厚生労働白書 住まい政策が社会保障の重要課題に
地域共生社会で大きな役割が求められる
経済面や心理面での困難、孤独や孤立など生活を脅かすリスクが多様化、複雑化するなか、社会保障が大きな岐路に立っている。地域共生社会の実現が強く求められるなか、重要な鍵としてクローズアップされるのが住まいだ。
2022年の出生数が80万人を割り込み、70年には65歳以上人口の割合が38.7%になるとみられる。少子高齢化は今後50年間でますます進展すると見込まれる。また、一世帯当たり人口は20年に2.21人となり、40年には2.08人まで減少すると推計されており、世帯の縮小化が進む。なかでも単独世帯数の割合が高まり、特に60歳以上の人口に占める単独世帯数の割合は40年に向けて大きく増加していく。
こうした人口構成・世帯構成の変化や社会環境の変化を踏まえ、今、大きな転換が迫られているのが福祉分野である。「厚生労働白書」は、福祉は複雑化・複合化し、分野横断的な対応が求められていると指摘する(図1)。公的支援制度が整備される以前、地域の相互扶助や家族同士の助け合いが人々の暮らしを支えてきた。戦後、高度成長期を経て今日まで、社会変化のなかで地域や家族が果たしてきた役割の一部を補完・代替するため、高齢者や障碍者、こどもなどの対象者ごとに公的な支援制度が整備され、その充実が図られてきた。しかし、今、個人や世帯が抱えるリスクが多様化し、経済的困難、心理的困難、孤独や孤立、住居確保などこれまで潜在化してきたリスクが顕在化してきた。世帯の縮小により家族が課題に対応する機能が低下し、地域のつながりは弱まっている。企業による雇用保障の力も弱まり、職場での人間関係も希薄化する傾向にある。「厚生労働白書」では「複合化した課題や制度の狭間の課題は、従来、その課題を担ってきた家族や、それを回避するシステムを有してきた企業・地域、そして人々の交流に対する意識といったものの変化を背景に顕在化したところもあるだろう」と指摘している。
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