2023.7.21

“心地よい豊かな暮らし” で住空間に価値創出を 中間領域を活かすライフスタイルメーカーを目指す

タカショー 高岡伸夫 代表取締役社長

外構・庭を活用することで住まいに新たな価値を創出する、そんな取り組みを進めるタカショー。
目指しているのは「心地よい豊かな暮らし」だ。高岡社長に、幅広い事業の狙いなどについて聞いた。

──外構や庭を活用することでの価値創出を提案していますが、高岡社長が考える「価値」とは何でしょうか。

価値とは「心地よい暮らし」です。日本は面積が小さいだけでなく山が多いことから住むことができる平地が少なく、米国などに比べたら一人当たりの面積は非常に狭い。これまでの歴史で、それを前提とした家づくり、庭づくりが行われてきたわけです。こうした日本の住まいづくりのあり方を踏まえ、さらに心地よい豊かな暮らしを広げていきたい。そのためには良い事例を見せ、こんな家に住みたいと思っていただく必要があります。今、日本において中古住宅の取引が広がってきてはいますが、しっかりと手を入れた住まいがきちんと鑑定されるようになれば、中古住宅の再生もより広がっていくでしょう。

タカショー
高岡伸夫 代表取締役社長

そして、その価値を街づくりへと広げていきたい。住まいの価値が資産価値となり、それが地域の価値へと変わります。この3つが揃うことで、人が集まる、魅力あふれる街並みを創出することができます。ゼロから開発して新たにつくるのではなく、今ある風景を活かしながらつくることが重要になってくると考えています。

7月27日・28日に第20回「タカショーガーデン&エクステリアフェア2023」(TGEF2023)を東京流通センターにて開催しますが、タカショーの商品をどのように利用して価値を生み出していくかをしっかりとお見せしたいと思っています。

──TGEF2023の具体的な内容を教えてください。

約4500㎡の空間を使い、「エクステリア&ファサード」、「DXコンテンツ」、パッケージプランの「ガーデン&5th ROOM」、「コントラクト(非住宅)」、屋外照明の「レディアス」などゾーンごとに多彩な商品を用いたこだわりの空間提案、デジタル技術による最新提案・サービスなどを分かりやすく、連続的に展示します。

まず、エクステリアについてですが、私たちが提供するエクステリアは2つに大別できます。一つは工場で大量に生産して流通を通して設置、施工する規格型の流通エクステリア商品。もう一つがお客様の要望にあわせて現場でつくる、いわば現場型、作品型の創作エクステリア商品です。現在、売上高の約7割を占めるのが創作エクステリアですが、さらにこの分野に力を入れ、一人ひとりのニーズにあわせ、立地の特長を活かした価値を提案していきたいと考えています。例えば、京都では景色をうまく取り込み小さな庭でも大きく見せることで心地よさを生んでいますね。こうした価値提案です。もちろん流通エクステリアにもしっかりと取り組み、この2つをクロスさせながら外部空間の価値提案に注力していきます。

TGEF2023では、こうしたエクステリアを用いた住まいの価値を高める空間事例の提案を行います。

──ゾーニングの一つが「DXコンテンツ」というのもタカショーの強みが出ていますね。

「家と庭の心地よい豊かな暮らし 人が集まる魅力溢れる街並み」をテーマに「タカショー ガーデン&エクステリアフェア 2023」を開始予定(写真は2022年時の様子)

住宅や外構をトータルで提案できるさまざまなツールを展示し体感いただけます。例えば、高精細な4K画質の「建築CG動画制作サービス」、モデルルームを一棟まるごとVR上に表現できる「VR展示場制作サービス」、バーチャル上で住宅・外構プランニングを自由に動き回れる「バーチャルホーム&ガーデン」などです。

昨年7月にGLD‐LAB.という空間デザイン・制作会社を立ち上げ、4D空間デザインやXRシミュレーション事業を展開しています。外構のリフォーム、特に庭に関しては住宅事業者もお施主様も図面だけではよく分からないところがある。そこで4K動画、ARやVRでお客様のニーズを反映した空間をシミュレーションし、その上でリアルの打ち合わせを行えば、双方のストレスも軽減できると考えています。

お施主様への提案は、図面やパースなど2DからCADの進化により3Dで見せることが可能になりました。しかし、そこには時間軸がありません。そこで4K動画です。例えば、庭の向こうに広がる海に太陽がだんだんと落ちていく、こうした風景を描くことができるのです。

日本の豊かな空間をパッケージ化
“光”による地域活性化も

──庭が生む価値として象徴的なものが「5thROOM」の提案です。

建物と庭、外構までを一体で考えることで風や光を取り込んだ心地よい暮らしを実現する「5thROOM」

庭に生まれるもう一つの部屋「5th ROOM」は、屋外カーテンやシェード、ルーバー、デッキ、ガーデンファニチャーなども含め、建物と庭、外構までを一体で考えることで風や光を取り込んだ心地よい暮らしを実現できます。

