今、空き家が動く

市場創出へ眠る宝の山を生かせ

6月7日「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」が参議院本会議で可決・成立した。
深刻な社会課題となっている空き家問題であるが、国の対応強化、所有者の意識の変化などを背景に大きな変化が起こりそうだ。
眠る資産が表に出ることで、空き家の活用、また、除却による土地活用などが期待される。

空き家対策をめぐる動きが活発化している。急増する空き家は地域の不良資産としてその危険性や治安の面から大きな問題と捉えられ取り組みが進んできた。一方で、住宅ストックという視点からは十分活用が可能な空き家も多く、うまく活用することで地域の資産となりうる。買取再販などストックビジネスに注目が集まるなか、空き家活用が一つのビジネスとして離陸しようとしているのである。

図1 空き家の種類別空き家数の推移

空き家対策の大きなターニングポイントになったのが2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家特措法)だ。空き家のなかでも特に周辺環境に悪影響を与えるものを「特定空家」として指定、市町村が修繕や立木の伐採などの措置・指導、助言、勧告、命令をできるようにした。さらに命令に従わない場合は50万円以下の罰金か、行政代執行での除去の権限も与えた。また、放置空き家の温床と指摘されていた「固定資産税の住宅用地特例」も見直し、「特定空家」に対して市町村が必要な措置を取ることを勧告した時点で特例が解除される。同特例は固定資産税が6分の1に減額されるもので、この優遇が見直されたことは大きなインパクトがあった。また、同法に基づき「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針(基本方針)」と「特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」がまとめられている。

同法施行から3年が経ってまとめられた総務省の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家戸数は849万戸と5年前よりも29万戸、同3.5%増加。総戸数に占める空き家率も13.6%と同0.1ポイント増加した。この空き家のなかでも特に問題視されるのが賃貸用でも売却用でもない「その他の住宅」として分類されている、いわゆる「その他空き家」で、849万戸のうち349万戸と41.1%を占め、同9.7%増と大きく増加している。

野村総合研究所が18年に発表したレポートでは、空き家数を23年に1293万戸、空き家率19.4%、28年には1608万戸、同23.2%、33年には1955万戸、同27.3%と予測した。15年間で空き家数は1.5倍以上と、急増していくというショッキングな予測であった。

空き家は長期間放置されることで建物の状態が悪くなり物理的な危険性が増すことに加え、治安の悪化などにもつながりかねないことから、さらなる対策の加速が求められていた。

住生活基本計画で除却と活用の成果目標を設定


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