本気になって耐震化を進めなければ日本は大変なことになる
住み続けられる住まいづくりを
耐震化の推進はもとより、巨大地震でも住み続けられる家づくり、地方への移住、ストックの活用など、間近に予測される巨大地震を前に取り組むべき課題は山積みだ。今、住宅産業に何が求められるのか──名古屋大学の福和伸夫名誉教授に聞いた
──関東地震から100年が経ちますが、日本は本当に地震に強くなったのでしょうか。
関東地震は東京の被害が着目されますが、震源地は相模湾北西部であり、実際、神奈川県では揺れによる被害が多かった。ただ、10万5000人という死者のうち7万人は東京で亡くなっており、そのうち6万人弱は隅田川の東側で火災により亡くなっています。地盤が軟弱で揺れが強く、お昼時で風も強かったことから木造密集地域で大規模な火災が起こったためです。
これは天災というよりも人災と呼べるのではないでしょうか。元禄の関東地震が起こった1703年当時は、東側の軟弱地盤の所まで町は広がっておらず、江戸府内の死者は340人です。死者が200倍になった主な原因は土地利用の失敗だと言えるでしょう。しかし、現在においてもその場所に非常に多くの人が住み、働いています。
関東地震を受けて1924年に市街地建築物法に耐震規程が導入されましたが、実は、これは東京大学がある文京区本郷の揺れが推定され、その揺れに対する安全性を確保するという考え方で作られました。今でもそれは変わりません。被害が大きかった東京下町の揺れでも、小田原や横浜の揺れでもないのです。また、今の建物は昔と違って壁が少なく柱が多い、また、ガラス部分も増えました。高層化が進み揺れ方も変わっています。こうした建物が軟弱な地盤の上にどんどん建てられている。実際の建物の安全性は低下しているかもしれないのです。
一方、戸建住宅は壁の量で設計しているケースが多い。地震が起きるたびに被害を受けた住宅を見て、これでは足りないと壁の量を増やし、どんどん強く、硬く、軽くなってきました。この100年の間に都市部で起こった大きな地震災害は阪神・淡路大震災くらいですが、それ以外の地方で起きた地震を見て戸建住宅策を進めてきたのです。そしてこれら戸建住宅は比較的安全な台地部分に建っています。
東京一極集中がどんどん進み、軟弱地盤に町が広がり高層化が進むなか、あらためて大都市における安全性についてしっかりと考える必要があるのではないでしょうか。
──国は耐震化率の向上を促進、令和12年までに耐震性が不十分なものを概ね解消するという目標を掲げています。
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