンフォーム断熱材を展開するアキレスは100㎜や80㎜といった厚物の引き合いが増えているという。
例えば、先に発売した「キューワンボードMA」は最大100㎜厚をラインアップして等級6・7に対応する商品で、100㎜厚は従来製品(61㎜)の1.6倍以上の熱抵抗値4.6㎡・K/Wを実現する。より高い断熱性能が求められるなか屋根断熱で、このMAを使うケースが増えてきている。同社では「キューワンボードMA」100㎜や、「キューワンボード」50㎜+垂木間50㎜など、ニーズを踏まえた提案を行っている。
フクビ化学工業のフェノールフォーム断熱材「フェノバボード」の出荷は、今年に入ってから前年同月比2桁成長を続けている。同社への問い合わせも「何㎜のフェノバボードを使えば良いのか」といった具体的な問い合わせが増えてきていると言い、特にこれまで上位等級の住宅を手掛けてこなかった新規の住宅事業者からのものが増えてきているそうだ。
発泡ウレタン断熱材「インサルパック」を展開するエービーシー商会は、新築木造住宅に使用する一液タイプの商品のなかでも低発泡の「エラスティックフォーム」や「防蟻フォーム」の販売が前年に比べ10%程度伸びている。「インサルパック」はボード系断熱材の隙間などを埋める補助剤として使われるが、高断熱化が進むなか従前にも増して気密に対する意識が高まっていること、加えて断熱仕様が変化するなかで必然的に「インサルパック」の使用量も増えているようだ。
こうした断熱材の高性能品へのシフトは、特に住宅性能表示制度で上位等級が示された頃から加速し始めた。2030年に等級5が義務基準になることが予定されるなか、その先を見据えて等級6が一つの目安になっており、「今後も着実に一棟当たりの断熱材の使用量の増加が進む」(旭ファイバーグラス 営業本部 グラスウール営業支援グループ 池田昌彦グループリーダー)とみられる。
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