ただ、こうした空間を手掛けたことがない工務店にとっては敷居が高く、打合せや提案の時間もかかりすぎます。そこで、昨年GLD‐LAB.で住宅事業者やリフォーム事業者を対象とした会員制の外構提案サポートサービス「GLD‐LAB.デザインネットワーク」を立ち上げ、そのサービスの一つとしてパッケージプランの提供を始めました。家庭菜園があって、夜になったらライトをつけてと、そのようなさまざまなプランを「パッケージプラン デザイナーズサイト」に掲載し、これらのCADデータをダウンロードすることが可能です。それらをうまく活用し、豊かな暮らし方を提案していただきたいと思っています。

日本の昔の家は長い庇を活用した家と庭がつながる豊かな空間を持っていました。これを現代の住宅の小さなスペースでも可能なパッケージとしました。こうした空間づくりに共感していただける工務店に使っていただきたいと考えています。

──コントラクト(非住宅)分野でもさまざまな提案を行っています。

コントラクトは今後大きな市場拡大が見込める分野だと考えており、TGEF2023でもPFI、デジタル田園都市国家構想、企業版ふるさと納税など国の地域活性化の施策に対して、リフォーム、光の演出、ガーデンなどさまざまな提案を盛り込んでいます。

地域活性化には滞留・滞在人口、関係人口を増やすことが重要です。ただ、大きなホテルの滞在型ではどうしても滞在時間が短くなり、地域に広くお金が落ちない。だから数件のホテルが集まって地域を回遊してもらうような取り組みが始まっています。照明やイルミネーションを手掛けるタカショーデジテックは街全体を光で演出する「フェスタ・ルーチェ」を全国で展開しています。そのほか地域のホテル事業者に提案して街中の光の演出を行うなど、その街に少しでも長く滞在していただくための提案を行っています。

連結子会社18社のうち一番成長している企業が、このタカショーデジテックです。今後、ローボルトライトの市場に大手アルミ建材メーカーが相次いで参入し、さらにシェア争いが激しくなると思われます。ただ、照明という商品ではなく心地よい空間が求められている、そこが本質であり、私たちの大きな差別化ポイントだと考えています。

LINKED CITY 参画企業などと共同開発したトレーラーハウス「GXホーム」は、ホテルやショールーム、ランドスケープなどさまざまな場で活用できる

コントラクト分野では、もう一つ「GXホーム」が特徴的な商品です。LINKED CITY参画企業などと共同開発したトレーラーハウスで、外構を一体化してIoT機器を装備した空間パッケージです。住まいのリフォームの場はもちろん、ホテルやショールーム、ランドスケープなどさまざまな場で活用できます。例えば、国土交通省はガーデンツーリズムを推進し、道の駅をつなぐ試みも始まっていますね。そのような「つなぐ場」の宿泊施設として活用できると考えています。トレーラーハウスは不動産ではなく動産です。今後、法整備が進めば、あちこち移動しながら暮らすというライフスタイルが広がるのではないでしょうか。不動産から動産へと視点を変えることで、さまざまな新たな発想が出てくると思います。

家と庭をあわせて「家庭」となる
そんな空間づくりを

──今後の事業展開について教えてください。

新たな空間をつくることによる価値創出に引き続き力を入れていきます。例えば、都市部では小さな箱のような閉鎖的な住宅が多いが、住宅一階の一部を切欠くようにしたスペースをピロティのように活用することで、庭が広がり豊かなガーデン空間とすることができます。
新築、リフォームを問わずに大きな付加価値を生み出すことができます。

また今後は、リフォームが大きな成長分野だと考えています。空き家問題も含めて既存住宅の活用を進めていかなくてはならず、国のさまざまな施策と並行してリフォームを推進していきます。

ただ、エクステリア商品をちょっとつけるようなものではなく、暮らし方のリフォームです。そこで重要となるのが庭の緑です。人は動植物で癒されたいという本能的な欲求を持つという「バイオフィリア」という考え方があります。庭先に家庭菜園があれば季節の移ろいを感じることができ、実のなる植物であれば食べることもできる。こうしたことに人は癒されるのです。緑を配置して、心地のよい空間をデザインすることが、これからの住宅に大事なことなのではないでしょうか。

これを始めからすべて用意する必要はありません。個人的には、庭は作成が3割、育成・管理が7割だと思っています。つくった時がスタートで、育成・管理することで家と庭がともに成長して良くなっていく。本来、このようなものではないでしょうか。あまりコストをかけずに住宅事業者でなければつくれないようなベースの部分を先に作る。ただ、最初に家と庭の繋がりなどバランスを考えておくことが重要です。ですから先にお話ししたパッケージプランの提供を始めたのです。

日本は四季があり、厳しい気象状況のなかで内と外をつなぐ最適な住宅をつくりました。こうした日本の文化、住まい方の良い所を見直して、地域の特性を活かすことで豊かな暮らしの価値を生み出せると考えています。「家」と「庭」を組み合わせて「家庭」となります。私たちは、そんな暮らしを住宅事業者の方々と一緒に提案していく、ライフスタイルメーカーを目指していきます。

(聞き手:平澤和弘)