AQ Group、日本初、8階建て純木造ビルを上棟
普及資材、工法、施工で「Re:Treeプロジェクト」推進
さいたま市西区三橋において新社屋「8階建て純木造ビル」の建設を進めている。24年3月竣工を目指す。普及資材、工法、価格で実現することで、非住宅建築物においても木造の選択肢を広げていきたい考えだ。
同社グループではこれまで一般流通構造材料と住宅用木材プレカット加工技術を採用することで、コストを抑え、特殊な技術や資材を使用しない方法で、中大規模木造建築の普及実現に向けた取り組みを行ってきた。16年には埼玉北支店社屋を建築。17年にはつくば支店社屋を、特別な金物を一切使用しない一般大工による施工で実現している。今回のAQ Group8階建て木造新社屋(延べ床面積6076㎡)についても、木構造体の接合部を特殊な金物に頼らず日本古来の継手・仕口の技術を住宅用プレカット工場で量産加工してつくることで、普及資材、工法で、地域の中小ゼネコン、工務店が施工し、免震装置に頼らない耐震構造を実現した。
日本古来より社寺建築でも取り入れられた伝統技術と、木質構造研究の第一人者である東京大学教授の稲山正弘氏などと共同研究を進め、現代技術を融合させた。より高いレベルの耐震性能が求められるため、低層階には、梁に国産カラマツ集成材210×520と、210×760を用い、柱にヒノキBP材(構造用製材を積層・圧着した大断面木質材料)を2丁合わせとした「相欠き合わせ柱式木質ラーメンによる高耐力フレーム」を使用。鋼板などの金物を使わずに相欠き仕口の木のめり込みによってモーメントに抵抗する。また、両ネジボルトと角座金しか金物を使わない「引きボルト式木質ラーメンによる高耐力フレーム」は、柱にLVLを用いることでめり込み変形を抑え、初期剛性を従来の2倍以上に向上させた。耐力壁の強度を競い合う「壁-1グランプリ」への参加などにより培ってきた高耐力壁も効果的に使用した。日本の伝統的な文様と組子技術を融合させ開発した、壁倍率35倍相当の強度をもつ「組子格子耐力壁」、そのほか、構造用合板24㎜両面張りで壁倍率40倍相当の高耐力壁なども使用している。
耐火性能については、1階~4階は2時間耐火、4階~8階は1時間耐火で設計。長期鉛直荷重を支持する主要構造部は強化石こうボード耐火被覆を施し、水平荷重のみ支持する耐震部材(耐力壁やラーメンフレーム)については、室内に木現しで構造体を露出し、木の魅力を最大限に感じられるオフィス空間を実現する。
同社は22年8月、木造建築を日本全国の街並みに復興する「Re:Treeプロジェクト」を本格スタートした。宮沢俊哉 代表取締役社長は「木造ビル普及を阻む、コスト、工法、偏見の壁は残っている。毎年数億円の開発費を計上し、実証実験を繰り返し、普及資材、工法、価格で実現できる知見、ノウハウを蓄積している。まだ完成ではなく発展途上だが、『8階建て純木造ビル』を中層木造のプロトタイプとして建設することで、非住宅建築物の木造化が全国に広がっていくことを期待している。今回、鉄骨やRC造とほぼ同等のコストで実現できた。今後はRC造の2/3以下にできるよう開発を進める」と話す。
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